リオ五輪・山口香さん名語録 ~NHK・デイリーハイライトより~/2016リオ五輪観戦コラムVol. 6
ついに迎えたリオ五輪編・ファイナル。ラストを飾るのは「リオ五輪・山口香さん名語録」だ。
「女三四郎」の異名をいだき、日本女子柔道のパイオニアである山口さん。
当時は「女子柔道といえば山口香」という、まさに唯一無二の存在だった。
その彼女が、NHK・デイリーハイライトで残した名言の数々は、柔道のみならずスポーツ全体への、そして出場したアスリートたちへの敬意と熱き想いにあふれる、観る者に深い感銘を与えるものだった。
連日のハイライトで彼女が口にした言葉の中から、特に我が印象に強く残ったものを選んでお伝えする。
リオ五輪編クライマックス、しかとご覧あれ!
リオ五輪ではライブで観れるものはなるべく観て、真夜中の競技は留守録をして仕事前の早朝に観た。これに加え、毎日欠かさず観ていたのがNHKのデイリーハイライト(以下DH)だ。
これは主に18:10~18:45と19:30~20:50の2部構成で、その日の注目競技を日本人選手を中心にダイジェストでまとめたものだ。大会が終わった今は、このDHすべてが1枚のディスクに収まり、「リオ五輪スペシャルディスク」として我がDVDラックに座っている。
この番組は2人のNHKアナウンサーが司会を務め、毎回元アスリートをゲストに迎えて、その日の競技についてコメントしていただくという形で進む。さすがNHK、迎えたゲストは錚々たる方々だ。
藤本隆宏さん(俳優、ソウル・バルセロナ五輪競泳男子個人メドレー出場:NHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」に海軍中佐・広瀬武夫役で出演/広瀬武夫は日露戦争の英雄であり、彼を偲ぶ銅像が建てられ、歌も作られた)
岩崎恭子さん(バルセロナ五輪競泳女子200m平泳ぎ金メダリスト:当時の「14歳の金メダリスト」の衝撃はすごかった)
塚原直也さん(アテネ五輪体操男子団体金メダリスト:日本に28年ぶりの体操男子団体金をもたらした立役者の1人)
山本博さん(アテネ五輪アーチェリー男子個人銀メダリスト:41歳にして五輪銀メダリストとなり、「中年の星」と称えられた)
朝原宣治さん(北京五輪陸上男子400mリレー銅メダリスト:日本陸上初の短距離種目でのメダルをもたらした、頼れるアンカー)
有森裕子さん(バルセロナ五輪(銀)・アトランタ五輪(銅)陸上女子マラソンメダリスト:アトランタでの「初めて自分で自分をほめたい」は日本中の感動を呼んだ)
潮田玲子さん(北京・ロンドン五輪バドミントン女子ダブルス出場:小椋久美子さんとのペアで「オグ・シオ」の愛称で親しまれた、「才色兼備」アスリート)
青木愛さん(北京五輪シンクロナイズドスイミング出場)
このすばらしいゲストたちの的確かつ熱いコメントは、番組に彩りを添えてくれた。
※ 岩崎恭子さんは30代になってもあの可愛らしさを失わず、潮田玲子さんは「オグ・シオ」のころの輝きを保ったまま。そして青木愛さん、こんなそのへんのタレントそっちのけのチャーミングな方が、シンクロチームにいたとは知らなかった。こういう”Athlete Beauty”の存在は、スポーツ観戦の大いなる楽しみの1つだ。
(あの正統派スポーツ専門誌・Numberも、「美女アスリート特集」をけっこうマジにやるからな)
とりわけ、この錚々たるゲストの中でも抜群の存在感を示し、的を射たコメントと軽妙なジョークで観る者をうならせ、笑わせてくれたのが山口香さんだった。山口さんは現役時代、「女三四郎」の異名で呼ばれた日本女子柔道のパイオニア、偉大なる先達であり、まだ公開競技だったころのソウル五輪柔道女子52キロ級銅メダリストでもある。当時は女子柔道といえば真っ先に「山口香」の名が思い浮かぶ、唯一無二の存在だった。
山口さんはこの番組中さまざまな名言を語ってくれたが、これを単に録画して聞くだけではもったいないと思い、特に私が感銘を受け、面白いと思ったコメントをここにまとめた。
◎「いつも競泳チームを見てて思うのは、異常に仲がいいんですよ。同じ種目なのにどうしてこんなに仲良くできるのかなって。やっぱりロープがあるから(コースが分けられているから)ですかね」
(大会初日のDHにて:これに岩崎恭子さんや藤本隆宏さんが笑いながら「そういう面もあると思います」「一緒に戦わなくて済みますからね」と答えた)
◎「(準決勝の敗退から3位決定戦まで間がなく)涙が乾かぬうちに出てきたという状態で、よく切り替えたと思います」
(大会2日目のDHにて:柔道女子48キロ級で銅メダルを獲得した近藤亜美選手について)
◎「何より私がうれしいのは、チームのために頑張ろうと思った、次の日につなげたいと(いう言葉です)。柔道は個人戦なんですけど、7日間の団体戦なんですよね。1人が気を抜いて負けてしまうと、それはチームとして負けてしまうので」
(同:柔道男子60キロ級で銅メダルを獲得した高藤直寿選手の、試合後のインタビューでのコメントについて)
◎「彼にとっては、相手と戦っているというよりも、自分の完成された技をどうパフォーマンスするかということに注力していたような気がします。こんな柔道ができるのなら、こんなに気持ちよく投げれるんだったら、自分ももう1回やってみたいと思わせる試合でした」
(大会3日目のDHにて:柔道男子73キロ級で2大会ぶりの日本男子金メダルを獲得した大野将平選手について)
◎「一口に10年って言いますけど、本当に長くて、孤独で、苦しい戦いだったと思うんですよ。でもそれが実を結んだ時、あの涙に、日本中の人がもらい泣きしたと思います」
(大会5日目のDHにて:カヌースラローム・男子カナディアンシングルで、日本初の銅メダルを獲得した羽根田卓也選手について。羽根田選手は高校卒業後、カヌーの強豪国であるスロバキアで武者修行。その10年余の努力が実ってのメダルだった)
◎「サッカーの『マイアミの奇跡』、ブラジルに勝った時以来の興奮でした」
(同:7人制ラグビー男子、初戦でニュージーランドを破り、15人制に続く「ジャイアントキリング」を成し遂げた試合について)
◎「柔道競技最後のこの試合が、男女14階級を通じて1番最低の試合でした」
(大会8日目のDHにて:柔道男子100キロ超級決勝、ほとんど組むことのなかったリネール・原沢戦について)
◎「毎日メダルラッシュで、もうお腹いっぱいで、感動の余地が残ってないと思ってたんですけど、まだまだありましたね」
(大会15日目のDHにて:番組冒頭のコメント。この日は陸上男子400mリレーで銀、シンクロナイズドスイミング・チームで銅メダルを獲得)
◎「私は心の底から、柔道でよかったと思いました」
(同:シンクロナイズドスイミング・チームが銅メダルを獲得/練習が1日12時間にも及ぶという話を聞いて)
◎「田知本選手はジュニアの時代から期待されていたんですが、ここまでは期待に沿えない試合が続いていた。でも今回は厳しい組み合わせの中を、技を出し続けて期待に応えてくれた。私、人は変われないと思っていたんですが、田知本選手を見て変われると思いました。やる気になればできるんだと」
(同:今回の五輪で印象に残っているシーンに、柔道女子70キロ級で金メダルを獲得した田知本遙選手を挙げて)
◎「運動会でも、リレーって花形じゃないですか。この会場の盛り上がりの中で日本人が銀メダルって、本当に誇らしいですね」
(同:陸上男子400mリレーで銀メダルを獲得した日本チームについて)
◎「開いてくれた道がだんだん広くなっていくんですよ。狭いと少ししか通れませんけど、広くなるとたくさんの人が通れるようになりますから、(若い人が)どんどん出てきます。『私もいける』って、先が見えるようになってくるんですよ」
(同:ダブルスで金、シングルスで銅を獲得したバドミントン女子について)
含蓄があり、かつウィットに富む。山口さんの名コメントの数々は、私の心に深く響き、染み入った。しかもそのコメントの1つ1つには、柔道、ひいてはスポーツ全体への深い愛情と、アスリートたちへの熱き想いがひしひしと感じられ、それが観る者の感銘をさらに深めるのだ。
日本女子柔道の偉大なるパイオニア、そして今なお輝きを放ち続ける「女三四郎」に、大あっぱれ!!!
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次回からは、オリンピックと併せて開催されてきた障碍者スポーツの祭典・パラリンピックについて、2回にわたってお伝えする。
それまでは個々の選手だけに注目していたパラリンピックだったが、リオでは初めて大会をほぼトータルで観た。
そこから私が感じ、味わったものをじっくりと語らせていただく。
これまでの五輪シリーズとは趣向が変わるが、こちらもなかなか興味深く、面白くお読みいただけると思う。
「私が観て感じたパラリンピック」、ぜひご一読いただきたい。
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