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【関西オーケストラ演奏会事情〜20世紀末から21世紀初頭まで】1980〜90年代 第7回 大阪フィルと若杉弘の奇跡のマーラー

【関西オーケストラ演奏会事情〜20世紀末から21世紀初頭まで】1980〜90年代
第7回 大阪フィルと若杉弘の奇跡のマーラー


※写真は土居豊所蔵のパンフレットなど

IMG_4371のコピー


1 マーラーの交響曲第7番

 
 正直言って、マーラーの交響曲の中でも第7番だけは、聴き始めてから長らく、意味がわからなかった。それもそのはず、この曲は、マーラー作品の中でも特に難儀な一曲なのだ。


※引用
『グスタフ・マーラー 失われた無限を求めて』アンリ=ルイ・ド・ラ・グランジュより
《交響曲第7番は、間違いなく、マーラーの作品のなかでもっとも謎が多く、また人気のない曲である。
(中略)
一見、交響曲第7番がたどる、夜から昼へ、敗北から勝利へという道筋はかなり単純に思われる。》


 このラ・グランジュの記述のように、5番と並んで、悲劇的な開始から終楽章の勝利のファンファーレへ、というベートーヴェンの5番のようなシンプルな構造だと思って聴けば、そう聴けないこともない。けれど、そう思うには、どうしても1楽章がギクシャクしすぎるし、最後の5楽章も、勝利の凱歌というには、何度も繰り返し蹴つまずく。


※同
《第1楽章の序奏からすでに、テナーホルンの暗く雄弁な主題は皮肉っぽい小行進曲によって中断される。調性が不安定なこの行進曲は、前後をつなぐ役割を果たしている。たちまちのうちに、この作品においてはもはや即座に理解できるものは何もないという印象が強くなる。
(中略)
第7番は第6番のペシミズムのあとを受け、第8番の信仰を証する祈りに先んじているが、この曲だけで、マーラーのなかに叙事詩を描く大フレスコ画の音楽家、思想家、哲学者、または逆に時代遅れのロマン主義者、つまり人間の嘆きを歌う者しか認めないことがいかに馬鹿げているかは明らかだ。なぜなら、すべてが皮肉で、多義的で、不自然なこの交響曲にはそのいずれも一切存在していないからである。》


 この曲を生演奏で初めて聴いたのは、以下のエッセイにまとめたように、1989年のことだった。

※エリアフ・インバル指揮 ベルリン放送交響楽団 来日公演 1989年


 もちろん、その前に録音で何度も聴いていたのだが、上記のように、なんとも理解しにくい音楽だったので、マーラーの曲の中でも聴く回数は最も少なかった。
 1984年録音のアバド指揮シカゴ交響楽団のCDが発売されて、そのCDを買って聴いたとき、この曲の意味がようやくわかったような気になった。
 そうはいっても、聴いていてもっとも理解に苦しむのは、この曲の冒頭から活躍するテノールホルンだ。この楽器は元々が軍楽隊の楽器でドイツのブラスバンドでよく使われる。吹奏楽のマーチングをやったことのある人ならおなじみの楽器であるアルトホルンとは違う系統の、音域の高いチューバ系楽器だ。その音はオケの中で使うには荒々しく開放的で、どう考えてもオケの金管群としっくり融け合わない。
 だが、それこそがマーラーの意図だというのを、この曲の解説やマーラーについての本で読んで、一応知ってはいた。だが、そう言われても、聴く側としては、もう一つ、しっくりこない。何より、テノールホルンが耳障りで、交響曲第7番の1楽章はあまり好んで聴く気にならないのだ。


※テノールホルンとは違う系統の楽器、ワーグナーチューバ

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 ところが、実のところ、このテノールホルンが理解できれば7番を理解できるということが、だんだんわかってきた。
 いろいろな録音を聴き比べるうち、この1楽章のテノールホルンの扱いの違いが、楽曲理解の決めてになることに気づいたからだ。
 実のところ、録音で聴いて最初に納得がいったアバド&シカゴ響の演奏では、テノールホルンの扱いがずいぶんと雑だというのも、聴き比べるとわかってきた。その点で、もっともテノールホルンの扱いが見事に効果的なのは、テンシュテット指揮ロンドン・フィルの録音だと思うのだが、このことは後でのべる。

 

2 若杉弘指揮の大阪フィル演奏会

 
 さて、肝心の若杉弘指揮の大阪フィルの演奏会だが、このマーラー7番を実演で聴くまで、何度も接してきた。そのいずれもが完成度の高い、素晴らしい演奏会だった。同じ大阪フィルとは思えないほど、合奏の密度が緻密で、見事に合っている。さらに演奏の振幅の大きさや、主に大編成の曲が多いのだがそのアンサンブルの巧みさ、全く文句をつけられないぐらいの演奏が繰り広げられた。
 だから、このマーラー7番にも、期待はしていた。その期待をはるかに超える超名演になろうとは。

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