部長の名前を忘れるので、「お前」と呼んでいた。人の名前が覚えられない高校生の話
リクは、高校生になった今も、人の名前がなかなか覚えられない。
顔の方がまだ覚えているようで、よくこう言っている。
「あー、わかった、あいつあいつ…名前が…わかんない。ま、いいや」
ま、いいや、で終わる。
「俺の周りの6〜7人の名前だけ分かってりゃいいんだよ」
学年通信に出ていた名前を見て、聞いてみたことがある。
「これって、リクのクラスの子?」
「え? どうだっけ! あ! 俺、一緒のクラスだったわ!」
去年、同じクラスだった子だった。
「同じクラスだったのに、なんでそんな即答できないんだよ〜」
そう言うと、リクは冗談混じりにこう返してきた。
「しょうがないじゃん、他人に興味ないから。」
「俺の周りの6〜7人の名前だけ分かってりゃいいんだよ」
「部長の名前、よく忘れるんだよね」
そのあと、少し真面目な、でも面白そうな顔でリクが話し始めた。
「そうそう、そういえば、俺、部活で部長の名前よく忘れるんだよね」
…え!? 今の部長って、1年生からずっと一緒の同級生ですよね??
「それは、さすがに覚えようよ。あなたの近しい人じゃん」
「そうなんだよ〜。で、よく忘れるからさ、名前が出てこないと、俺、部長のこと"お前"って言ってんの」
えーーーーー。
うん、それで? と思って聞いていると、リクは続けた。
本人に、言った
「で、それをさ、俺、うっかり本人に話しちゃったわけ!」
……え!?
「俺さ、人の名前、なかなか覚えられなくて、名前忘れちゃうんだよね。俺が"お前"って言ってる時は、名前忘れてるからって言っちゃったんだよ」
それ、本人に言ったの??? と、私は内心思った。
「リク、俺の名前忘れてんだろ」
リクの話は続く。
「マジかよ! 忘れんじゃねーよ」ってその時言われてたんだけど、この前また忘れて、「お前」って言ったんだよ。」
そうしたら、部長がこう言ったらしい。
「リク、俺の名前忘れてんだろ」
「ヤッベ! バレたか」
「こいつ、俺の名前忘れるらしくてさ。やっぱり! オラオラ! 思い出せよ! 忘れんじゃねーよ!」
そう言われてさー、と、リクはすごく楽しそうに話す。
「で、まぁ思い出したんだけど(笑) 本人に言うもんじゃないね!」
「よく、部長怒らなかったね」
「えー!? そんなんで怒るやつじゃないよ〜」
とリク。
「他人に興味がない」について
ASDの特性のひとつに、人との関わり方の違いがあると言われている。厚生労働省の解説にも、人とのやりとりや、相手の気持ちを読み取ることの難しさが挙げられている。
リクの場合、それが「関心が向いた6〜7人だけ覚えていればいい」という形で出ているのかもしれない。
もっとも、これは私の推測でしかない。
7年前は、名前も知らないままだった
実はリクには、小4のときにこんなことがあった。
名前を知らないまま、友達だった。
あれから7年。名前は、相変わらず中々覚えられない。
でも今は、「俺、名前が覚えられないんだ」と、自分の言葉で相手に説明している。
同じ「名前を覚えられない」でも、まったく違うことが起きているのだと思う。
よかったよかった
どうやらリクは、とてもいい友達ができているようだ。
人によっては、怒ってきたり、陰口を叩かれたり、いじめにつながる案件かもしれないと思うのだけれど。
とりあえず、"変わり者"としてリクは友達に受け入れてもらっているらしい。
よかったよかった。
そして、部長、ごめんねっ! ありがとう!!
あなたと、あなたの大切な人の明日が、少しだけ軽くなりますように。
この記事が「うちだけじゃないんだ」と思えるきっかけになれたら嬉しい。
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