【DelaM’s Archives|苔を創る人 #02】moss-connect 今田裕/苔を「一時のブーム」から「文化」へ。切り拓く表現の境界線。
苔を「文化」に変えた先駆者。moss-connect 今田 裕さんが歩み続ける挑戦
日本の苔テラリウム業界を語る上で、絶対に欠かすことのできない存在がいます。
大阪・南船場に店舗を構える「moss-connect(モスコネクト)」代表、今田 裕(いまだ ゆたか)さんです。

現在でこそ「苔テラリウム」という言葉は広く知られるようになりましたが、その認知がまだ低かった時代から、一貫して苔の魅力を発信し続けてきた人物でもあります。
作品制作にとどまらず、教室運営、企業とのコラボレーション、メディア出演、大型イベントのプロデュースなど、その活動の幅は多岐にわたります。
名実ともに日本を代表する苔アーティストのひとりと言えるでしょう。
この記事では単なる経歴の紹介ではなく、「なぜ多くの人が今田さんに惹きつけられるのか」——その理由に迫ります。
自然の中で育まれた感性と、異色のキャリア
今田さんは1982年生まれ。自然豊かな滋賀県で幼少期を過ごし、その頃からすでに身近にあった苔に深く惹かれていたといいます。
卒業後はペット業界へと進み、約15年間にわたり勤務。現場での接客や店舗管理だけでなく、店長、エリアマネージャー、さらには取締役まで経験するなど、経営や人材育成の最前線で実績を重ねました。
そして2016年。満を持して「moss-connect」を設立します。
苔を使ったインテリア作品の制作・販売から、ワークショップ、資材販売、卸売り、苔庭の施工までを手掛ける専門店としてスタートを切りました。

単なる「作品」ではなく、そこに広がる「世界」をつくる
今田さんの作品を初めて目にした人は、苔そのものよりも先に、そのガラスの中に広がる緻密な風景に目を奪われます。
深く静かな森。
ダイナミックな渓谷。
格式高い日本庭園。
時にはノスタルジックな情景。
ガラス容器という限られた空間の中に、まるでひとつの小さな物語が存在しているかのようです。
「苔は単なる植物ではなく、情景を描くための素材である」——そんな思想のもと生まれたのが「硝景」シリーズだ。
硝景と名付けられた作品を目の前にすると、鑑賞者はただ「苔がきれいだ」と思うだけでなく、「この世界に入り込んでみたい」という深い没入感を覚えるのです。
愛好家を育て、仲間を増やす「教える力」
今田さんのもうひとつの大きな功績は、圧倒的な「教える力」と育成への情熱です。
大阪の店舗で長年開催されている少人数制のワークショップでは、単に「作り方」を教えるだけにとどまりません。
苔の種類やそれぞれの個性
自生環境と適切な光・湿度の関係
日々の正しい管理方法
株が弱ってしまった時の対処法
何年も美しく育てるためのコツ
こうした専門的な知識までを丁寧かつ分かりやすく伝えることで、単なる「体験者」を「生涯の苔愛好家」へと育て上げてきました。
現在、全国各地で活躍しているクリエイターの中にも、今田さんの教室で学び、背中を追いかけて独立した人が数多く存在します。

トップブランドや文化事業に選ばれる信頼性
今田さんの卓越した技術と表現力は、個人のファンにとどまらず、国内外のトップブランドや公的機関からも高く評価されています。
【今田さんのこれまでの実績】
•ラグジュアリーブランド「PRADA」でのワークショップ開催
•大阪・関西万博関連事業への作品展示
•JR東海「そうだ 京都、行こう。」の「コケ寺リウム」プロジェクト作品制作
•京都・安祥寺での大型制作「蘚苔蟠龍(せんたいばんりゅう)」奉納
空間の美意識が厳しく問われる現代アートや文化事業の世界において、苔という素材を用いてこれほどの存在感を示せるクリエイターは稀有です。
数々のテレビや雑誌といったメディア出演も含め、「苔の第一人者といえば今田さん」という揺るぎない信頼を確立しています。
業界全体を未来へ推し進める「プロデューサー」として
今田さんの最も魅力的な点は、「自分ひとりが評価されること」をゴールにしていない姿勢にあります。
苔の面白さをひとりでも多くの人に知ってもらうこと。
苔を心から愛する人を増やすこと。
そして、正しく育てられる環境や知識を広めること。
その地道で誠実な積み重ねこそが、結果として「苔テラリウム」というジャンルを一時的なブームではなく、持続可能な「文化」へと引き上げてきました。
作品だけを見れば、誰もが認める稀代のトップクリエイター。
しかしその活動の全体像を見渡したとき、今田裕という人物は、業界全体の未来を切り拓く孤高の「プロデューサー」なのだと感じます。

DelaM’s 編集部より
苔テラリウムの世界には、多様なスタイルを持った素晴らしいクリエイターたちが存在します。
その中で今田裕さんが切り拓いてきたのは、「苔を美しいアートとして愛で、暮らしの中に根付く文化として愉しむ」という新しい選択肢でした。
彼が築いてきた道筋があるからこそ、いま全国で多くの人々が苔に癒やされ、新しいクリエイターたちが芽吹く豊かな土壌が生まれています。
ガラス容器の中に描かれる美しい世界はもちろんのこと、業界の未来を見据えて歩み続けるその姿こそが、今田裕さんという表現者の最大の魅力なのです。
DelaM’s Archivesシリーズでは今後も苔テラリウムを率先する人物に焦点をあてその人物像を掘り下げた記事をリリースしてまいります。
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