Vol.50 クライム・ヒート
🎬 映画詳細
『クライム・ヒート』/The Drop
公開年: 2014年
上映時間: 106分
監督: ミヒャエル・R・ロスカム
脚本: デニス・ルヘイン
原作: デニス・ルヘイン短編小説「Animal Rescue」
出演: トム・ハーディ、ノオミ・ラパス、ジェームズ・ガンドルフィーニ、マティアス・スーナールツ、ジョン・オーティス
ジャンル: 犯罪/ドラマ/スリラー
ブルックリンのバーで働く無口なバーテンダー、ボブ。実はその店は、地元マフィアが現金を一時的に預ける「ドロップ(集金場所)」として使われていた。ところが、ある夜そのバーが強盗に襲われ、大金が奪われてしまう。
さらにボブは、ゴミ箱から傷ついたピットブルを拾ったことをきっかけに、近所の女性ナディアと知り合う。しかし彼女には危険な過去があり、強盗事件とともにボブの日常も少しずつ崩れていく。
IMDb:7.0 / 10
Rotten Tomatoes:88%(Tomatometer)/76%(観客スコア)


🎬 Vol.50『クライム・ヒート』
私の評価:4.0 / 5.0 ⭐️⭐️⭐️⭐️
noteを始めて、ついに50記事達成。
数えてみると52記事なんですが、自己紹介と番外編は別として、50記事ということにしています(笑)。お盆休みにぎっくり腰になって、思いがけず時間ができたのが、noteを始めたほんとのきっかけ。
まさか、そこからまだ続いているとは(笑)。
映画のタイトルだけを並べてきたので、最近は自分でも「あの映画の感想、どこに書いたっけ?」となることが増えてきた(笑)。そこで、ここからはタイトルに番号を振っていこうと思う。これを機に、過去の記事も少しずつ見直して、「タスケンのおつかいの映画帳」を整理していきたい。
そんな50記事目に選んだのが『クライム・ヒート』。
以前、トム・ハーディ主演の『モブランド』の感想を書いたけれど、今回のトム・ハーディも、だいたい一緒です(笑)。
必要以上にしゃべらない。
この感じが、やっぱりトム・ハーディにはよく似合う。
今回のボブも、一見するとただの無口なバーテンダー。犬を拾って大事にしたり、女性にも優しかったりして、裏社会とは縁のなさそうな男に見える。でも、何となく「この男、普通じゃないな」という感じが最初からある。
マフィアの金が絡んでくるので、もっと複雑な犯罪劇なのかと思っていたけれど、実際にはそこまで込み入った話ではない。
むしろ、この映画の面白さは、ストーリーを複雑にすることではなく、静かに、そして不気味に、ボブという男を見せていくところにあると思う。
特に印象に残ったのが、最後のバーでの場面。
ほんの一瞬、数年前のボブに戻ったような、キレキレの残虐さを見せる。
「やっぱり、この人ただ者じゃなかったんだな」と思わせるには十分すぎる一瞬。
ところが、その直後にノオミ・ラパスを前にすると、また今のバーテンダーの顔に戻っている。
この切り替えがいい。
ずっと怖い男を演じるのではなく、必要な瞬間だけ本当の顔を見せて、また何事もなかったように戻る。ばれても動じない(笑)
しかも、普段は必要以上にしゃべらない。表情や雰囲気だけで「この男、何かある」と思わせる。
さらにボスマフィアと対面したときには、こちらから何かをアピールしているわけでもないのに、「こいつは使えるんじゃないか」と相手に思わせてしまう。
普通の男、危険な男、そして何を考えているのか分からない男。この3つを、派手な演技ではなく、表情と佇まいだけで行き来する。
ここが今回のトム・ハーディの一番良かったところ。
『モブランド』でも「必要以上にしゃべらない男」が印象に残ったけれど、今回はそこに人間味と、突然見せる凶暴性が加わっている。
単に強い男を演じているのではなく、何もしていない時間までかっこよく見える。
だから最後まで観ると、「やっぱりトム・ハーディ、かっこいいな」と思わされる。
そして、もう一人個人的に気になったのがノオミ・ラパス。
『ドラゴン・タトゥーの女』三部作に出ていた、あのモヒカン姿のリスベット。あの頃からずっと気になっている女優さんなので、今回も出演しているだけでちょっと嬉しい(笑)。
今回はリスベットのような強烈なキャラクターではないけれど、やっぱり目がいってしまう。
それから、この邦題も少し気になる。
『クライム・ヒート』と聞くと、もっと熱くて激しい犯罪映画を想像してしまう。しかも劇中に出てくる「チェチェン・マフィア」という、普段あまり聞き慣れない名前。
「なんかヤバそうだな……」と思ってしまう(笑)。
原題は『The Drop』。
映画を観終わってみると、むしろこちらをそのまま邦題にしたほうが、この映画の雰囲気には合っていたんじゃないかと思う。
派手な展開が続く映画ではない。込み入った犯罪劇でもない。
でも、静かで、不気味で、何か嫌な予感をずっと残してくる。
そして最後には、トム・ハーディの強烈な存在感が残る。
派手さはないけれど、静かに、不気味に、そして「やっぱりトム・ハーディはかっこいい」と思わせてくれる映画だった。
🎞️ 予告
🔎おまけ① 「The Drop」って何?

今回、邦題より原題のほうがしっくりくると思った理由がここ。
The Drop=「受け渡し」「預け場所」という意味。
この映画では、マフィアがバーを現金の一時的な受け渡し場所として利用している。つまり、タイトルそのものが物語の設定を表している。
『クライム・ヒート』という邦題より、『The Drop』のほうが確かに渋い。
🔎おまけ② 実はジェームズ・ガンドルフィーニの「最後の映画」

ボブの従兄で、バーの経営者マーヴを演じているのが、『ザ・ソプラノズ』で知られるジェームズ・ガンドルフィーニ。
そして、この『クライム・ヒート』は、彼の最後の映画出演作でもある。
ガンドルフィーニは、ただそこにいるだけでも「この人、昔は相当やってたんだろうな」と思わせるような、なかなかのキャラクター。
だからこそ面白い。
トム・ハーディのボブは、必要以上にしゃべらず、どこか頼りなさそうに見える。でも、その隣にガンドルフィーニがいることで、ボブの静かな存在感が逆に際立ってくる。
二人とも「何かありそうな男」なのに、表現の仕方がまったく違う。
マーヴの存在感があるからこそ、ボブの静けさが怖く見える。逆に、ボブが静かだからこそ、マーヴのキャラクターも際立つ。
どちらか一人だけでは、この空気感は成立しなかったんじゃないかと思う。
ちなみに、トム・ハーディ自身もガンドルフィーニとの共演について、彼の演技を見ているうちに「自分が演技するべきなのに、見入ってしまった」という趣旨のコメントをしている。
そう考えると、この二人が一緒にいるシーンは、かなり贅沢。
ガンドルフィーニの最後の映画ということを知ってから観ると、また少し違って見える作品だった。
🔎おまけ③ ノオミ・ラパスの「Broken Angel」


『クライム・ヒート』でノオミ・ラパスが演じるナディアについて調べていたら、ちょっと気になる言葉を見つけた。
それが、「Broken Angel(傷ついた天使)」。
ラパスによると、監督からナディアをそう表現されたそうだ。
これ、なんかいい言葉だなと思った。
ナディアは過去に傷を抱えている。でも、ただ弱くて傷ついた女性というわけではない。悪い環境から抜け出して、これから自分の人生を作り直そうとしている。
だから「Broken(傷ついた)」だけではなく、そこに「Angel(天使)」が付いているのが面白い。
『ドラゴン・タトゥーの女』のリスベットの印象が強いノオミ・ラパスだけど、今回はまったく違うタイプの女性を演じている。
リスベットが「傷ついたから戦う女性」なら、ナディアは「傷ついたから穏やかな人生を求める女性」。
「Broken Angel」――傷ついている。でも、まだ壊れきってはいない。
こういう言葉を知ってから観ると、ナディアの見え方が少し変わる。
映画を観終わってから調べてみると、こういう発見があるから面白い(笑)。
