昭和天皇と日本野球|2025野球書店大賞 次点作品
昭和天皇はある夜、暗闇に広がる光を見て侍従に言った。
「あの光はなにか?」
「後楽園球場でございます」
「夜に野球ができるのか?」
「はい。ナイトゲームと呼ばれるものが行われるようになっております」
こんな会話があったとか、なかったとか。
早稲田大学野球部の練習を見に行くほど野球が好きで、宮内省に野球チームも作らせた昭和天皇。
神宮球場の建設と東京六大学野球、天皇杯の下賜の関係。
昭和天皇が命を狙われた(虎ノ門事件)の警備責任をとらされた正力松太郎(当時警視庁)が天覧試合開催に奔走。
天皇退席まであと1分のタイミングでサヨナラホームランを放った長嶋茂雄。
野球が大好きな今生天皇と皇后、そして愛子様ーー
これまでにも野球の伝来、勃興、発展を解説してきた本は数多いが、ここまでは分かりやすく、面白くまとめられている本はない。
野球史に欠かせない多くの人物や出来事。それらの点と点が伏線改修のように次々と繋がっていき、それが「昭和天皇とプロ野球」という大きな1本の線になっていく。神田伯山の講談を聞いているかのように、軽快なテンポで物語に引き込まれていく。
都市対抗野球の生みの親、「橋戸賞」に名を残す橋戸信は、実は「早慶戦」も立ち上げている。
始球式で打者が空振りをする風習ができたのは大隈重信の始球式がきっかけ。
天覧試合に出場した選手の中で広岡達朗だけが天皇の前でプレーするのが実は二度目だった。
誰かに話したくなる様々な野球トリビアがちりばめられているのも読後の満足感を高めてくれる。
この本を読めば、野球界の先人達に改めて敬意を抱くことは間違いない。

