ヤマハグレード試験の先にあるもの―音楽教育のリアルと理想 ― 第2話:昔と今のピアノ指導 ~音楽教室講師の私が見てきた変化と現代の音楽教室に必要なこと~
前回の記事の続きです。
前回は、なぜピアノやエレクトーンを長く続けられないケースが多いのかについて書きました。
今回は、昔と今の指導について書いてみます。
♪1. 昔のピアノ指導を振り返ってみる
昔のピアノ教育とは、どのようなものだったのでしょうか。
私自身の体験を振り返りながら、改めて考えてみました。
今とはまったく違う時代。
当時のピアノ教室の常識には、今では考えられないものも多くありました。
まず、ピアノを習う=アコースティックピアノを購入することが前提でした。
そして指導はとても厳しく、手の形や音の出し方など細かく指摘され、
テキストはクラシック一択というのが王道でした。
♪2. 厳しい指導にピアノが苦痛だと感じたことも
私がピアノを習い始めたのは小学4年生。
自分の意思ではなく、母に勧められて始めました。
最初の先生は、男性の声楽の先生でした。
正直に言うと、楽しいレッスンではありませんでした。
子どもながらに
「なぜこんなことを練習しないといけないのか」
と思いながら通っていた記憶があります。
今思えば、ちゃんと基礎練習の大切さを説明してくださっていれば、納得もできていたのではないかなと思います。
あくまで私自身の経験ですが、私が習った先生方は何の説明もしてくださらず、一方的に強要されていたように感じました。
だから ピアノを弾く楽しさを見出せず嫌いになっていました…。
レッスンは苦痛でしかなく、帰り道ではいつも「辞めたい」と思っていましたが、辞めさせてもらえませんでした。
最初に習った先生のレッスンはとにかく徹底的で、
・ドイツ語で音名を覚えさせられる(小学生の私に)
・毎回ハノンとスケール中心
・ソルフェージュ(視唱)
・曲は譜面チェックのみで表現力や運指や音の出し方の指導はなし
(譜読みができたら次の課題)
もちろん、先生自身が演奏してくれることもなく、「こう弾く」というイメージをもてないまま進んでいきました。
テキストの進むスピードだけはやたら速く、レッスンについていくために必死で譜読みをしていきました。
そのお陰なのか初見力はつきましたが…。
♪3. 音楽の楽しさよりも重視されていたこと
今思えば、「やり方は教えるが、音楽の楽しさは教えない指導」だったのかもしれません。
そしてもうひとつ大きかったのは、
「辞めたくても辞めにくい時代」だったこと。
今とは違い、習い事は簡単にやめるものではなかったように思います。
(他の家庭のことはわかりませんが)
その後、私が指導者になってから、多くの大人の生徒さん方と出会う中でよく聞く言葉があります。
「昔ピアノを習っていたんですが、先生が厳しくて楽しくなかったので続きませんでした」
特に50〜60代の方に多く、これは決して一部の話ではありません。
つまり、当時のピアノ教育は、
・厳しい指導
・古くからの固定された価値観
・「こうあるべき」という強い固定観念
この中で成り立っていたのだと思います。
そしてそれは、当時としては当たり前の教育だったのでしょう。
私自身も、自分の先生しか知らないので、それがすべてで、良いも悪いも自己判断できるような環境ではありませんでした。
♪4. 今のピアノ指導はどう変わったのか
では、今はどうでしょうか。
時代は大きく変わりました。
・電子ピアノが主流
・教材は多様化
・指導スタイルも自由化
そして何より、「楽しい」と思えるかどうかが最も重要な価値になりました。
厳しい昔のピアノ指導は今の時代には合っていません。
私自身、音楽教室を運営する中で強く思うのは、「ピアノって楽しい」と感じてもらうことがすべてのスタートだということ。
弾くことを楽しめないと、「ピアノを続けたい」と大人も子どもも思わないと思います。
また、生活スタイルも昔とは変わり、練習時間が多く取れなくて当たり前のようにも感じます。
それを考えず、とにかく毎日練習してくださいと強要するのは、時代錯誤ではないかと思います。
♪5. 私が思う、これからの音楽教室に必要なこと
もちろん、今でも昔ながらの王道指導をされている先生もいらっしゃいますし、それ自体を否定するつもりもありません。
ただ私は、ピアノ教室は「選ばれる時代」になったと感じています。
たとえば、
・コンクールを目指す教室
・クラシック中心の教室
・好きな曲を自由に楽しむ教室(先生がアレンジしてくれる)
・練習を強制しない教室
・低年齢化している教室
本来はそれぞれ明確に違うはずですが、現状はまだ「ピアノ教室」という大きな枠で括られているので、ソフトの部分が見えにくくなっているのが現実です。
だからこそこれからは、「どんな方針で教えているのか」をしっかり発信し、習う側が選べる環境を作ることが必要なのではないかと感じます。
それではこの続きはまた次回に。
最後まで読んでくださりありがとうございます♪

