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日本一高いところでお尻を見られた話

もうとんでもなく昔の話になりますが、私が勤めていた会社では、毎年恒例の行事として毎年一回7月の末に富士登山をしていました。

今はもうそんな時代じゃないですが、当時はまだ会社の強制力が強かった時代で、しんどいことが大嫌いな自分はもう毎年鬱になりそうなくらい嫌々参加してました。年に一度のイヤイヤ期。

登山全体の流れとしては、まずは5合目で一泊し、翌早朝から一日かけて頂上を目指す。頂上の山小屋でまた一泊し、翌朝ご来光を見てから下山するというコース。3日がかりのイベントです。

富士登山と言えば過酷なイメージがありますが、実際はそうでもない。確かに日本一高い山なので疲れはしますが、登山道は整備されており、コースにもよりますが小学生でも登ることが出来ます。実際我々の登山メンバーの中には社員のお子さんで小学生もいました。ただ、危険なのは確かで、毎年のように落石などの事故が起こっていることも事実です。

あと、登山独自のマナーがいろいろあるのですが、その中で個人的に一番キツイのが「挨拶」でした。「は?挨拶?それくらいしてもいいだろ?」と思うでしょう?賢明なる読者の皆様がそう思うのも当然、私も最初はそう思っていました。

5合目から登りはじめ、最初の1時間くらいは元気がみなぎっているので「こんにちは!」とすれ違う人全員に挨拶できます。なんなら登山ジョークのひとつや2つくらいぶちかましてやろうかというくらい余裕がある。でも・・・そりゃアンタ、なんたって富士ですよ、FUJIYAMA。だんだん疲れてくると声を出すのもイヤになってくるのです。挨拶するだけで地味にHPを奪われていく。

6合目くらいになると頂上まで一望できるんですが、もうほぼ垂直にしか見えない。すでに疲れてるのに今からあそこまで登るのかと思うと絶望フルネス(マインドフルネスの逆状態)になってくるのです。

ヘトヘトになりながら登っていると、前から下山する人がやってくる。
(たのむ、挨拶して来ないでくれ・・・)
期待むなしく「こんにちは~」と笑顔で挨拶が。
「コ・コンチワッス・・・」
消え入りそうな声で返すのがやっと。

でも、頂上まで登り、ご来光を見ればそんな疲れなど全て帳消しになる。さらに一年間幸福に浸れるかのような幸せを感じることが出来ます。未だかつて、あれ以上に美しい景色など見たことはありませんし、きっとこれからもないでしょう。

なんせ、「写るんです」みたいなカメラで撮影しても「プロかよ!」みたいな写真が撮れてしまうのです。そりゃもう、大感動なのです。この無感動な私が言うのだから間違いない。

ただ、ロクなものが食べられない。溶岩の軽石だらけで、川がない山なので水に不自由する。そのせいで当時は缶ジュースや食事がべらぼうに高かった。今はどうなんでしょう?改善されてるのかな?



ここからやっと本題です。
都合3回登ったのですが、確か初年度のこと。

粗末で寒い、そして窮屈な山小屋には登山客がすし詰めになり、(夏しか営業できないから、おもいっきりすし詰めになる)タダでさえ薄い酸素は限界まで薄くなる。中には山小屋で買った携帯酸素ボンベを吸う人もいます。
ていうか、あれが無いと当時はとても耐えられなかったです。

そんな中、就寝時間(決められてるんだよ!)になり、皆が寝床(ジメジメした布団は最悪)につく。うちの会社では総勢23人が参加しましたが、高山病にならなかったのはたったの2人だけ。あとはもう地獄のような頭痛と吐き気で、私もその一人でした。ちなみに2回目からは耐性が出来たのか大丈夫でした。なんで?

寝たのはいいが、しばらくするとお腹が痛くなってきました。
私は暗闇の中、トイレを探します。ふと見ると明かりが。
見てみるとそれは山小屋のスタッフさんたちの部屋でした。
美味しそうな鍋らしきものを楽しく食べていらっしゃる。

(チッ・・・こっちは強制的に寝さされてるのに、自分たちだけ美味しそうなものを食べてるな。しかも部屋が広いから高山病もならないだろうし)
私の中の黒い部分が悪態をつきます。

いかんいかん、こんなことしてる場合じゃない。トイレは・・・あった!
当時のトイレは木造の、いわゆるボットン便所で、なんとドアには鍵がない!
よくある横にスライドさせる取っ手がついたタイプのやつで、外から見ても中で人が用を足してるかどうかがわからない。
しかも男女共用。だって1個しかないからね、
私はトイレでしゃがみ、苦しんでいました。すると人が近づいてくる気配がしました。

「ヤバい!」

しゃがんだ状態でドアは背中側にあり、無駄に広いせいで手を思いっきり伸ばしてギリギリドアに届くくらい。
そんな状態ででつかんだ取っ手に力が入るわけもなく、思いっきりドアを開けられてしまいました。

実際は背後にドアがあったのでちょっとシチュエーションは違いますが、まぁこんな感じです。
そして「キクッ!」じゃなくて「ギクッ!」ですw


幸か不幸か、そこにはかわいい女子が立っていました。

「★●×■◎!!」なんか変な叫び声をあげ、「すみません!」と言い、女子は走り去っていきました。

こっちがビックリだよ!



「お尻とか、いろんなものを見られました」

仕方がない。「入ってますか」くらい聞いてほしかったですが、まぁ、許します。でも

ドアは閉めてけよ!!


しゃがんだまま、変な動きでドアを閉め、偉大なるモニュメントを穴に落としたあと、私は隠れるかのようにコソコソと気配を消しながら布団にもどりました。

となりに寝てた同僚が
「なんか変な声したけど、どうした?」と聞いてきたので、「なんでもない。気のせいだろ」と答えて寝ました。



翌朝、皆であまりにも美しいご来光を見に行きました。

「うわぁ~!めっちゃ綺麗」

「感動!」

「雲があんなに下にある!!」



何気なく隣の人に「やっぱりご来光は綺麗ですね」と話しかけました。「そうですね!」振り向いた彼女の顔は見覚えがありました。

お互い、

「(゜Д゚i|!) 」


って感じになり、ササッと離れました。

同僚は、「なになに?あの子かわいくないか?お前知り合い?」と聞いてきました。

「いや・・・むしろ尻合いというか・・・」
「え?なんて?」
「いや、なんでもない。気のせいだよ。知らないよ。」
「なんだそうか、なんか知り合いみたいな反応に見えたから。」
「ご来光パワーでそう見えただけだよ」


とても素敵な、夏の経験。
今はもう、あのトイレにも鍵はついているのでしょうか?

#山であそぶ


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