『見た目』
収蔵記録 No.022
『見た目』
漂着地点:見間違い
著者:Bathydevius caudactylus
(読み:バシディヴィウス・カウダクティルス)
推定年代:2024年(新種記載)
保存状態:発光している。
深海には、光る生き物がいる。
そこは太陽の光が一切届かない世界。
昼も夜もなく、ただ暗闇だけが続いている。
その生き物は、透明な身体で海を漂う。
海底を這うことはほとんどない。
まるでクラゲのように、
静かに浮かんでいる。
小さな甲殻類が近づくと、
大きく開いた口で包み込み、
飲み込んだ。
危険が迫れば、青白く光る。
人は、その光に理由をつけた。
敵を驚かせるため。
身を守るため。
仲間へ何かを伝えるため。
どれも、
たぶん正しい。
深海では、
光の生きる理由がある。
長い間、人は彼をクラゲだと思っていた。
姿が似ていたから。
透明だったから。
海を漂っていたから。
それで十分だった。
やがて、
DNAが調べられた。
彼は、クラゲではなかった。
ウミウシだった。
見た目は当てにならない。
DNAも、
その生き物が今日どう生きるかまでは決めない。
彼はウミウシでありながら、
クラゲのように海を漂い、
深海という世界で、
自分だけの生き方を選んだ。
「人は私をクラゲと呼びたがった。
私は一度も、クラゲになろうとはしていない。」
館長メモ:私はヌーブラにしか見えなかった。
