生徒がピアノを辞める本当の理由/ピアノ講師が「弾きたい曲」から始める話
全国でピアノ・エレクトーンを教えていらっしゃる先生方へ。
今日から新しい連載を始めます。
テーマは「弾きたい曲から始めるレッスン」です。
♪1. 「先生、この曲が弾きたい!」
レッスンをしていると、生徒さんからこんなふうに言われること、ありませんか。
「先生、ゲームの曲が弾きたい!」
「発表会で、この曲を弾きたい!」
キラキラした目で、YouTubeを開いて見せてくれたり、スマホの画面を見せてくれたり。
——でも、その曲は教本のずっと先のレベルだったり、そもそも市販の楽譜が見当たらなかったり。
こんなとき、こう答えていませんか。
「う〜ん、それは難しいね。もう少しレベルが上がったらね」
間違ってはいません。
順番を大切にするのは、指導者として当然のことです。
♪2. 私たちは「正しい順番」で習ってきました
王道のピアノ教育の指導法で、基礎から一歩ずつ積み上げていく。
私もそうして習ってきました。
——けれど、その中に心からピアノを楽しめている自分はいませんでした。
私自身、ヤマハ音楽教室で長く指導をしてきました。
教本を順番に、基礎から積み上げていく。
それが王道で、確かに力がつく方法です。
その価値を疑ってはいませんし、大切な部分だと思っています。
だからこそ、「弾きたい曲から」と言われると、今のピアノ講師さんは戸惑われるのではないでしょうか。
「それは寄り道ではないか」
「甘やかしではないか」
「基礎が抜けてしまうのではないか」
——そんな思いは、ありませんか。
♪3. 私には、迷いがありませんでした
正直にお話しすると、私自身は、生徒さんに好きな曲を弾かせてあげることに、何の迷いもなく指導してきました。
「好きな曲」「弾きたい曲」が出てくるのは自然な気持ちだと思いますし、そう言ってくれる方が、私はずっと前向きに受け止めることができました。
おかげさまで、曲をコピーしたりアレンジしたり、譜面を作成したりすることにも抵抗がありませんでした。
当初は市販の楽譜を探しましたが、生徒さんのレベルに合う譜面がなく、弾かせても難しすぎたり、アレンジがしっくりこなかったり。
そこで、自分で譜面を制作し、アレンジするようになっていったのです。
♪4. 実は、私も「弾きたい」と言えなかった
実は、これには私自身の体験が関係しています。
その昔、私はたとえクラシックの曲であっても、「この曲を弾きたいんです」と先生に言うことができませんでした。
言ったこともあります。
けれど、ことごとく否定されてきました。
そうして私の中に、いつしかこんな気持ちが芽生えていったのです。
——クラシックピアノを習うということは、流行りの曲を弾くことは許されない。
クラシックピアノは、別の音楽の世界なのだ、と。
だからこそ、あるとき、私は決めました。
私は、私のやり方で自分の生徒を育てていこう、と。
「弾きたい」という気持ちは、大切な音楽の入り口なのだ——そう信じられるようになりました。
子どもは「やらされる練習」では続きません。
でも、「弾きたい」が原動力になると、こちらが驚くほど自分から練習してきます。
そして不思議なことに、その過程で譜読みも、指の力も、自然と育っていくのです。
ですから、発表会の選曲も、まずは生徒さんに「弾きたい曲」を聞くことから。
そして、それぞれのレベルに合った譜面を準備してあげる。
毎年、そんなふうに発表会を開催してきました。
♪5. でも、現実には悩みもありますよね
とはいえ、「弾きたい曲から始めましょう」と言うのは簡単ですが、現場の私たちには、こんな悩みがついて回ります。
その曲の、生徒さんのレベルにちょうどいい楽譜が市販にない
好きな曲ばかりで、基礎はどうやって入れるのか
そもそも、どんな曲を選べばいいのか
この連載では、私がこれまで自然に行ってきた指導を、少しずつお伝えしていきます。
多くの先生がつまずく「その曲、楽譜がない」問題に、私がどう向き合ってきたか。
そして、生徒さんの「弾きたい!」に、もっと応えられる教室にするにはどうすればいいか。
次回から、その具体的なお話をしていきたいと思います。

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私が主宰するDolce Of Music音楽教室では、
「弾きたい曲に楽しく取り組める」「だから楽しく続けられる」
ことを大切にし、譜面が発売されていない曲も一人ひとりのレベルに合わせてアレンジしています。
生徒さんの選曲や譜面作りに悩む講師の方に役立てていただきたくて、デジタル楽譜の販売を始めました。
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