サブスクの興奮、どこいったんだよ
サブスクで音楽を聴くようになってから10年くらいが経つ。apple musicが始まるその瞬間は、カウントダウンを当時apple musicがやっていたラジオを聴きながら待った。(ブライアン・イーノのmusic for airportsがずっと流れてた気がするんだけど、AIに聞いたらそんなの無いって言われた。本当なんです、聴いたんです)
これでこの世の音楽のほとんどが聴ける!!という興奮がありました。もちろんそれは傲慢だけども。
それから10年あまり、その興奮はすっかり冷めてしまい、サブスクは当たり前になった。それまで出来なかった聴取のデータ化が容易になった。音楽の聴取行動は「データ」となり、分析され、音楽業界はますます「再生される」ことに特化する音楽を作ることになった。
その証拠にJ-POPのイントロがクソ短くなったらしい。空気を吸う音から始まる曲が増えた気がする、「ハゥフ…ときぃ〜には〜」。
インスタントにいかに早い「クソデカ感情」らしきものを作り出せるかに特化されている。ショート動画とか見てまうもんな、HANAのあれこれとか見てまう。
かつてタワレコの試聴機に入り浸り、スタッフの目を気にしながら厳選した3枚を買うだけの日々や、大阪にあった幅広い音楽を取り揃えたレンタルショップ「K2レコード」で大量に借りてリッピングするだけの一日があったりした日々を思えば信じられない世界だ。
「だからサブスクはダメなんだ!」って言いそうな顔してたでしょ、もちろんそんなことが言いたい訳ではない。どう考えても今のいろんな音楽が気軽に聴ける世界の方が僕は好きだ。
でも!
自分の好きなものを追求し、それを持ってより楽しい人生を送りたい人にとっては、それだけが「音楽」となっていく世の中はどうしても意見したくなる。
「わざわざどこかに出向いて音楽を探そう」とか「分からんけど何回も聞いてみるか」みたいな、音楽にオルタナティブな価値を望む人たちは今でも、いやむしろ多様化した世界でもっと増えているんじゃないかと思う。変わったと勝手に感じるのは、いつでも年老いた人間(僕)だ。
ここで僕は思うわけです。年老いた人間は、オルタナティブな価値観を持つ人間が楽しめる場所を、自分たちが大事にしてきた価値観を利用して用意しておいた方が自分らのためにもなるんじゃないかと。
「BEATINK Listening Space - SILENCE IS GOLDEN」に行ってそんなことを思った。
前置きが異常に長くなりましたが、なんと!スゲェいい場所だったから紹介したいってだけの話です。

ビートインクは、1994年に設立された独立系音楽レーベル兼イベントプロデュース企業。
WarpやNinja Tune、4AD、Rough Trade、XL、Young、Matador、Domino、Luaka Bopとか思いつくかぎりの著名なインディペンデントレーベルとライセンス契約を結んでいます。
アーティストで言えばブライアン・イーノやエイフェクス・ツイン、サンダーキャット、トム・ミッシュとか。
ごめん、教えてほしんやけど、やっぱり流れてたよな?イーノのmusic for airport。
そんなビートインクが2025年6月6日から7月28日まで約2ヶ月間限定で大阪・南船場に展開している期間限定のPOP-UP SHOPが
「BEATINK Listening Space - SILENCE IS GOLDEN」



(画像はビートインクさんよりお預かりしました)
この場所の目玉はBWVによる最高音質のスピーカーシステムが設置されていることです。

説明としてはこう
国産ブランドBWV
映画館用の大型スピーカーシステムの設計・製造を手掛け日本全国に160スクリーンを超える納入実績がある株式会社イースタンサウンドファクトリー(以下ESF)。2023年4月に坂本龍一が監修し最高峰の音響設備を誇るプレミアムサウンドシアター、109 シネマズ・プレミアムが誕生し、その全てのスピーカーはESFによって設計されており、そのスピーカーが後にBWVブランドとなる。東京都現代美術館で行われた大規模な坂本龍一展や、大阪うめきたの文化装置VSにも設置されている。
まあ要するに「坂本龍一がめちゃくちゃ好きだった最高なスピーカー」ってことです。僕みたいな素人にはそれで十分魅力が伝わりました。
Animal collective / Sung tongs
Squarepusher / Ultravisitor
とかいくつか聴かせてもらったんですが(割とリクエストに応えてくれます)、ちゃんと本当に良い音でびっくりした。
音源のマスタリングの意図とかまで伝わってくるような音って感じでした。
昔よく聴いてた音源だから余計よくわかりました。
BWVのサイトによると
“BWVの理想はサウンドシステムがその存在を主張しないこと”
だそうです。わかる〜〜〜〜(気がする)
ちなみに、でっかいやつは高すぎて、目が潰れるかと思ったけど、小さい方は「買える」値段なので気にったら買ってもいいかもしれません。
黒い畳に座ってぼんやり、なんとなく、ぼんやり音楽を聴く時間が作れます。

で、なんで最初の方にタラタラと書いてたようなことを思ったかと言うと、考えてみれば「良い音で音楽を聴く」って、普通に生活してたらなかなか体験できないんですよね。クラブに行くか、バリ金持ちになってめっちゃこだわるか。でもここは期間限定とはいえ、気軽に最高な音響で音楽が聴ける機会で、まさに「わざわざどこかに出向いて音楽を探そう」的な体験ができる場所なんだと。
で、これがまさに30年以上、オルタナティブな価値観にこだわって考え続けてきたビートインクみたいな人たちができることなんだと。
年老いた人間は、オルタナティブな価値観を持つ人間が楽しめる場所を用意しておくべきだって最初に書いたけど、まさにこれがそれなんだと。ただ行って音楽を聴くだけでもいいし、気に入った音楽があれば買ってみてもいいし、いつかライブとかを見に行ってもいい。
大阪にこういう場所があることがとてもうれしい。「踊る」「歌う」「流す」以外の音楽の楽しみ方の選択肢が大阪にもっとあってくれ!あ、僕が作ればいいのか?やるか…いや大変だから、ずっとここにいてくれよ!なあ!!!
常にやっているわけではないので、オープン時間をチェックしてから行ってみてください!
