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作家・土居豊の音楽批評コンプリート版・ゼロ年代〜2010年代編【ゼロ年代末、昭和のクラシックとの別れ】

割引あり

作家・土居豊の音楽批評コンプリート版・ゼロ年代〜2010年代編
【ゼロ年代末、昭和のクラシックとの別れ】


※前段まで
【日本の合唱、合唱団、合唱文化など】

【吹奏楽を批評する難しさ(不要ということかも?)】

※まとめ読み
マガジン
作家・土居豊の音楽批評コンプリート版・ゼロ年代〜2010年代編


 ゼロ年代の終わり頃まで、筆者は大阪に残る昭和時代からのクラシック音楽の記録を、意識的に書き綴っていた。
 まだ21世紀に入って10年弱だというのに、大阪では橋下府知事時代が始まるとともに、古き良き大阪の文化がどんどん破壊されつつあったからだ。音楽の面でもそれが顕著で、何よりも大阪市の遺産というべき大阪市音楽団や、大阪府の音楽文化を担った大阪センチュリー交響楽団(旧・大阪府音楽団)を切り捨てようとしたことは、大阪に根付いてきた音楽文化に大きな変化をもたらした。結果的に、前者はShion、後者は日本センチュリー交響楽団となって民営で生き残ったが、それでも大阪の政治行政がこの時期、昭和以来の文化的蓄積を切り離そうとしている動きが目立った。この動きはその後、2010年代を通じて今に至るまで、着々と進行中だ。
 大きな変化として、昭和、戦後の時代に建てられた主要な音楽(多目的)ホールが改築されていったことも挙げられる。名実ともに大阪文化の中心地だった大阪フェスティバルホールが、大規模に建て替えとなって、昭和時代の豪華な雰囲気が良くも悪くも変わってしまった。


フェアウェルコンサートの際の大阪フェスティバルホール

※過去ブログ

2008年12月31日
「フェアウエル、フェスティバルホール」
https://ameblo.jp/takashihara/entry-12556750725.html

《29日30日と続けて、大阪フェスティバルホールのファイナルステージが、大阪フィルの第九で盛大に行われた。指揮の大植英次は、弦楽を対面配置にして、構築感の確かな演奏を1、2楽章と続けた。だが、今夜の真骨頂は、3楽章アダージョにあった。まるでマーラーのアダージョを思わせるロマンチックな解釈で、大胆にテンポルバートをかけ、思い入れたっぷりにオケを歌わせた。フィナーレは、一転して、堂々とした祝典風。ソリストたちの豊かな声が、ホールの隅々まで響いていた。
 この夜、本当の主役は、フェスティバルホールだった。最後は、ホールのオープニングの曲だったというエルガーの威風堂々。満場のスタンディングオベーションと手拍子で盛り上がって、歴史あるホールは、幸せな幕切れを迎えた。惜しむらくは、この素晴らしいホールを、芸術文化の遺産として、原型を生かした形での改築をするのではなく、完全に建て替えてしまう発想だ。阪急百貨店の建て替えといい、府庁や中央郵便局の建て替え計画といい、貴重な近代建築を文化遺産として未来に生かす考えは、大阪では実現しそうにない。》


 この旧・大阪フェスティバルホールは、名実ともに大阪という町の最後の発展の象徴だったと、今にしてわかる。
 日本で初めての国際音楽祭が、大阪国際フェスティバルであり、そのために中之島に建設された大ホールと、セットになった国際級のシティホテルがホテル・グランドだった。大阪駅を出てまっすぐ中之島方面に歩くと、川の手前に歓楽街の「北新地」があり、橋を渡ると真正面にホテル・グランドの赤絨毯のエントランスがある。フェスティバルホールはその奥にあって、ホテル宿泊者のために様々な商店がアーケードを形作っている。演奏会までの時間を、ホテルで過ごすもよし、中之島を川沿いに散策するもよし。演奏会の後は、橋を渡って対岸の北新地で飲んだり遊んだりできる。この大阪国際フェスティバルには、当時の世界中の錚々たる音楽家・団体が次々と出演していた。かのバーンスタインも、まだ若い頃にニューヨークフィルと来演し、北新地で遊んだという。
 良くも悪くも昭和な(20世紀的な)音楽文化の豊穣な場所が、あの一時期には確かに大阪のキタのど真ん中、中之島に存在したのだ。その後、経済が完全に東京一極集中するに従って、大阪の音楽文化は単なるローカルな位置に低落し、平成、令和の今では、もはや過去の栄光さえ忘れ去られている。


大阪国際フェスティバル会場のフェスティバルホールは、肥後橋の朝日新聞社の向かいにあった



旧・大阪フェスティバルホールへの赤絨毯の階段

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作家・土居豊の音楽批評コンプリート版の第4弾! ゼロ年代〜2010年代までをまとめます。

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土居豊:作家・文芸ソムリエ。近刊 『司馬遼太郎『翔ぶが如く』読解 西郷隆盛という虚像』(関西学院大学出版会) https://www.amazon.co.jp/dp/4862832679/