【無料】「異常なし」なのに、なぜしんどい? 基準値に隠れた不調のはなし
健診の結果が「異常なし」
でも、あなたがしんどいのは、気のせいじゃないんですよね。
「検査、異常なしって言われたよ?」
「じゃあ健康なんじゃない?」
「でも毎日だるいし、しんどいんだけどな…」
こういうの、よく聞きます。
というか、私のところに来る女性は、ほぼ全員これなんですよね。
どうも。20年間、人間ドック専門医をやってきたのに、自分の胃のトラブルは見つけられなかった、医者の不養生を地で行くタイプのDr.りこですw
実は私自身、何度もいろんな施設で高額の人間ドックを受けてきたんですけど、「異常なし」で返され続けてきた側の人間なんですよ。
医者なのに、です。
ただ、これは受けた検査が雑だったとか、
先生がサボってたとか、そういう話じゃないんですよね。
健診の仕組みそのものに、「異常なし」でしんどい人が
こぼれ落ちる構造があるんです。
さて、今日はその「なぜ“異常なし”と言われるのか」を、
血液データが不調を隠す仕組みから、種明かししていきます。
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本題に入っていくんですけど、「異常なし」とは言うけども、
その「異常なし」が何を意味してるのか。
ここを解きほぐさないと、
ずっと同じ場所でぐるぐるすることになるんですよね。
これを、種明かし付きで話していきます。
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1. そもそも「基準値」って何を測ってるのか
まず、ここが出発点です。
基準値(基準範囲)というのは、たくさんの健康な人の検査値を集めて、
その真ん中の95%が収まる幅として決められています(CLSI EP28-A3c)。
「え、それだけ?」って思いますよね。
そう、それだけなんですよ。
ここから大事な話が2つ出てきます。
ひとつめ。
健康な人だけを集めて作っても、その両端の5%は、
定義上どうしても「範囲の外」に出ます。
健康なのに引っかかる人が、最初から一定数いるってこと。
ふたつめ。
これは「多くの人がこの辺に収まりますよ」という分布の幅であって、
「あなたにとって最適な値」を教えてくれるものじゃないんですよね。
基準値は「病気かどうか」を
ふるいにかけるための幅。
「元気に過ごせる値かどうか」を
見るための幅じゃない。
だから「基準値内=合格点」だと思うと、ズレるんです。
これは私見ですが、基準値内というのは、合格点をとったというより
「落第はしていない」くらいの意味だと私は思ってます。
赤点は取ってない。でも、絶好調ともまだ言えない。
その広いグレーゾーンに、「異常なし、でもしんどい」人が
丸ごと入ってるんですよね。

――――――――――――――――
2. 「異常なし、でもしんどい」を医療はどう扱うか
じゃあ、基準値内でしんどい人が病院に行くと、どうなるか。
多くの場合、「検査では異常ないですね」で終わります。
もう少し粘ると、
「疲れですかね」
「気持ちの問題かも」
「軽いうつかもしれませんね」
あたりに着地しやすい。
これ、先生が悪いわけじゃないんですよ。
保険診療というのは、「診断基準に当てはまるか否か」を
確認するための仕組みなんですよね。
症状を聞く
↓
検査する
↓
診断基準に当てはまれば診断名がつく
↓
当てはまらなければ「異常なし」
この流れだと、「栄養が足りているか」「その人にとって最適な状態か」
という視点は、そもそも入りにくいんです。
足りている前提で進むことが多いから、
足りていないことが原因の不調は「異常なし」で返ってくる。
そりゃ、気づかれにくいですよね。
私、人間ドックの診察を20年やってきて、
この「異常なしの壁」の手前でモヤモヤしてる人を、
嫌というほど見てきました。
そして私自身も、その壁の向こうに置いていかれた側でした。
ただ、勘違いしてほしくないのは、
「健診が無意味」とか「病院はダメ」とかいう話ではないってこと。
健診は病気の早期発見にはちゃんと働きます。
ここで言いたいのは、健診の得意分野と、
あなたのしんどさの原因を探すことは、
少し別の作業だ、というだけの話なんです。
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3. 隠れる仕組み① 打ち消し合って“正常”に見える
ここから、いよいよ種明かしです。
「異常なし」なのにしんどい。
その裏でよく起きているのが、データのマスキング。
つまり、数字が不調を隠してしまう現象です。
まず1個目。打ち消し合いです。
血液検査の数字って、ひとつの原因だけで動くわけじゃないんですよね。
片方が値を下げて、もう片方が値を上げると、
真ん中で“見かけ正常”に揃ってしまうことがある。
たとえばAST・ALTという肝臓の数字。
これは、ビタミンB6を補酵素にして働く酵素なんですよ
なので、ビタミンB6が足りないと、この数字は下がる方向に動きます。
一方で、脂肪肝みたいに肝細胞に負担があると、
同じ数字は上がる方向に動く。
(細胞が壊れると中の酵素が血液中に出てくるから)
この2つが1人の体の中で同時に起きていると、どうなるか。
下げる力と、上げる力。
両方あると、
ちょうど真ん中で“正常”に見える。
「え、じゃあ数字が正常なら、両方問題ないってことじゃないの?」
ってなりますよね。
そうじゃないんですよ。問題が2つあるのに、たまたま打ち消し合って、
見かけだけ正常になってる。
中では2つとも進行してる、ということが起こりうるんです。
ここは、はっきり分けておきますね。
AST・ALTがビタミンB6を補酵素にしている、
というのは確立した事実です。
ただ、「B6不足と脂肪肝がちょうど打ち消し合って、きれいに正常へ揃う」という読み方は、分子栄養学の見立てで、
一般診療で定説になっているわけではありません。
これは私見混じりの読み筋として聞いてくださいね。
だから、正常=何もない、とは限らない。
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4. 隠れる仕組み② 平均に化ける(MCVの罠)
2個目。
平均に化けるパターン。さっきの打ち消し合いの、貧血バージョンです。
MCVという、赤血球の大きさを表す数字があります。
基準はだいたい80〜100。
80より小さいと、鉄欠乏のサイン。
(赤血球の中身=ヘムがうまく作れない)
100より大きいと、ビタミンB12や葉酸の不足のサイン。
(細胞の成熟がうまくいかない)。
ここで、想像してみてください。
鉄も足りない。B12も足りない。両方ある人がいたとします。
鉄欠乏はMCVを小さくする。
B12不足はMCVを大きくする。
……はい、真ん中の90くらいに、きれいに着地します。
小さくする力と、大きくする力。
混ざると、ちょうど平均。
数字だけ見たら、まったくの正常。
これ、けっこう怖い話なんですよね。
鉄欠乏とB12不足って、どっちも女性に多いんですよ。
両方持ってる人は、MCVという1個の数字の上では
“健康な人”に化けてしまう。
「平均的な数字」は「平均的に健康」を意味しない。
むしろ、逆方向の問題が2つ隠れているサインのこともある、
ということです。

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5. 隠れる仕組み③ 炎症が数字をかさ上げする
3個目。炎症によるかさ上げです。
代表選手がフェリチン。
貯蔵鉄、つまり体の中に貯金してある鉄の量を表す数字、
として知られています。
ところがこのフェリチン、鉄の在庫を表すと同時に、
体のどこかに炎症があると上がってしまう
“急性期反応物質”でもあるんです。(WHO の鉄栄養指標の扱いより)。
つまり、こういうことが起きます。
本当は鉄の在庫が少ない。
でも、体のどこかにくすぶった炎症がある。
すると、炎症のせいでフェリチンだけがかさ上げされて、
「在庫は足りてますよ」という顔をしてしまう。
見分け方のヒントはあります。
血清鉄そのものは低いのに、フェリチンだけ妙に高い・正常。
このチグハグが出ていたら、
まず炎症でかさ上げされている可能性を疑う、という読み方です。
「炎症なんてあったっけ?」ってなりますよね。
自覚のない炎症って、けっこうあるんですよ。
数字が動くほどではない、でもゼロでもない、くすぶった炎症。
それがあると、鉄の“見かけの在庫”を水増ししてしまう。
隠れた炎症については別の記事で書きますね。
だから、フェリチンが正常だからといって、
鉄が足りているとは限らないんです。
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6. 隠れる仕組み④ 採血のちょっとしたイタズラ
4個目。これはちょっと毛色が違って、採血そのもののイタズラです。
溶血、って聞いたことありますか。採血のときに、赤血球が壊れてしまう現象です。細い血管でがんばって採ったときなんかに、わりと起こります。
赤血球が壊れると、その中身が血液の液体部分に漏れ出します。すると、カリウム・LDH・AST・血清鉄あたりが、実際より高い値に出てしまう。
つまり、体の状態は変わってないのに、
採血のコンディションだけで数字が動くことがある、ということ。
これ自体は「隠す」というより「にせの数字を作る」方なんですけど、
種明かしとしては大事なんですよね。
数字が1回おかしくても、それだけで一喜一憂しなくていい。
逆に、たまたま良く出ただけ、ということもある。
だから1回の検査結果の数字より、
いくつかの数字の“つじつま”で読む。
ここが、データを読むときのコツなんですよ。
こういうこと。
ここまでで、「なんで異常なしって言われるのか」の仕組みが、だいぶ見えてきたと思います。
もう少しだけ実用的な話に進む前に、ひとつだけ。
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これは、この“数字に化かされない体感で見る最初の一歩”
として作ってます。
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7. そもそも物差しが2本ある、という話
ここまで「隠れる仕組み」を4つ見てきました。
相殺・平均化・かさ上げ・採血のイタズラ。
でも、いちばん根っこにあるのは、これなんですよね。
物差しが、そもそも2本ある。
ひとつは、「病気かどうかを見つける物差し」。
これが健診の基準値です。赤点=病気を見逃さないための、幅広の物差し。
もうひとつは、「元気に過ごせているかを見る物差し」。
こっちは、もっと狭くて、もっと個人差がある。
これは私見ですが、私はこの2本を分けて考えるようになってから、
自分の体のことがやっと腑に落ちたんですよね。
わかりやすい例が、鉄です。
フェリチンは、多くの一般健診の項目に入っていません。
だから、そもそも測られていないことが多い。
ヘモグロビン(Hb)が正常だと、「貧血なし=鉄は足りてる」と
流されがちなんですよね。
でも、ここに研究があります。
貧血がない女性でも、フェリチンが50を切っていた人たちは、鉄をとることで疲労がはっきり軽くなった、という報告です
ひとつ、大事な但し書きを。
だからといって、鉄サプリを自己判断でガンガン飲むのは、
逆に危ないんですよ。
測らずに鉄を盛ると、鉄過剰やお腹の不調につながることがある。
だからこそ、まず測ってから。
しんどさが続くなら、血液検査を踏まえて医師に相談してほしいんです。
つまり、「Hb正常=貧血じゃない」は本当でも、
「Hb正常=鉄が満ちてる」は別の話。
貧血という病気の物差しでは正常でも、元気の物差しでは足りていない、
ということが起こるんですよ。
同じ数字を、どっちの物差しで見るか。
ここが、「異常なし」と「でもしんどい」の分かれ目なんですよね。
なお、ここで挙げた目安の値は、
分子栄養学でよく使われる“目安”であって、
標準治療においての診断基準の基準ではありません。
数字ひとつで自分を診断しないでほしいんです。
あくまで「こういう見方もあるのか」という地図として使ってください。
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8. じゃあ、私たちはどうすればいいのか
種明かしばっかりしても、しんどい人からすると
「で、どうせいっちゅうの」って話ですよね.。
方向としては、シンプルです。
・数字は1点でなく、つじつまで読む
・正常でも、逆方向の問題が隠れうると知っておく
・気になる項目(鉄・フェリチンなど)は、自分の値を持っておく
・そのうえで、しんどさが続くなら医師に相談する
大事なのは、「異常なし」と言われても、
あなたの感じてるしんどさは消えないってこと。
それは我慢が足りないからでも、気の持ちようでもないんですよね。
ただ、ここから先の「じゃあ具体的に何をどれだけ」という話は、
個人差がとても大きい領域です。
同じ数字でも、その人の背景で意味が変わる。
だからここは、地図ではなく、専門家と一緒に歩くところ。
無理に自己判断で盛らないでください。
これは、測りもせずにサプリを大量に飲んで、
腎臓を壊しかけた私からの、切実なお願いでもあります。
ということで、今日いちばん持ち帰ってほしいのは、これです。
血液検査の「異常なし」は、
「絶好調」の証明じゃない。
数字は、化けることがある。
自分の体の声のほうを、ちゃんと信じてあげてくださいね。
【ご注意】
この記事と公式LINEでお話ししているのは、
一般的な情報・教育のための話であって、特定の病気の診断や、
あなた個別の診療ではありません。
体調不良が続くときは、自己判断せずに医療機関を受診してくださいね。
さてさて、私は日々、こういう「検査では拾われない不調」と栄養の話を
発信してるんですが…
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これから、女性の不調と栄養の話も、ここから優先して届けていきます。
後から探すのは面倒なので、
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