見出し画像

「“普通であってほしい”」が苦しくなるとき——担任の一言が、親子を救った理由

「どうしてうちの子だけ……」

頭ではわかっているのに、胸が締め付けられる。
登下校する子どもたち、運動会、クラスの輪。目に入る“当たり前”が増えるほど、親の不安も増えていく。

今回紹介するのは、with class(講談社)に掲載された、児童精神科医さわ氏の著書からの抜粋・再編集記事です。[1] (with class- 講談社公式 - | 家族の時間をもっと楽しく)
テーマは、子どもが「集団になじめない」「泣いてしまう」「学校に行けない」といった困りごとに直面したとき、親が抱える比較・不安・罪悪感をどう扱うか。そして、“診断の有無”よりも周囲の理解と環境づくりが、子どもの安心と成長に直結するという実体験です。[1] (with class- 講談社公式 - | 家族の時間をもっと楽しく)


1. 事例(事実のみ):伝えた瞬間に、関わり方が変わった

記事内で描かれる事実はこうです。

ここまでが、記事に書かれている事実です。脚色はしていません。


2. 何が効いたのか:担任の返答を“支援技術”として分解する

このエピソードが強いのは、「いい先生に出会えました」という運の話に終わらないからです。
担任の返答には、再現可能な“支援の型”が含まれています。

(1) 親の自己開示を「歓迎」した

親が恐る恐る伝えた瞬間に、「そんなことないですよ」で終わると、親はもう相談できなくなる。
担任は“共有してくれてよかった”という方向へ会話を着地させ、連携の扉を開きました。[2] (with class- 講談社公式 - | 家族の時間をもっと楽しく)

(2) 「評価」ではなく「方針」を返した

ポイントは、原因探しや診断の話より先に、**今後の関わり方(寄り添う・意識して関わる)**を明確にしたことです。[2] (with class- 講談社公式 - | 家族の時間をもっと楽しく)
人は予測可能性が上がると安心します。支援はまず安心を作る。

(3) 「ふつう」への矯正をしなかった

担任は「ふつう」に当てはめず「この子のペース」を尊重した、と記事は述べます。[2] (with class- 講談社公式 - | 家族の時間をもっと楽しく)
ここがいちばん重要で、同時に誤解されやすい点でもあります。
“甘やかし”ではなく、その子の安全と成長の速度に合わせて環境を整えるという支援です。

※この考え方は、国の不登校支援の整理とも重なります。後半の「補足①」で根拠を示します。[6][8] (文部科学省)


3. 親が学校・園に伝えるべき「最小単位」は、診断名ではない

記事の核心は、「診断があってもなくても大切なのは、周囲の温かい目と環境づくり」という点です。[1][2] (with class- 講談社公式 - | 家族の時間をもっと楽しく)

実務に落とすなら、伝える内容はこれで十分です。

困りごとの3点セット(場面 × 反応 × 効く関わり)

  1. 場面:いつ/どこで/何が起きると

  2. 反応:泣く・固まる・腹痛・怒り・過緊張など

  3. 効く関わり:予告、選択肢を絞る、席配置、休憩、別室、役割調整 など

担任の言葉を借りれば、「親から伝えてもらえると、こちらも意識を持って関われる」という状態を作れるからです(記事本文)。[2] (with class- 講談社公式 - | 家族の時間をもっと楽しく)


4. 声かけの原則:「万能感」を壊さずに育てる

with class記事の3ページ目は、「万能感(健全な自尊心の土台)」を壊さない関わりを扱います。[3] (with class- 講談社公式 - | 家族の時間をもっと楽しく)
記事は、否定や比較の言葉が繰り返されると劣等感が大きくなり、挑戦意欲を失うことがある、と述べます。[3] (with class- 講談社公式 - | 家族の時間をもっと楽しく)
そして、結果よりプロセス、失敗より「できた部分」に目を向けよう、と提案しています。[3] (with class- 講談社公式 - | 家族の時間をもっと楽しく)

ここは経験談に見えて、研究の補助線も引けます。
たとえばMueller & Dweck(1998)は、能力そのものを褒めるより努力・過程への称賛の方が、学習への動機づけに望ましい影響を持ちうることを報告しています。[10] (PubMed)

家庭での言い換え例(今日からできます):

  • ❌「なんでできないの?」(否定・比較)

  • ⭕「今日はここまでできたね」「昨日より1ミリ進んだね」(プロセス・前進)


5. 今日から使える:先生に伝える短いテンプレ(連絡帳・面談用)

長文にすると、先生は動きづらい。
“行動に変わる情報”に圧縮します。

(コピペ可)

  • ①気になっている困りごと:
     「集団場面で不安が強く、泣いてしまうことがあります」

  • ②起きやすい場面:
     「朝の登園直後/切り替え(整列・移動)/大きな音の場面」

  • ③落ち着く関わり:
     「事前予告/選択肢を2つに絞る/少し離れてクールダウン」

  • ④お願いしたい方針:
     「“ふつうに合わせる”より、本人のペースを尊重した関わりをご相談したいです」


6. 家庭内KPIを「登校」からいったん外す(business視点)

支援を継続するには指標が要ります。
ただし「行けた/行けない」をKPIにすると、親子ともに消耗しやすい。

おすすめは、回復の土台になりやすい指標です。

  • 睡眠(入眠・起床の安定)

  • 食事/入浴(生活の維持)

  • 家族と雑談できた回数(関係の安全)

  • 「できたこと」3つ(前進の可視化)

※不登校児童生徒について把握された事実として、「生活リズムの不調」「不安・抑うつ」などの相談が一定割合で報告されています(後述の補足②参照)。[4] (文部科学省)


補足(エビデンス):記事メモの“弱いところ”を補強する

ここからは、with classの事例を一般化しすぎないための補助線です。
事例は事例として尊重し、制度・統計・レビュー研究で「言い方の精度」を上げます。


補足①:「登校だけをゴールにしない」は国の整理

文科省の通知では、不登校支援は「個々の状況に応じた支援策を策定すること」「関係機関との情報共有が支援の効果につながること」など、組織的・計画的な支援が重視されています。[6] (文部科学省)

また、2019年の通知は、過去通知の整理(出席扱い等の誤解が生じないように)を行い、法や基本指針の理解を深めた上で支援することを求めています。[7] (文部科学省)

さらに2023年の通知は、不登校対策(COCOLOプラン等)や校内教育支援センター、SC/SSW活用などの支援強化の方向性を示しています。[8] (文部科学省)

→ つまり、with class事例にある「ふつうに当てはめず、本人のペースで見守る」「周囲が理解して環境を整える」という支援は、現場の好意だけではなく、国の整理とも矛盾しません。[2][6] (with class- 講談社公式 - | 家族の時間をもっと楽しく)


補足②:最新統計——いま“不登校は珍しいことではない”

文科省の「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等…調査結果の概要」では、小・中学校の不登校児童生徒数が353,970人(小137,704人/中216,266人)として示されています。[4] (文部科学省)

また、不登校児童生徒について把握した事実(小・中)として、
「学校生活に対してやる気が出ない等の相談(30.1%)」に続き、
「生活リズムの不調(25.0%)」
「不安・抑うつの相談(24.3%)」
が挙げられています。[4] (文部科学省)

→ 「根性で行かせる/行かせない」といった二択ではなく、心理・生活・環境の複合要因を前提に支援設計する必要があります。


補足③:研究——“無理強い”は断定せず、見立てと設計へ

with class記事は、かつての“無理に登校させる”常識について、二次的な不調のリスクが語られる、と述べています。[1] (with class- 講談社公式 - | 家族の時間をもっと楽しく)
ただし、記事単体では研究の提示が厚いわけではないため、ここは断定を避けた言い方が安全です。

海外では、学校に行けない状態は school refusal などの枠組みで研究が蓄積され、系統的レビューでパターンや構造が整理されています(多要因で捉える前提)。[9] (Springer Nature Link)

→ だからこそ実務では、

  1. 安全と休養(心身の危険サインを見逃さない)

  2. 生活の土台(睡眠・食事・活動)

  3. 学校との連携(3点セットで環境調整)

  4. 必要に応じて専門機関
    の順で“設計”していくのが、エビデンスとも矛盾しにくい落とし所です。[4][6][9] (文部科学省)


おわりに:この話は「診断」より「関係」と「環境」の話

今回の事例が教えてくれるのは、診断名の正しさ競争ではなく、

  • 親が“怖いまま”でも伝えたこと

  • 先生が“意識して関われる”状態になったこと

  • 子どもが「この子のペース」で安心を取り戻したこと

この連鎖です。[2] (with class- 講談社公式 - | 家族の時間をもっと楽しく)

もしあなたが今、「伝えるのが怖い」「比較して苦しい」と感じているなら、まずはテンプレの“3点セット”だけで十分です。完璧な説明より、支援が始まる一歩の方が価値があります。

(※医療的な判断や強い不安・抑うつ、自傷のサインがある場合は、学校のSC、医療機関、地域の相談窓口など専門家につなげてください。)


引用・参考(本文脚注対応)


リンク一覧:
[1] https://withonline.jp/with-class/education/topics-parenting/CmkOJ
[2] https://withonline.jp/with-class/education/topics-parenting/CmkOJ?page=2
[3] https://withonline.jp/with-class/education/topics-parenting/CmkOJ?page=3
[4] https://www.mext.go.jp/content/20260116-mxt_jidou02-100002753_2_2.pdf
[6] https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1375981.htm
[7] https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422155.htm
[8] https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422155_00001.htm
[9] https://link.springer.com/article/10.1007/s12144-024-05742-x
[10] https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9686450/


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集