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10センチだけの空中散歩

「空を飛ぶ」じゃなくて、
たった10センチだけ浮く。
それ以上は怖いから飛ばない。
でも10センチ浮くと、今まで見えていた世界がほんの少し変わる。
水たまりを、足を濡らさずに越えられる。
小さな石を、ひょいっと越えられる。
草の先端と同じくらいの高さを、すーっと進める。
そしてある日、雨上がりの庭で10センチ浮いていたら……
「あれ?」
いつもなら気づかない高さに、
葉っぱの裏側に小さな水滴がぶら下がっている。
近づいて見ると、その水滴の中に庭が逆さまに映っている。

そして物語の最後は、空高く飛ぶことじゃなくて、
夕方になって地面にぽすっと戻って、
「今日も10センチしか飛べなかったなぁ」
って言いながら帰る。

……そんな物語、なんかいいなぁ。
大きな冒険じゃない。
世界を救うわけでもない。
ただ、10センチだけ世界から浮いてみる。
その10センチの違いから、今まで見えなかったものが見えてくる。


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