アモリムミラン、リーグ開幕への期待と不安
はじめに
前回の記事では、PSMを通してアモリム・ミランの攻守の構造を見てきました。
攻撃では3-2-5をベースに、WBとシャドーが異なる高さを取りながら相手の守備ブロックを動かし、ボールサイドに人数を集めてから逆サイドへ展開する。
守備ではボールロスト直後の即時奪還を狙い、それが成立しなければ4-2-4、5-3-2、5-4-1と相手の前進に合わせてブロックを変化させる。
今回は、そこからもう一歩踏み込んでみます。
このサッカーは、セリエAでどこまで機能するのか。
PSMで見えたものを「期待」と「不安」の両面から考えてみたいと思います。
1.期待
① 3-2-5を構造として使えている
まず期待したいのは、3-2-5そのものではありません。
重要なのは、そこから選手の立ち位置が変化していることです。
WBが幅を取り、シャドーがハーフスペースやライン間に入り、CFがCBをピン留めする。
さらにCHが前進に関わることで、同じ3-2-5でもボールの位置によってパスコースが変化していきます。
つまり、
3-2-5を維持するために選手が動いているのではなく、3-2-5を基準に相手を動かすために選手が動いている。
ここはかなり期待できます。
フォーメーションを固定しているだけなら、相手に対応された瞬間に構造は止まります。
しかし、選手同士の位置関係そのものが変化するのであれば、相手の守備基準に応じて別のパスコースを作ることができます。
PSMでは、この部分が少しずつ見えてきました。
② オーバーロードから逆サイドを使える
個人的にかなり面白いと感じたのが、ボールサイドへのオーバーロードです。
シャドー、WB、CH、CFなどが片側に関わることで、相手の守備ブロックを局所的に圧縮させる。
そこで相手がボールサイドへスライドすれば、逆サイドのWBが空いてくる。
そして、そこへ一気に展開する。
この形が成立すると、相手の守備を横方向に動かしながら前進できます。
しかも、単純に「逆サイドが空いているから蹴る」のではなく、
相手を動かした結果として逆サイドを空ける。
ここが重要です。
この原則がセリエAでも再現できるのであれば、ミランの攻撃にはかなり期待できます。
③ 攻撃と守備が切れていない
もう一つ期待しているのが、攻撃と守備の連続性です。
3-2-5で前線に人数を配置することで、ボールを失った瞬間にはボール周辺に複数の選手が存在します。
そこから即時奪還を狙う。
これは単純に「前からプレスをかける」という話ではありません。
ボール周辺の選手が相手の選択肢を制限し、プレッシャーを受けた相手が前進できる方向を限定する。
そこへ別の選手が寄せてボールを奪う。
つまり、攻撃時の配置そのものが、ボールロスト後の守備に繋がっているわけです。
ここが機能すれば、ボールを奪ってから攻撃するのではなく、
ボールを失った場所から、もう一度攻撃を始める。
そんなサッカーになります。
2.不安
① セリエAの5バックをどう崩すのか
一方で、一番気になっているのがここです。
PSMではオーバーロードから逆サイドのWBへ展開する形が見られました。
しかし、相手が最初から5バックで低い位置に構え、WBまで含めて横幅を確保してきた場合は話が変わります。

ミランが片側に人数を集めても、相手の5枚がスライドできる距離を維持していれば、逆サイドへ展開しても簡単には前進できません。
つまり、
「オーバーロード→逆サイド」だけでは解決できない相手
が出てくる可能性があります。
そうなると、中央やハーフスペースから相手の守備基準を動かす必要がある。
シャドーの侵入、CHの前進、CFによるCBのピン留め、WBとのポジション交換。
こうした動きで相手の5バックにズレを作れるか。
ここはリーグ戦で見たいところです。
② WBを封じられたときどうするのか
アモリム・ミランではWBがかなり重要な役割を担っています。
だからこそ、非常に質の高いWBをメルカートで獲得したわけです。
🚨🔴⚫️ AC Milan agree deal to sign Diego Moreira from RC Strasbourg, here we go!
— Fabrizio Romano (@FabrizioRomano) August 17, 2026
Verbal agreement with paperwork being prepared at €50m fee plus add-ons and sell-on clause. More details to follow.
Moreira only wanted AC Milan despite bids from Germany and UK. 🫱🏻🫲🏼 pic.twitter.com/N7boxdyNaY
幅を取る。
前進の出口になる。
逆サイドへの展開先になる。
つまり、攻撃構造の中でWBに求められるものがかなり多い。
だからこそ、相手がWBを明確に消してきた場合にどうするのかが気になります。
WBへのパスコースを消されても、中央やハーフスペースから前進できるのであれば問題ありません。
しかし、そこでボールが止まってしまうと、3-2-5は一気に停滞する可能性があります。
WBを活かすことと、WBに依存しないこと。
このバランスは今季かなり重要になると思います。
③ 即時奪還を回避された後
守備面では、即時奪還そのものよりも、それが失敗した後を見ています。
ボールを失った直後に奪い返せれば問題ありません。
しかし、相手がワンタッチでプレッシャーを回避したり、3人目の動きを使って前進してきた場合、ミランは一気に守備へ移行する必要があります。
ここで4-2-4から5-3-2、さらに5-4-1へと形を変えていく。
この可変自体は非常に合理的です。
ただし、前線の選手が戻るタイミング、中盤の選手がどこを埋めるのか、WBが最終ラインへ戻るタイミングなど、要求される判断はかなり多い。
要するに、ネガトラの判断、速さの問題です。
特に高い位置からのプレッシングを外された場合、5-3-2へ移行するまでの過程にどれだけ隙が生まれるのかは注目したいです。
3.このチームは何を目指しているのか
期待と不安を並べてみると、どちらも同じところに行き着きます。
それは、
「選手が状況に応じて判断するサッカー」であること。
3-2-5を作る。
4-2-4でプレスする。
5-3-2で守る。
5-4-1で引く。
こうした形だけを覚えれば成立するわけではありません。
相手がどこにいるのか。
ボールがどこにあるのか。
味方がどこにいるのか。
それによって自分の立ち位置を変える必要があります。
だからこそ、上手くいったときの可能性は大きい。
一方で、選手間の認識が少しでもズレれば、同じ構造が一気に崩れる可能性もある。
ここがアモリム・ミランの面白さであり、同時に最大の不安要素なのだと思います。
4. 最後に
まだPSMです。
これからセリエAが始まり、ミランの構造を相手も分析してきます。
5バックでWBを消してくるチームもいるでしょう。
中央を閉じて外へ誘導してくるチームもいるでしょう。
そのとき、PSMで見えた原則がどこまで通用するのか。
個人的には、そこが今季のアモリム・ミランを見る上で一番面白いところだと思っています。
PSMを見た限り、私はこのチームに期待しています。
ただし、それは「もう強いチームが完成した」という意味ではありません。
チームとしての構造を持ったチームが、セリエAで戦えるだけの再現性を獲得できるのか。
その答えは、これからのリーグ戦で少しずつ見えてくるはずです。
そして、個人的にはアモリムのサッカーは浸透するのになかなかの時間を要すると考えています。開幕の数試合、もしくはこの1シーズンそこそこの結果しか残せずとも、そこまで悲観することはないかなと感じています。
トップ画 出典↓
— AC Milan (@acmilan) August 15, 2026
