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宿主 旅に出る 

忙しかった阿波踊り期間も終了し、その間宿の運営を手伝ってくれた奥さまを労う意味もあり、夫婦で四国の温泉を巡る旅に出ることにした。

最初に向かったのは、聖徳太子も訪れたという愛媛の道後温泉。
道後温泉本館に浸かって、地元の方が通うような居酒屋で地酒を楽しみたいと考えていたので駅前のシティホテルに泊まることに。

タッチパネルでのチェックイン、戸惑いながらも必要事項を入力するとルームキーならぬカードキーと必要事項が書かれたレシートのような紙が出てきた。紙に書かれた部屋番号を頼りにエレベーターに乗る。カードキーに部屋番号の記載はなし。部屋番号を覚えてないと後々ヤバイぞ〜、大丈夫か俺。

エレベーターに乗って宿泊階のボタンを押すが無反応。ああ、カードキーをタッチしなきゃダメなのね、はいはい。一旦慣れてしまえば、どうということもないし、何かと時短で便利なんだろうけど、一切無駄のない部屋の設えや窓も開かないこうしたシティホテルはやっぱり苦手だなと再認識。

道後温泉行きの路面電車を待つイボンヌ

ホテルをさっさと抜け出し、みかん色の路面電車に揺られて道後温泉へ向かう。大昔にも乗った覚えがあるのだが、今の電車は海外のトラムのようで、見た目もカッコイイ。こうしたこまめな移動手段があるのは、観光の街としてのポテンシャルを感じた。

信号で止まる電車、当たり前のことなんだけど、何だか不思議な気分。
ふと見ると両替機の前で外国人らしき人が困っている。どうやら1万円札の両替ができないようだ。声をかけると小銭が足りないのは50円と分かり、寄付してあげることに。いろいろ便利にはなっているけど、やっぱり無人のシステムに戸惑う海外観光客も、たくさんいるんだろうなと思った。

道後温泉本館へと向かう商店街を歩く。
右も左もお土産物屋に人が溢れている。20種類以上の生搾りみかんジュースを楽しめるお店や、みかんソフトやみかん大福など、やたらみかん推し。
思わずみかんソフトを買う、うんうまい、さすが柑橘王国だ。

みかんソフトを食べるイボンヌ

浮かれていたのも束の間、商店街を進むうちに何だか違和感が込み上げる。
りらっくまだの、すみっコぐらしだの、さまざまなキャラクターとのコラボ商品がいっぱい。きっと道後に限らず、今の日本の観光地はどこへ行っても商品が違うだけで、同じ風景なのかもなと少し悲しくなった。

道後温泉前に佇むイボンヌ

道後温泉本館に到着、何やら似つかわしくない花模様があちこちに。
コチラは、蜷川実花さんとのコラボらしい、何で???。

それにしても盆休みも過ぎたというのに本館前は凄い人出。あちこちで韓国語が飛び交っている。松山へはソウルや釜山からのLCCが飛んでおり、本館の佇まいが「千と千尋の神隠し」を思い起こさせると人気になったようだ。そういえば路面電車で困っていた方も韓国人だった・・・。

飛鳥乃湯泉へのアプローチ

本館はあまりに混雑していたので、飛鳥時代をテーマにした新館の道後温泉別館 飛鳥乃湯泉へ。こちらのアプローチにも蜷川実花ワールド。それにしても、情報量多過ぎやしませんかね・・・。

風呂上がりどこで地酒を楽しむか、いろいろ事前に調べてはいたけれど、やはり現地の人に聞くのが一番と、風呂の受付にいらしたお酒好きそうなおばさまに地元ピープルが通う店を聞き込み。

炉端屋「助格」の刺身盛り合わせ(鯛・かんぱち・イカ・さわら炙り)

教えてもらった炉端屋は、裏路地に一歩入ったいい感じのお店だった。炉端前のカウンターで、瀬戸内海の魚(愛媛は鯛推し)を当てに甘辛取り混ぜ地酒を3種類ほど楽しむ。久しぶりに酔っ払ったこともあって、ホテルに帰るとすぐに気絶してしまった(笑)。

朝ごはんを食べた食堂

翌日は散歩がてら、当たりをつけていた朝ごはん屋を目指す。松山市駅周辺は、城下町だけどビジネス街。大きなビルが立ち並ぶ。見た目はおしゃれな洋食屋のようだが、中を覗くとおばさんが一人で切り盛り。オープン時間前だったが、目が合うと笑顔で手招きしてくれた。

聞くと息子がやっていた洋食屋を受け継いで、今は和定食をメインにお袋の味を提供しているそう。なんなんだろうこのギャップ、けど悪くないぞ。
お母さんが焼いてくれた優しいだし巻き卵で、思わずご飯をおかわりした。

奥さんが頼んだカプチーノ

朝一にホテルの1階で買ったドトールのコーヒーがあまりに不味かったので
朝散歩を楽しみながら、美味しそうなコーヒー屋を探す。すると若い女性が一人で切り盛りする小さなカフェを発見。立派なエスプレッソマシンがあったので、ブレンドではなくカフェアメリカーノをホットで注文。こじんまりとしたスペースだけど、コーヒーもすごくおいしかったし、器や店の設えも彼女のこだわりを感じて、思わず嬉しくなった。

2日目は、祖谷温泉を目指して車を走らせる。
高速を降りるとそこはもう山の中、切り立った渓谷沿いの道を進んでいく。
普段見ている海の景色と違って、圧倒的な緑に囲まれてのドライブ。思わずテンションがあがっていく。

祖谷渓谷 川の透明感がハンパない

泊まったのは、ケーブルカーで行く天空露天風呂が自慢の温泉宿。
チェックインするや否や、浴衣に着替えて天空へ。
定員10名の小さなケーブルカーが急な斜面を登っていく。わずか2分ほどで露天風呂に到着、茅葺き屋根のシンプルな脱衣所の向こうに岩風呂が見える。ラッキーなことにお客様は1人だけ、声をかけるとオランダからこられた観光客の方だった。

新祖谷温泉・ホテルかずら橋 天空露天風呂(写真は観光案内から拝借)

「最高ですね」「うん最高やね」(イボンヌ訳・笑)
日本での旅の様子や、ワールドカップでの互いの国の健闘など、切り立つ山々を眺めながら、拙い英語での会話を楽しみながら、リラックス。
宿泊客のうち半分は外国人、こんな山の中にまで、インバウンドの波が押し寄せているようだ。

囲炉裏で焼いた鮎の塩焼き

風呂から上がり、囲炉裏がある夕食会場へ。
鮎の刺身や塩焼きなど、山の幸をいただきながら、またまた美味しい地酒に舌鼓。食事中、女将が挨拶に訪れ、地元の民謡を披露してくれた。少しでも自分の力でお客様を楽しませたい、そんな人の温もりが伝わる接客に同じ宿を営む者として、感じ入るものがあった。

かずら橋

翌朝は、祖谷のかずら橋へ。
私は怖くて渡れなかったが(高所恐怖症・笑)、奥様は大満足。確かにここは絶景だ。美しい景色に息を呑む大勢の外国人の姿。首からカメラをぶら下げ、観光バスに乗り込む姿は、かつての日本人海外旅行を思い起こさせた。

いつもはお客様を迎える側だが、旅に出ると当たり前だが迎えられる側となる。いざお客様の立場になってみると、旅する人の気持ちや、観光地また宿のおもてなしなど、いろいろと考えさせられる旅になった。

低迷する日本経済の中で、一筋の光が差し込むインバウンド需要。
観光客を呼び込むことに躍起で、何とか気を引こうとあの手この手で過剰な仕掛け作りに走るのはわかるけど、実際訪れてくれた人たちの気持ちにどう寄り添うのかをもっと大切に考える必要があるなと思った。

過剰な仕掛けは確かに目は引くけれど、彼らが本当に見たいのは、元々ある日本らしい景色や風土・文化。また、それをしっかり伝えてくれる人とのリアルな出会いなのではないだろうか・・・。

大切なのは、やはり人のチカラ。
便利で効率的であることも大切だけど、旅を終えて思い出すのは、触れ合った人のあたたかさや思いやり。

私も宿主として、そうした一員でありたいと思った。


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大人の一人旅を満たす。
ここには、あなたを包むゆったりとした時間と空気を、邪魔する者はいません。忙しい日々の中で纏ってしまった心の鎧をぜひ下ろしにきてください。おしゃべり好きな宿主が、みなさんのお越しをお待ちしております。


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