新時代のコミュニティ運営 リーダーの役割 逃げずに向き合う強さの愛 信頼はココで育まれる
コミュニティで、ちょっとしたトラブルが起きた。
やった本人には、ただの「ふざけたやり取り」。
でも、それを見て不快に感じた人がいた。
こんなとき、リーダーはどうするだろう?
注意すれば、揉めるかもしれない。
何もしなければ、不快に感じた人が離れてしまうかもしれない。
しかもコミュニティは、会社のような縦社会ではない。
「ルールだから従ってください」
だけでは、人はついてこない。
だからこそ、難しい。
逃げることもできる。
見なかったことにもできる。
でも、本当に信頼されるリーダーは、
こういう「ちょっと面倒なこと」が起きたときにこそ、その人と向き合う。
ただし、正しさを振りかざすのではない。
叱るのでも、みんなの前で諭すのでもない。
「ちょっと話そう」
その一言から始まる対話が、
コミュニティの空気を変えていく。
では、横のつながりでできたコミュニティで、
人を傷つけずに問題と向き合うには、どうすればいいのだろう?
その答えを、二人の女性の会話から考えてみたい。
これは子育てや会社、もちろんコミュニティ
運営などに役立つお話です。
逃げずに向き合う強さ
――新時代のコミュニティ運営で、
リーダーに必要なもの
「ねぇ……ちょっと相談していい?」
美香が、少し困った顔で言った。
「もちろん。どうしたの?」
「コミュニティの中で、ちょっとふざけたやり取りがあったの。本人たちは冗談のつもりだったと思うんだけど……それを見て、不快に感じた人がいたみたいで」
「そっか……」
「こういうときって、難しくない?」
「めちゃくちゃ難しいと思う」
二人は少し黙った。
コミュニティには、会社のような明確な上下関係がない。
上司がいて、部下がいて、
「ルールだから従ってください」
と言えば終わる世界ではない。
「でもさ、こういうときって、リーダーが原因になった人に注意するしかないんじゃない?」
美香がそう言うと、由美は首をかしげた。
「それが一番難しいんだよ」
「どうして?」
「だって、言い方を間違えたら揉めるでしょ。注意したことで、相手が『じゃあ、もういいです』ってコミュニティから離れるかもしれない」
「あぁ……」
それは、会社とは違う。
会社なら、多少自分に都合の悪いことでも、
「仕事だから」
という理由で残ることができる。
でも、コミュニティは違う。
そこにいる理由は、
「ここにいたい」
という気持ちだから。
だからこそ、自分に都合の悪いことを受け入れてもらうには、リーダー側にも相当な器が必要になる。
「じゃあ、何も言わないほうがいいのかな?」
「それも違うと思う」
由美は少し考えてから答えた。
「逃げちゃうと、今度は不快に感じた人が『誰も守ってくれない』って思うかもしれないから」
「なるほど……」
「だから私は、まず対話するかな」
「対話?」
「うん。でも、いきなり『常識で考えて、人が嫌がることはしないでください』とは言わない」
美香が苦笑した。
「それ言われたら、確かにちょっとムッとするかも」
「でしょ?」
正論は、いつも人を動かすわけではない。
むしろ正しいからこそ、相手の逃げ道をなくしてしまうことがある。
「例えばさ、
『今回のやり取りについて、こう感じた人がいたみたいなんだけど、どう思う?』
くらいから入るとか」
「相手に考えてもらうんだ」
「そう。『やめてください』じゃなくて、『どうしたらみんなが気持ちよくいられると思う?』って選択肢を渡す」
「それなら受け取り方が全然違うね」
「コミュニティって、そもそも明確なルールがないことも多いからね」
だから難しい。
どこからが冗談で、
どこからが失礼なのか。
どこまでなら許されて、
どこからが誰かを傷つけるのか。
その線引きは、人によって違う。
だからこそ、リーダーが一方的に「正解」を決めてしまうと、別の問題が生まれる。
そして、もう一つ。
「一番やっちゃいけないのは……」
由美が少し声を落とした。
「みんなの前で、その人を諭すことだと思う」
「みんなに共有したほうが、再発防止になるんじゃない?」
「気持ちはわかる。でも、本人からしたら『みんなの前で恥をかかされた』って感じるかもしれない」
問題を共有することと、
人をさらすことは違う。
だから、少し手間がかかっても、
まずは本人と話す。
そのうえで必要なことだけを、
コミュニティ全体に共有する。
「なるほど……」
美香が頷いた。
「リーダーって、ルールを守らせる人だと思ってた」
「私も昔はそう思ってた」
「じゃあ、何だと思う?」
由美は少し笑った。
「逃げずに向き合う人……かな」
誰かが不快になったとき。
誰かが傷ついたとき。
誰かが間違えたとき。
一番簡単なのは、見なかったことにすること。
触れなければ、揉めることもない。
でも、それでは信頼も生まれない。
もちろん、喧嘩腰になる必要はない。
正しさを振りかざす必要もない。
相手を負かす必要もない。
ただ、
「ちょっと話そう」
と対話を持ちかける。
そして、相手にも選択肢を渡す。
その小さな積み重ねが、
「ここにいても大丈夫」
という安心をつくっていく。
「でもさ……」
美香が言った。
「それって、リーダーも結構しんどいよね」
「うん。だから『人をまとめる』っていうより、『関係を整える』に近いのかもしれないね」
二人は顔を見合わせた。
コミュニティは、
人を従わせる場所ではない。
人と人が、
「ここにいたい」
と思える場所だ。
だから、新時代のリーダーに必要なのは、
強く叱る力ではなく、
逃げずに向き合う強さなのかもしれない。
そしてその強さは、
相手を変えるためではなく、
もう一度、対話できる関係をつくるためにある。
信頼は、
大きな決断でつくられるものではない。
こういう、
「ちょっと面倒なことが起きたとき」
に、
どう向き合ったか。
そこに、そのコミュニティの本当の価値が表れるのかもしれない。
今日の気付き
リーダーの仕事は、
「人を動かすこと」ではなく、
「人が安心して関われる場をつくること」。
だから、問題が起きたときほど、
リーダーの本当の力が試される。
面倒だからと見なかったことにする。
揉めたくないから、誰にも何も言わない。
それも、一つの選択ではある。
でも、その選択を続けていると、
不快に感じた人が静かに離れていく。
コミュニティで怖いのは、
大きな声で「辞めます」と言われることではない。
何も言わずに、
そっと人がいなくなることなのかもしれない。
だからこそ、
「ちょっと話そう」
と声をかける。
相手を責めるのではなく、
正解を押しつけるのでもなく、
「どうしたら、みんなが気持ちよくいられると思う?」
と、一緒に考える。
もちろん、すぐに答えが出るとは限らない。
それでも、逃げずに対話した時間は、
少しずつ信頼に変わっていく。
信頼は、問題が起きない場所で生まれるのではない。
問題が起きたとき、どう向き合ったかで生まれる。
今日、もしあなたの周りで
「ちょっと面倒だな」と感じることが起きたら、
避ける前に、
一度だけ誰かにこう言ってみてほしい。
「少し話そうか。」
その一歩が、
コミュニティを守る一歩になるかもしれない。
