マッサージで咳が緩和したポメラニアンの話
犬の咳が続いていると、苦しそうで見ているこちらまで胸が痛くなりますよね。
特に犬は高齢になるほど心臓や気管の衰えが重なり、咳が続いてしまう場合も少なくありません。
今回は咳がマッサージで緩和した、ポメラニアンの患者さんのお話をしていこうと思います。
今回使ったツボの位置や効果についてもお話していきますので、犬の咳でお悩みの方の参考になると嬉しいです。
🐶咳がひどかった16歳ポメラニアンのお話
今回の患者さんは16歳の男の子、ポメラニアン。
性格はとても臆病で、触られることが苦手。
誰かが体に手を近づけるだけで怒ってしまうタイプの子でした。
腰痛が酷く後ろ足が立たない
心臓病、腎臓病、気管虚脱があり、すでにたくさんの薬を飲んでいる
痛み止めを使いたいが副作用で他の病気が悪化することが心配
できれば薬を増やさずに治療したい
以上の理由から鍼灸治療を希望して相談にいらっしゃいました。
もちろん下半身のふらつきに対する治療はするつもりでしたが、私はこのポメラニアンが乾いた咳をし続けていることが気になりました。
飼い主さんによると、気管虚脱の影響で咳がひどく夜もあまり寝られていないとのこと。
胸や首の筋肉が固くなっており、触っただけで痛そうなのが感じられました。

💡鍼灸治療とマッサージで咳の治療も同時に行うことに
飼い主さんと相談の上、鍼灸治療で咳に対しても治療をしてみることにしました。
体を触ろうとしても怒ってしまうので、まずはリラックスを優先してお灸からスタート。
じんわり温まってくると、少しずつ警戒心がとけ、表情にも柔らかさが出てきました。
犬や猫など、動物はお灸が好きな子が多いです。
身体が温まり気持ちもほぐれた頃、中府というツボを中心に胸周りをゆっくりマッサージすると――
それまで止まらなかった咳がぴたっと止まったのです。
さらに、普段は触れられると怒るのに、そのまま安心したように目を閉じて眠ってしまいました。
飼い主さんも驚きと安堵の表情を浮かべていらっしゃいました。
🗓その後の経過
その後、家でも中府を中心にマッサージをしてもらうようにしました。
長年続いていた咳は3週間ほどでだいぶ落ち着き、興奮すると咳は出るものの、夜は眠れるようになりました。
以前は触ると怒っていたのに、今はマッサージを求めて自ら膝の上にやってくるようになったそうです。
もちろん、下半身の施術もして、現在は以前より真っ直ぐ歩けるようになりましたよ🐾
🧧中医学的にみる:どうして咳が続いてしまうのか?
中医学では、犬の咳は単純に気管の問題だけでなく、体全体のバランスが関わっていると考えます。
咳の要因は色々ありますが、特に今回のケースに当てはまっていたのは、以下のような状態です。
肺気虚(はいききょ)
肺気虚は高齢や慢性疾患により、肺の気が不足し、咳を止める力が弱くなった状態です。
腎虚(じんきょ)、腎肺同源
腎は生命力と関係します。
腎が弱っている状態を腎虚といいます。
さらに腎と肺は互いに支え合う関係です。
そのため、腎が弱れば肺も弱り、肺が弱れば腎も弱ります。
つまり今回の場合は腎が弱っているので肺も一緒に弱ってしまっているのです。
気逆(きぎゃく)
臆病で緊張しやすい性格の犬は、気が上に逆上しやすく(気逆)、咳や呼吸のしにくさとして現れやすいとされています。
このような肺気虚+腎虚+気逆 の重なりが、咳を慢性的に続けてしまう大きな理由になります。
🌬中医学的にみて中府のツボが効いた理由
中府は肺の経絡の最初のツボであり、肺の気の流れを整える入り口となる場所です。
肺気虚や気逆が起きていると、肺の気がスムーズに巡らず、咳や胸のつかえなどが現れやすくなります。
中府を温めて優しく刺激すると
肺の気を補い、咳を止める力を助ける
胸の気の巡り(気機)を整える
気逆を落ち着かせ、呼吸の流れをスムーズにする
首・肩・胸に広がるこわばりをゆるめる
といった効果が期待でき、今回のように 咳や胸の緊張、気逆 が重なった場合に、特に相性のよいツボです。
🔬科学的にみる:なぜ中府まわりの刺激で咳が落ち着くのか?
中府付近のマッサージには、現代医学的にも次のような理由があります。
咳が続くことで固まってしまった胸筋や前鋸筋など筋肉の緊張を緩める
胸部の軽い圧刺激により迷走神経が穏やかになり、呼吸が落ち着く
筋肉の緊張が取れることで“咳反射”が過敏になっていた状態が和らぐ
中府のマッサージは咳そのものの原因だけでなく、咳を助長する胸の緊張や神経の過敏さにも同時にアプローチできるとされています。
🐾📍中府の位置
中府(ちゅうふ)は、前脚の付け根のすぐ上あたりにあるツボです。
犬には鎖骨がないため、人間の位置とは少し違いますが、触ると分かりやすい 、ふわっとした筋肉の境目にあります。

🔍位置の探し方
前脚の付け根(脇の前の部分)に手を置く
そこから 少しだけ上前(頭側) へ指をすべらせる
肩の丸い筋肉と胸の筋肉の境目に、小さなくぼみのような場所 がある
その “胸の前の柔らかいへこみ” が中府の位置
👐触ったときの感触
骨ばっていない
ふわっとした筋肉の始まり
犬が嫌がらない程度の柔らかいポイント
🐕💬補足
厳密に、ここじゃないとダメ!ということはなく、ある程度場所が合っていれば、犬が“そこそこ”という反応を見せてくれるので、多少ズレても大丈夫です🐾
マッサージは頑張ろうとしなくても、優しい刺激で十分です🐶
✍まとめ
今回のポメラニアンのように、体の緊張や気の偏りが重なって咳が続くケースでは、優しいお灸やマッサージが大きな助けになることがあります。
中府は肺の働きを助け、胸のつかえや気逆をゆるめてくれるツボです。
高齢や持病がある犬でも、無理のない刺激で症状を緩和してあげられる場合もあります。
犬の咳にお悩みの方に、ひとつの選択肢として知っていただけたら嬉しいです。
