【温泉ファンタジー】魔界湯士Sa・Ga 第2話 焚火と秘湯の噂
山道の途中にある小さな茶屋は、湯気と煙の匂いに包まれていた。
スパロウは団子を頬張りながら、店主へ身を乗り出す。
「なあ、その辺に秘湯があるって聞いたんだけど?」
店主の手が止まった。
周囲の空気が、わずかに静まる。
「……やめときな。」
「ん?」
「山の奥だ。鳥居を越えた先にある。」
店主は声を落とした。
「あそこは昔から、“魔界”って呼ばれてる。」
スパ子が眉をひそめる。
「魔界ぃ?」
「秘湯があるって噂はある。だが、行った連中は戻って来ねぇ。」
その時、店の奥に座っていた老人が静かに口を開いた。
「あの湯には、守り神がおる。」
スパロウの目が輝く。
「守り神付き秘湯!?」
「食いつくところそこなの……?」
スパ子が呆れたように額を押さえる。
老人はゆっくり続けた。
「あの鳥居の先は、この世とは異なる場所じゃ。それでも行くのか、若いの。」
スパロウは即答した。
「もちろんだ!」
スパ子は深いため息をつく。
「はいはい。どうせ止めても行くんでしょ。」
「当然!」
「秘湯バカ……。」
____
山道をしばらく進み、空が赤く染まり始めた頃だった。
「今日はこの辺で野営するか?」
「そうね。」
そう言うと、スパ子はどこからともなく折り畳まれたテントを取り出し、スパロウへ放り投げた。
「設営よろしく。」
「どっから出てくるんだ、それ……。」
「乙女の秘密よ。」
スパロウは受け取ったテントと、ひらりと揺れるパレオを見比べる。
(……絶対そこだろ。)
だが、口には出さない。
たぶん怒られる。
____
夕食時。
ちなみに今の食事を調理した器具や食材も、どこからともなく現れた。
おそらく___いや、言うまい。
「なあ、スパ子?」
「何よ? 太郎。」
「スパロウって呼んでもいいんだぜ?」
「嫌よ。あんたは太郎で十分よ!」
「素直じゃないな?」
「ふん!」
____
テントの中から、太郎のいびきが聞こえる。
今は私が見張り番。
星空の下、焚火を見ていると昔のことを思い出す。
さっき名前の話が出たせいかもしれない。
「私……本当は京って言うんだけどなぁ。」
焚火が小さく爆ぜる。
「太郎に会った時、“京”って読み間違えられて、“スパコンの京じゃん!”って笑われて___」
「それからスパコン、スパコンってからかわれて、スパ子で定着しちゃった……。」
「でも、今さら言い出せないし……。」
スパ子は膝を抱える。
「それに、ちょっとだけ、お揃いでうれしいかも……?」
言った瞬間、自分で顔が熱くなる。
「っ……あいつのことは絶対にスパロウって呼ばないんだからね!」
焚火が揺れる。
顔が熱いのは、そのせい。
きっと。
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『そもそも・・・』
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『漢・温泉太郎なんて、読めるかーーー!!』

