発表会は音楽教室を育てる―1. なぜ音楽教室に発表会が必要なのか
今日から、新連載として音楽教室と発表会について記事を書きます。
音楽教室にとっての発表会の意味やあり方、そして実際の発表会のつくり方まで、音楽教室を20年以上続けてきた私の視点から書いていきたいと思います。
♪1. 発表会の位置づけと意味
音楽教室にとって、発表会とは何でしょうか。
一年間練習してきた成果を、家族やお客様の前で披露する日。
もちろん、それも発表会の大切な役割です。
けれど、20年以上音楽教室を続けてきた私は、発表会は単なる「演奏を披露する場所」ではないと感じるようになりました。
発表会には、生徒を育て、先生を育て、そして教室そのものを育てる力があります。
発表会を開くのは、簡単なことではありません。
発表会を一つ開催するためには、想像以上に多くの準備が必要です。
会場を探し、日程を決め、生徒一人ひとりの曲を選び、練習の計画を立てる。
プログラムを作り、リハーサルを行い、当日の進行やスタッフの手配も考えなくてはいけません。
発表会が近づくと、講師は通常のレッスンに加えて、さまざまな準備に追われます。
生徒や保護者の方にとっても、参加費や衣装、練習時間などの負担があります。
そのため、
「そこまでして発表会を開く必要があるのだろうか」
「普段のレッスンだけでもよいのではないか」
と考える先生がいても、不思議ではありません。
私自身、第1回の発表会を単独で開催したときは、準備の大変さを身をもって感じました。
それから回を重ね、今年で17回目を迎えます。
その間、発表会を通してさまざまなことに気づかされてきました。
大変な準備がありながらも今まで続けてきたのは、普段のレッスンだけでは得られない成長を、生徒たちが見せてくれるからです。
♪2. 一曲と向き合う時間が、生徒を変えていく
普段のレッスンでは、合格した曲から次の曲へ進んでいきます。
けれども発表会では、一曲を何か月もかけて練習します。
最初は最後まで弾くことさえ難しかった曲が、少しずつ形になっていく。
うまく弾けずに悩んだり、練習が嫌になったりする時期もあります。
それでも本番の日が決まっているからこそ、もう一度楽譜を開き、少しずつ前へ進もうとします。
一曲を最後まで仕上げる経験は、単に演奏技術を高めるだけではありません。
「難しいと思っていた曲を、自分の力で弾けるようになった」
その実感が、生徒の自信につながっていきます。
♪3. 舞台に立つことは、点数では測れない経験になる
発表会では、どれだけ練習をしていても、思いどおりに弾けるとは限りません。
緊張して、いつもは間違えないところで止まってしまうこともあります。
思っていたような演奏ができず、悔しい思いをすることもあります。
けれども、私は「間違えずに弾けたかどうか」だけが発表会の成功ではないと思っています。
緊張しながら舞台に向かい、一人で椅子に座り、最後まで演奏する。
もし途中で間違えても、そこから立て直して演奏を続ける。
そして演奏が終わったあと、お客様から拍手を受ける。
その一つひとつが、普段の生活ではなかなか経験できない、大きな学びになります。
発表会で得られるものは、点数では測れません。
本番に向かって努力した時間も、舞台に立つ勇気も、思うように弾けなかった悔しさも、すべてがその生徒の成長につながっています。
♪4. 発表会は、ほかの生徒の音楽に出会う場所
普段の個人レッスンでは、ほかの生徒がどのような曲を弾いているのか、なかなか知る機会がありません。
けれども発表会では、年齢も経験年数も違う生徒たちが、同じ場所に集まります。
小さな生徒が年上の生徒の演奏を聴いて、
「いつか私も、あの曲を弾いてみたい」
と思うことがあります。
ピアノを習っている生徒がエレクトーンの演奏を聴いたり、ソロ演奏を続けてきた生徒がバンドやアンサンブルに興味をもったりすることもあります。
自分の演奏を披露するだけでなく、ほかの人の音楽を聴き、新しい憧れに出会う。
それも、発表会の大切な役割です。
♪5. 先生にとっても、教室を見つめ直す機会になる
発表会では、生徒の成長と同時に、講師自身の指導も表れます。
曲の選び方は、その生徒に合っていただろうか。
本番までの練習計画に無理はなかっただろうか。
生徒が苦しくなったとき、私はどのような言葉をかけただろうか。
発表会が終わるたびに、うまくいったことだけでなく、改善したい点も見えてきます。
だから発表会は、生徒の成果を確認する場所であると同時に、講師が自分のレッスンを振り返る場所でもあります。
一回一回の経験を重ねながら、教室の発表会も少しずつ変わっていきます。
♪6. 発表会のために生徒を育てるのではなく、生徒を育てるために発表会がある
私は、発表会のために生徒を厳しく仕上げることが目的ではないと思っています。
完璧な演奏を並べるために、生徒が音楽を嫌いになってしまったら、本来の意味を失ってしまいます。
発表会は、上手な生徒だけのためにあるものでもありません。
まだ始めたばかりの生徒にも、練習が得意ではない生徒にも、それぞれの舞台があります。
大切なのは、その生徒が今できることから少しだけ背伸びをして、一つの目標に向かうことです。
発表会のために生徒を育てるのではなく、生徒を育てるために発表会がある。
私は、そう考えています。
♪7. 教室の文化は、発表会に表れる
発表会には、その教室が大切にしているものが表れます。
どのような曲を選ぶのか。
ソロ演奏だけなのか、アンサンブルやバンド演奏も取り入れるのか。間違えずに弾くことを最優先にするのか、それとも生徒が「この曲を弾きたい」と思う気持ちを大切にするのか。
Dolce Of Music 音楽教室では、生徒の「弾きたい」という気持ちを出発点にしながら、ピアノやエレクトーンのソロ演奏だけでなく、アンサンブルやバンド演奏にも取り組んできました。
その形は、最初から完成していたわけではありません。
毎年、生徒たちの姿を見ながら考え、反省を重ね、少しずつ現在の形へと変わってきました。
このシリーズでは、曲選びから練習の進め方、バンド演奏、継続参加表彰、ゲスト演奏、写真や動画の残し方まで、実際の発表会づくりについてお伝えしていきます。
これから発表会を始めたい先生にも、今の発表会を少し変えてみたい先生にも、何か一つ参考になるものを届けられたらと思っています。
次回は、「先生が決めた曲」から「生徒が弾きたい曲」へと変わっていった、曲選びの考え方についてお話しします。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます♪

