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【ドラクエ11夢小説】マスク・ザ・ハンサム【多分シルビア夢】

シルビアさんを巡って、夢主とマスク・ザ・ハンサムが大激突!?

「お前、シルビアさんの何なんだ」

恋のライバル──という名の、言うまでもなく当て馬回。
とはいえ、内容はガチのバトル回です。

笑って、ぶっ飛んで、ちょっとだけ泣ける。
そんな三角模様コメディ、はじまります。


マスク・ザ・ハンサム



今日はオフだったので朝からグロッタカジノで副業をして、
己の生命線たる景品・魔法の聖水をたくさん頂戴した。
そして昼間からは酒場で一杯やっていた。どの角度から見ても完全にクズの一日だが、たまには良いだろう。
そんな折の話だ。
不意にカウンターで甘ったるい安酒を堪能する私の横に、誰かが座った。
他に席が空いているにも関わらず、だ。
そしてそれが誰かを、私は知っていた。
もっとも彼はこの辺りではそれなりに有名だからであり、特に知り合いというわけではない。
それがなんだって私の横に。
見目麗しい仮面の男、マスク・ザ・ハンサムを興味なさげなフリをしながら横目で伺う。

「…何」

偶然座ったに過ぎなかったとばかり思っていたはずの有名人と目があう。
しかも彼はご自慢の紫の仮面の下の美しい双眸を憎悪に燃やしていた。
そして早速言い放ったのだ。

「お前シルビアさんの何なんだ」

…と。
何なのだと聞かれても困るのはこちらだ。
やることやってる以上恋人(スラッシュ三本ほしい表現)とでも言えばよかったのだが、
変な答え方をしてシルビアさんに迷惑をかけるのは絶対に嫌だった。
この時、傭兵とそのお客様という本来の関係を説明できればまた別の展開があったのかもしれないけれど、
それが成立することはなかった。

「シルビアさんは僕のオトコだ。これは忠告だ。彼に付きまといたぶらかすのはやめてくれないか!」

「おっと」

聞き捨てならないセリフがひとつ、ふたつ。
掴みかかろうとしてくるハンサムの手首を掴み、即座に切り返す。

「シルビアさんがあなたをたぶらかしたんじゃない?」

「な、なんだと!?」

激昂して頭から湯気でも噴出さんばかりの彼を冷笑する。
もうすでに私はマスク・ザ・ハンサムを恋敵として認定していた。

「っていうかシルビアさん、誰にでも優しいから。ハンサム。
あなたなんかどうせ、良いように言われてその気になっただけでしょ?」

「ボクがそうなら、お前だって同じことだろう」

「違いマース。私はシルビアさんと…ああ、ちょっとこれ以上は」

性悪全開で煽ってやる。
シルビアさんが絡んでは冷静になりきれるはずがなかった。

「ほざけっ…このブス!」

一瞬、身体が中に浮いた。
そのまま椅子を何脚か巻き込みながら後ろに飛ばされる。
頬から背中から尻から、痛み。
殴り飛ばされたんだと思った。しかもグーで。

「やったなこの…」

「決闘だ!!!」

もう許さない。
規制必至の暴言を撒き散らそうとするのを遮るようにハンサムは怒鳴る。

「どちらがあの人に相応しいか決めようじゃないか!!」

「臨むところだこの野郎」

衝撃でだらだらと流れる鼻血をぐっと拭い、なんとか言い返した。

マスク・ザ・ハンサムはグロッタ名物『仮面武闘会』の元闘士だ。
元、とは言っても彼自身が自らの意志によって引退したわけではない。
ただ単に勇者様たちが出場した前回大会を最後に武闘会そのものがなくなっただけである。
否応なく一般人に戻った彼は、けれどまだどこかで戦い続けているみたい。
その佇まいを見る限りスキはなく、実力としてはまだまだ現役と判断するのは容易だ。
無敵のチャンピオンことハンフリーほどではないけれど、腕が立つことで有名な闘士。
レディー・マッシヴなる謎のどハデで長身のおネエ闘士(なおそんな濃い人物なんて、
闘士どころかこの世に一人いれば充分である)と組んで、
ハンフリーを含めた優勝組を苦戦に追い込んだ実績もある。
…というのは後になって一緒にグロッタに訪れた際に、双子から聞いただけの話だけれど。
…観たかったなぁシルビアさんの雄姿。
なんで今年に限って観られなかったんだろうと己の不幸をカジュアルに呪う。
しかも最後の仮面武闘会だったのに…。
それはともかくいずれにしても、ハンサムは強い。
そして細面に似合わず彼も荒くれの一員である以上実力以上に油断はできない。
一方で勝算がないわけではなかった。
私だってこれまで伊達に戦ってきたわけではないのだ。

「マスク・ザ・ハンサム…」

「なんだ」

「戦う前に言っておきたいことがある」

「…言ってみろ」

すうっと深呼吸する。ここにきて、私は緊張していた。
なぜならば。答えは簡単だった。

「私はあんたのファンだった」

動揺したようにハンサムの目が見開かれた。
この瞬間がチャンスに他ならない。
剣を抜き、突進する。
シルビアさんやこの人のように華麗さはないが、それはこの際どうだって良い。
この不意打ち染みた初動で全てを決めるつもりだった。

「くっ…!」

しかしハンサムもシルビアさんが気にかけただけあって、やはりタダモノではない。
咄嗟に大振りなダガーをかまえ、私の剣を受ける。
私が上で、奴が下。
力はあちらが上かも知れないが、体重はかけることができる方が基本的には有利だ。
気にせず圧せばいい。

「くっそ、ぉおお!!」

ハンサムが、吠えた。
私に怒鳴るよりも大きく、線の細い面差しからは想像できない野太い声で。
これはやばいと思うが早いか、私はバックステップを踏む。
大きく力強く振られるダガーに当たりこそしなかったが、もしそうなら、流血は免れなかったに違いない。

「不意打ちなんて…卑怯だぞ」

「でも嘘は吐いてないよ。あとでサインください」

「断る!」

ハンサムはダガーをしまう――かと思えば今度は二連ブーメランにスイッチ。
一見明後日の方に投げられた双子のブイ字の挙動は、
途中で引き返してきて私を打ち据えるために計算し尽くされたものだ。
だが私は彼のやり口を知っている。
…元ファンゆえに。
ブーメランのあまりにも独特な挙動は読み辛く、躱し辛い。
しかし、それは正面からバカ正直に対応すればの話。
対策を取れば何のことはない。
呟くように、しかし己の中で最速を目指したピオリムを唱える。
それが功を奏し魔力は即座に筋肉を強化し、おかげで素早く地に伏せることができた。
次の瞬間、すぐ上背中スレスレをブーメランが風を切りながら通り抜ける。

「…素早いな。さすが泥棒猫といったところか」

「高速詠唱って結構レアな特技だよ羨ましい?まー恋愛脳にはわかんないか」

お約束の煽り合いに、お互いの怒りに染まった視線がかち合う。錯綜する。

「お前だけには言われたくない!!」

そしてセリフが全力で被る。
それにしても近づけば短剣離れればブーメランと、
ハンサムの戦い方は中々手堅い上に手数も多いのでつけ入り辛い。
こういう時こそハッタリ魔法生物『ビットくん』の出番なのだけれど、
アレは魔力を練るのに異常に時間がかかる。
相手の手数の多さを思えば言うまでもなく当然没だ。

「ふざけるな!!」

「お前がなぁ!!」

第二陣。斬りあう。
がちん、と片手剣とダガーが喧嘩する。
何度かの応酬。
がちんがちんとむしろ示し合わせたかのように、お互いに一歩も譲らない。
このままでは埒が明かない、そう思ったのはどちらが先か。
いずれにしても、先に行動したのは私だ。
嵐のフォース。属性という名の剣圧を乗せる。

「くっ」

再度の一撃。
風の力のせいで、ハンサムのダガーの力点が僅かにずれる。
それが狙いだった。
そのまま、剣に力を込める。
ダガーを弾き飛ばすために。
かしゃんと己の握力が勢いに負け、音を立てて落ちる己の武器に僅かに気を取られたハンサムの顔に、
今一度切りかかる。

「くっ…そ…!」

しかし元ファンなので、その美しい顔に傷をつける気など毛頭なかった。
ゆえにハンサムの顔面は苦痛ではなく屈辱に歪む。
その画は生々しくも直接的に伝わってきた。
私がいましがた、彼の仮面を割ったからだ。
仮面の戦士は大抵、それをひっぺがされるのを極端に忌み嫌う。
そういう信念のようなものこそないものの、
マスカレード装備を主とするだけの自分ですらそんな傾向が最近あるから、ハンサムはおそらくもっとだろう。

「…シルビアさんにふさわしいのはこれで私の方ってことになるかな」

「おま…え、…な、なんてことを…!」

言葉こそ強いが、しかし。
露わになったハンサムの両目から滂沱として涙が溢れる。
視点を引いてみれば女性のように滑らかで普段は抜けるように白い肌が、今は恥辱で真っ赤に染まっていた。

「ここまで…!ここまですること、ないだろっ…。うえええん!!」

「ええ…」

先ほどまでの高圧的な態度と堂々たる戦いぷりはどこへやら。
気弱な少女のように泣きじゃくり始めたハンサムを前に、私は言葉を失う。
っていうかこっちがいじめてるみたいだから本当にやめてほしい。

「…何をしてるの?」

そして一番聞きたくないタイミングで、普段は愛しい声が冷たく問いかけてきた。

「…先ほどは悪かったな。ボクは仮面がないと、まともに話せない性分なんだ」

限りなく面倒な性格をさも当然のように語るハンサムは、すっかり機嫌を直していた。
割られた自分の仮面の代わりに、愛しのシルビアさんから自前(なぜ持っているかは触れないのが優しさ)
のものをもらったためである。
それを身につけ、彼はとても高圧的に謝罪してきた。
これだけで充分閉口ものである。

「でも…、ふたりはなんでケンカなんてしていたの?」

顔見知り二人がいがみ合っていることがシルビアさんは残念なのだろう。
むしろこちらの心が痛むくらいしょんぼりした表情で聞いてくる。

「それは…」

お姫様を二人の騎士が取り合ってました。
…なんてまさか根っからの騎士を前に冗談でも言えるわけがない。
考えあぐね、でも泣かせてしまった手前ハンサムに対しても遠慮が出てしまい、声が裏返った。

「な、んていうか、ハンサムさんが酔っ払って絡んできたっていうか、
ってどうしたんだろー?、カジノで負けたのかなぁ〜?」

「ああ、腹いせだよ。…お前、ケンカ馴れしてそうだったしな。
実力もありそうだし、そう大した怪我もさせないだろうと踏んだ」

ハンサムと視線がかち合う。
が、先ほどまでのような悪意に塗れたモノではない。
まさか会うとは思わなかったシルビアさんに会ってしまったことで、共通の目的を持ってしまったのだ。
彼に嫌われたくないという、非常に根源的な願望。
ライバル同士蹴落とし合いをするよりも、今だけは共同戦線を張ったほうが良いことは心得ていた。
この人の前では。特に。

「そう。それなら仕方ないわね」

シルビアさんは短く返す。

「と、言うとでも思った?」
 
納得してくれたと思ったらそうでもなかった。
シルビアさんは人は良いが簡単に騙されるようなタイプではない。
それに私も多分ハンサムも、基本的にはそこまで策を弄せない。

「アタシもずいぶん舐められたものね。そんなので納得するわけないじゃないの。
ハンサムちゃんは簡単に人に絡んで行く子じゃないって知ってるんだから!
…エルザちゃんはまあ…うん、そうね」

「えっ」

喜びと焦りが入り交じるハンサムの傍ら、私は謎の肯定をされた。

「とにかく…本当のことを教えてちょうだい。
いい年した大人のイザコザに首を突っ込むのもヤボかもしれないけど…
でも…このまま放っておくこともできないわ」

胸に手を当て、シルビアさんは沈鬱な顔をする。
その優しさや人としての美しさそのものが、今回の争いの原因になったのだからなんとも皮肉な話である。
と他人事のように思う。

「…気にいらなかったんだよ」

その悲しげな視線に耐えかねたのか、ハンサムの告解。

「その女が!ボクは気にいらなかった。
大した器量でもないのにシルビアさんの彼女みたいな顔して…当たり前のようにいつでも側にいて、
なんでだよって思ったものさ…。シルビアさんはボクのカレシなのに……」

最後はもう、恋敵という立場も忘れ同情して
しまいそうになるくらいに声が震えていた。
新たな仮面を被ってなお彼は泣きそうになっていた。

「…私もはっきり言えば良かったんだけど、結局売り言葉に買い言葉で、決闘することになったの」

そんな哀れな彼を突き放すことが私にはできなかった。
同じく細かい経緯は伏せ、しかしありのままを語る。

「どちらが、シルビアさんに相応しいか」

「ちょっと待って」

まさかのストップが入った。

「どうしたの、シルビアさん。人の話を遮るなんて、らしくない」

「え、ええ、ごめんなさい。…なんていうか、アナタたちそんな昔の恋の物語みたいなことやってたの?
その、なんていうかお姫様を巡って争う騎士みたいな…」

その例えはありだったのかということに多少の驚きを覚えつつ答える。

「うんなんか…そんな感じ」

シルビアさんは基本的にこの手のある種ロマンチックなことは好きなようだ。
しかし今回ばかりは別なのだろう。
これ以上ないくらい困惑している。
ケンカの仲裁に入ったら原因が自分だった、なんてふつう夢にも思わない。
普段は良くも悪くも周囲を巻き込むタイプの人間が、完全に巻き込まれていたのである。

「とにかく、私が勝った。ハンサムが負けた。そこにちょうどシルビアさんたちが来たってわけ」

そ、そう、とシルビアさんは言ったっきり黙り、考え込む。
そのあまりにも真剣な視線は、あるいは魔物と対峙した時より勝った。
ひょっとすると、彼のショーよりもだろうか。
たっぷりと黙り、たっぷりと間をとって深呼吸して尚、シルビアさんの顔から困惑は抜けない。

「ねえ、ハンサムちゃん。本当にごめんなさい。
アタシそもそも、ハンサムちゃんの恋人になった覚えがないのだけど…」

これ以上なく申し訳なさそうに眉尻を下げ謝罪する。
そこにもし嘘があるなら、シルビアさんはこの上なく恐ろしい人物だ。
そう思わせるくらい真摯な言い回しだった。

「は?え?」

そして当のハンサムの声は裏返っていた。
全く理解できないといった風だ。
顔を赤く青くしながら、なんでと声を絞り出す。
シルビアさんは首を傾げつつも、それに答える。

「アタシ…もしかしたらアナタが誤解してしまうようなことを言ったのかも知れないわね…。
そうだとしたら、…本当に申し訳がないわ」

そこでシルビアさんは一度言葉を切る。
でも、と付け足し私の方を見る。
二三歩歩み寄り、軽く肩を抱かれる。
確固たる口調で、続けた。

「アタシ、この子が大事なの」

その時こそ申し訳なさそうな、しおらしい態度をしていたシルビアさんだが、
このあと下記の理由でめちゃくちゃ説教された。
第一にプロの闘士からの不要な喧嘩を買ったこと(勝ったことは褒められた)。
そして第二に話の流れとはいえ、シルビアさんをトロフィー扱いしたこと。
とばっちりもいいところである。




【あとがき】

ハンサムがこんなに泣くとは思ってなかった。
夢主もやりすぎ。
シルビアさんはただの被害者。

たぶんこの短編が、ハンサム初登場作品だった気がします。
いきなり暴れて、仮面割れて、泣いて、説教されるって……
キャラ紹介にしてはインパクトがすぎる。

恐ろしいことに彼、今後登場予定がまだありやがります。は???

うちのハンサムを気に入っていただけたら、「スキ」よろしくお願いします!


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