髪は過去を記憶する
昔から「髪には念がこもる」とか「悪い気が溜まりやすい」という話を聞くことがあります。
美容師として長年お客様の髪に触れ続けていると、それは単なるおまじないやスピリチュアルな噂話だけではない、確かな「手ざわり」として感じられる瞬間があります。
髪は、体の中で最も「その人の過ごした時間」がそのまま残る場所です。
楽しかった日の日差しも、忙しくて眠れなかった夜のストレスも、誰にも言えずに溜め込んだため息も。
日々の感情や体調の波は、気づかないうちに一本一本の毛髪に記憶されていきます。
お店のドアを開けて入っていらっしゃるお客様の中には、どこか肩のあたりに目に見えない「重み」を纏っている方がいます。
「別に何があったわけじゃないんだけどね」と笑いながら鏡の前に座るお客様。けれど、ハサミを入れる前に指先で髪をすくい上げると、物理的な太さや量とは違う、手に絡みつくような「重さ」を感じることがあるのです。
言葉にはならない迷いや、捨てきれない未練、日常の小さな疲れ。
人は無意識のうちに、それらを髪の毛に溜め込んでしまっているのかもしれません。
そしてハサミを持った私の仕事は、その「溜まってしまった時間」と向き合うことから始まります。「綺麗になあれ」と願いを込めて手当てし、整えていきます。
もちろん、お店でのケアだけでなく、ご自身でできる日々の習慣も髪に大きな違いをもたらします。
自分を大切にする心は、そのまま髪へと伝わるもの。バランスの取れた栄養は豊かな髪をつくり、心地よいヘッドケアやリラックスできる時間は、髪と心を解きほぐしてくれます。質の高い睡眠は夜の修繕を促し、適度な運動は血流を良くしてくれます。
そして指先、足先、頭先。これら身体の「末端」を整えることは、心身の巡りを良くするためにとても大切です。
特に頭のてっぺんにある「百会(ひゃくえ)」というツボをケアしてあげることは、とてもおすすめですよ。
百会は「百(多様な)病が交わる(会う)」という意味を持ち、自律神経を整えたり、疲れや不安感を和らげたりするのに役立つと言われています。
【百会の見つけ方】
* 左右: 両耳の一番高い場所を結んだ線
* 前後: 眉間の中央から頭頂部へまっすぐ伸ばした線
この2つの線が交差する、頭のいちばん高い場所(少し凹んでいるように感じられる部分)です。
【セルフケアのポイント】
両手の中指を重ねてツボにあて、頭の中心に向かって心地よい強さでゆっくり押してみてください。息を吐きながら3〜5秒かけて押し、吸いながら力を抜く。これを数回繰り返すだけで、頭の緊張がふっと和らいでいきます。
もっとたくさん伝えたいことがありますが、今日はこれまでにしますね。
