見出し画像

感想を放し飼いにするな

SNSを見ていると、たまにびっくりすることがある。

知らない人に向かって、急に容姿のことを言う人がいる。

「老けた?」
「太った?」
「前の髪型のほうがよかった」
「なんか顔変わった?」
「その服似合ってない」

なぜ、本人に届ける。

思うのは自由である。

人間なので、何かを見て何かを思うことはある。
好き、苦手、似合う、似合わない、前のほうがよかった。

心の中に感想が生まれること自体は、まあ仕方ない。

でも、それを本人に直接伝える必要があるかどうかは、また別の話である。

特に容姿のこと。

本人が聞いてもいないのに、外見についてコメントするのは、だいぶ危ない橋だと思う。

しかも、その多くは結局、
自分のものさしで相手をはかっているだけだったりする。

自分にとっては、前の髪型のほうが好き。
自分にとっては、痩せているほうがいい。
自分にとっては、その服は似合わないと思う。
自分にとっては、もっとこうしたほうがいいと思う。

でも、それはあくまで自分の感想である。

相手の正解ではない。
相手の人生の採点基準でもない。
ましてや、本人に押し付けていいものでもない。

自分のものさしで勝手にはかって、
その結果を相手に通知するな。

それは健康診断の結果ではない。
あなたの感想である。

褒めているつもりでも、相手にとっては引っかかることがある。

「痩せたね」も、状況によっては褒め言葉ではない。
「前よりかわいくなったね」も、じゃあ前はどうやったんや、となる。
「その髪型のほうがいい」も、前の私は何やったんや、となる。

言葉は、意外と相手の中に残る。

言った側は、ただの一言かもしれない。
でも言われた側は、その一言をお風呂の中で思い出したり、寝る前に反芻したりする。

こわい。

人の心の中には、言葉の冷凍庫がある。
何年も前に言われた何気ない一言が、なぜかずっと冷凍保存されていることがある。

だからこそ思う。

思っても、本人に伝えるな。

それはあなたの感想であって、相手への業務連絡ではない。

もちろん、良いことなら伝えたほうがいいと思う。

かわいい。
似合ってる。
素敵。
好き。
元気をもらった。
今日の投稿よかった。

そういう言葉は、ちゃんと相手に渡していい。

言葉には、人を少し軽くする力がある。

ただし、難しいのはここからである。

良い言葉の顔をして、相手を少し落としてくる言葉がある。

「前よりかわいくなったね」
「痩せたらもっといいのに」
「その服、意外と似合ってる」
「昔よりだいぶマシになったね」
「最近ちゃんとしてるやん」
「そういうのも着るんだ、意外」

褒めているようで、よく見ると小さい針がついている。

言われた瞬間は、笑うしかない。
でもあとから、じわじわくる。

あれ、今、褒められたんか。
それとも、遠回しに落とされたんか。

こういう言葉は、ほんとうに扱いが難しい。

たぶん言った本人は、悪気がないこともある。
でも、悪気がないからといって、相手が傷つかないわけではない。

良いことを言うなら、ちゃんと良いことだけ言えばいい。

かわいいなら、かわいいでいい。
似合ってるなら、似合ってるでいい。

前と比べなくていい。
余計な条件をつけなくていい。
過去の相手を下げながら、今の相手を褒めなくていい。

褒め言葉に、毒針を仕込むな。

人の人生に、勝手に赤ペンを入れるな。

そして、SNSは相手との距離感がバグりやすい。

画面越しに見ていると、なんとなく知っている人のような気がしてしまう。
毎日投稿を見ていると、友達みたいな気持ちになる。
でも、向こうからしたら、こちらは知らない人である。

知らない人から急に容姿について言われる。

普通に怖いわ。

たとえば道を歩いていて、知らない人に急に
「前の髪型のほうがよかったですよ」
と言われたら、かなり怖い。

SNSでも同じである。

なぜかネットになると、その距離感が一気にゆるむ。

コメント欄は、心の中ではない。
下書きでもない。
居酒屋の隅の小声でもない。

本人に届く場所である。

自分の中に生まれた感想を、全部外に出さなくてもいい。
言葉にも、家で寝かせておいたほうがいいものがある。

思った。
でも言わなかった。

これも、立派なやさしさだと思う。

むしろ大人になるというのは、
「言いたいことを言う力」より、
「言わなくていいことを飲み込む力」なのかもしれない。

知らんけど。

でも本当に、知らん人の容姿にいらんこと言う前に、一回スマホを伏せてほしい。

そして深呼吸してほしい。

その一言、ほんまに相手に渡す必要ある?

ないなら、そっと心のゴミ箱へ。

あなたの感想は、あなたの中で飼っていてほしい。
放し飼いにするな。

褒めるなら、ちゃんと首輪をつけてからにしてほしい。

いいなと思ったら応援しよう!