
【街のリアル】虎ノ門100人カイギvol.1
「だいたい街の100人と会えれば、その街の全体がなんとなく見えてくる。」
それは、統計や行政のレポートには載らない「街のリアル」を知る方法。
実際、たったひとりとの出会いが、街の印象をがらりと変えることってありますよね。
虎ノ門100人カイギでは、毎月そんな「街の解像度」を上げてくれる5人が登壇します。
人と出会って、街を知るということ
虎ノ門100人カイギ vol.1 では、今この時代に「自分のことば」で語れる5人の方々が、それぞれのストーリーを語っていただきました。
皆さんの仕事・活動を通じて大切にしている考え方、またその奥にある「こんな想いを大事にしているよ」という熱い想いとともになにか新しい発見・刺激・繋がりが生まれるはず。
そんなことを求めている人々に向けて、ここからは、当日ご登壇してくださった5人のストーリーを、私なりに紹介してみたいと思います。
■ 登壇者① 西田 千尋さん
プロフィール
縄文アソシエイツ コンサルタント
防衛大学校人文社会学部卒業。
隊員・家族の福利厚生に係る制度設計、航空自衛隊初の託児施設の開設、人事・総務業務に従事。80名のマネジメント経験を有す。
二等空佐で退官。WomanInPublicSection、官民連携ラボ主宰として越境の場を創出。
良き意図のリーダーと理念ある組織との触媒となるべく、縄文アソシエイツに参画。

印象的だった言葉や、感じたこと
まるで“現代の楊端和”
── そう表現したくなるような、説得力と存在感を放っていたのが西田千尋さん。
自衛隊出身というバックグラウンドを持ちながら、決して硬派一辺倒ではなく、語りの端々には「人間らしさ」があふれていました。
お話していただいたなかで印象的だったのは、若きリーダーとして抱える葛藤と、それに向き合う姿勢でした。
大人数を率いた指揮官としての経験の中で、彼女が選び続けてきたのは、「厳しさよりも優しさを与えること」。そこに、強い覚悟と優しさがにじんでいました。
そして「仕事の目的と人としての尊厳、その両方を守るバランス」でした。
メンバーの身上把握は役職階層。でも心情の把握は、網の目のような人間関係の中でシェアしていくしかない。そのように語る彼女の言葉からは、階級社会の中で人を人として見ることの難しさと、それでも諦めずに向き合い続ける意志が伝わってきました。
印象的だったのは、「人の可能性は“自分を信じる”ことから始まる」と断言したその一言。
「なんでも言ってくれれば、バシッと私は言う。」
その言葉に込められていたのは、リーダーシップ を「強さ」ではなく「やさしさ」と「きびしさ」で定義しようとする、西田さんの哲学でした。
■ 登壇者➁ 小野寺 学さん
プロフィール
グー・チョキ・パートナーズ(株) 代表取締役 / 新橋経済新聞 編集長 / Come on 虎ノ門製作委員会 / 虎ノ門一丁目琴平町会 副会長
大手広告代理店、デザイン事務所を経て、港区虎ノ門にてUR都市機構とコミュニティ施設「新虎小屋」を企画・運営。地方連携施策「東京チャグチャグ馬コ」東京馬主プロジェクトでは、グッドデザイン賞受賞。
コミュニティ団体「Comeon虎ノ門製作委員会」発足・運営。ご当地キャラクター「カモ虎課長」の製作・企画運営。
2023年4月港区観光大使に任命。 虎ノ門一丁目琴平町、櫻川町会合同イベント「PINPOINTBOSAI」企画運営。メディア関連活動として、全国放送のラジオ日経「カモン虎ノ門ラジオショー」(2014-2017)のメインMC、企画、製作。

印象的だった言葉や、感じたこと
会場を終始笑いにさらっていたのは、小野寺学さん。
軽妙なトークとツッコミどころ満載のスライド、そして「心のパンツを脱ごう」なんてメッセージまで飛び出すユーモアに、会場はくすくす、時には爆笑の渦に包まれていました。けれどその語り口の奥には、まちを誰よりも真剣に見つめる視点がありました。
虎ノ門ヒルズが立つ前から虎ノ門で活動を続けてきた小野寺さん。
UR都市機構と連携した「新虎小屋」の立ち上げ、町内会との地域清掃活動、ご当地キャラ「カモ虎課長」、ピンポイント防災、アップサイクルのコーヒー屋。そして地元のお祭りの手伝いまで
── その活動範囲は、まさに“なんでも屋”とも言えるほど幅広く、けれどどれも共通しているのは、「自分が楽しめること」を起点にしていること。
「まちづくりって、肩ひじ張ってやるもんじゃない。くだらないことを本気でやる。その延長線に、ちょっとだけ違う景色が見えてくる。」
そう語る小野寺さんの姿は、真面目な人ほど救われるような“余白のあり方”そのものでした。
「真面目なことをおもしろおかしく。ときにちょっとアホになって、ちょっと怒られる。」
そのスタンスこそが、都市の隙間に風を通す、企画屋としての小野寺さんの粋な生き方なのだと思います。
■ 登壇者③ 西川 朋子さん
プロフィール
文部科学省「トビタテ!留学JAPAN」
広報・マーケティングチームリーダー ※個人として登壇
1999年上智大学法学部卒業。出版社勤務、会社経営を経て、トレンダーズ(株)でPRプランナー、(株)ココナラの広報などを務める。
2014年から文部科学省「トビタテ!留学JAPAN」広報・マーケティングチームリーダーとなり、現在に至る。
2018年、(一社)ヨコグシ設立。文部科学省 広報戦略アドバイザーほか、各種行政機関より広報関連業務を受託。

印象的だった言葉や、感じたこと
西川朋子さんの語りから感じたのは、「選び続ける人生」の姿でした。
学級委員や生徒会に立候補していた学生時代、アフリカ難民や南京大虐殺に衝撃を受け、「自由や人権が守られる世界に貢献したい」と思った10代。
その思いは留学や外交官志望へと向かい、やがて出版社、起業、ベンチャー企業広報、そして文部科学省と、立場を越えて展開していく。
“気になる何か”に正直でいる姿勢を持つ彼女は、
今は動物福祉にも活動を広げ、畜産やアニマルウェルフェアの課題に向き合う日々を送っている。
肩書きは一つでは語れないし、夢はいつでも更新されていく。
“まだ定まっていない”ことを引け目にするのではなく、むしろそこに踏み出し続ける勇気を肯定してくれる。
── そんな西川さんの語りは、生き方を確定しきれない私たちにとって、確かな光のようでした。
■ 登壇者④ 幸田 仁さん
プロフィール
一般財団法人 日本不動産研究所 / 不動産鑑定士
平成7年(1995年)に入所後、神戸、山口、札幌での勤務のほか、コンサルティング業務、不動産テックの活用に関する検討、執筆、講演などを行う。不動産や地域と人々との関係性の視点から、豊かな暮らしや良好なコミュニティが不動産の価値として認知される仕組みについて研究中。歴史的建築物(レトロ・モダン建築)を活用した地方創生の仕組み作りについて模索中。北海道札幌市出身。

印象的だった言葉や、感じたこと
「土地に根付いた人が“住民”だとすれば、自分は“よそ者”かもしれません」。
そう前置きしながらオルデガの引用とともに語られたのは、まちをただの場所ではなく、歴史の記憶が沈殿した「場」として捉える視線でした。
焼け野原となった東京。地方に残る歴史的建築物や浮世絵。
野田市の興風会館、キッコーマンの労働争議。
そこにあるのは、単なる物質ではなく、かつて生きた人々の思いの集積であるとおっしゃっていました。
だからといって、すべてを「保存すべき文化」として残すのか。それとも、感性を研ぎ澄ましながら「新しいアート」として再構築していくのか。
幸田さんが提示したのは、「残すか壊すか」という二択ではない。「街をどう守るか」ではなく、「街をどう継いでいくか」。
都市とは、静かに積み重ねられた時間と、今を生きる感性が交差する場所なのだろう。
街を語るそのまなざしは、終始まっすぐで、どこまでも誠実でした。
なにより、プレゼンで、語られるひとつひとつに力があり、そして何より、深いところで人への優しさがありました。
■ 登壇者⑤ 中嶋 愛さん
プロフィール
虎ノ門ヒルズ Glass Rock プログラムディレクター / 同志社大学 客員教授
新聞記者としてキャリアをスタートし、スタンフォード大学院で国際政治経済を学んだ後、出版の世界へ。ビジネス雑誌や書籍、Webの編集を経て、2021年に『スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー 日本版』の立ち上げに編集長として参画。
現在は、虎ノ門ヒルズにできた共創プラットフォーム「Glass Rock」でプログラムディレクターを務めつつ、京都の大学で教えたり、人間観をテーマにした研究会をひらいたり。肩書きはいろいろですが、根っこはずっと「編集者」。人やアイデアが出会って化学反応を起こす瞬間が好きです。
最近、自分の役割は微生物のようなものだなと思うことがあります。人やモノ、コトのあいだに情報や栄養をめぐらせながら土壌を耕していく。そんなエコシステムエディターとしてこれからも動いていきたい。

印象的だった言葉や、感じたこと
自らを「エコシステムエディター」と呼んでいました。
人と人、モノとコトのあいだに情報や栄養をめぐらせ、土壌のように場を耕していく
── そのメタファーにぴったりの、柔らかくも深い語りであった。
新聞記者、編集者、研究者──肩書きはいくつもあるけれど、彼女がずっと向き合ってきたのは、「断片をつなぎ、文脈を生み出す」こと。
編集とは、異なるものを翻訳し、統合し、新たな可能性へとつなぐ営み。
目次をつくるのが好き、という言葉には、人や空間を「構造化」する感性がにじんでいました。
語りの中に登場していたのは、外山滋比古や松岡正剛、みうらじゅんさん。
ふわふわしていて、でも哲学的。けれど芯はしっかりと通っている。
編集の思想を遊びと実践のなかで捉え直すような、その軽やかさと思想の深さが印象的でした。
今回のイベントで感じた「街の手触り」

港区100人カイギ解散の様子と虎ノ門100人カイギを開催するにあたってのご挨拶
当日の会場には、95人を超える参加者が集まりました。
東京の各地で活動する人、郊外から訪れた人、はじめてこの場所に足を運んだ人。
さまざまな立場や背景を持つ人たちが、それぞれの関心と問いを抱えて、この場に集まっていました。

語られる言葉のひとつひとつが、押しつけがましくないのに自然と耳に入ってきて、それが集積されていく感覚。
誰かの語りに重なる自分の経験や、まだ名前のついていない感覚に触れる時間。
そのひとつひとつが、「人を知ることは街を知ること。そして、自分を見つめ直すこと」と気づかせてくれるようでした。
街の全体像ではなく、手触りのある「断片」にふれる夜。
その断片たちが、これからの虎ノ門に、そして私たち一人ひとりの街の見え方に、小さな変化を残していくように感じさせる虎ノ門100人カイギvol.1でした。

●グラレコ
たった10分で多彩なゲスト陣から濃厚なお話をお聞きできることは100人カイギならではと思います。グラレコを見て、こんなお話が印象深かった。とぜひ感想をつぶやいてください。そのつぶやきが、また新たな出会いをうみ出します!

小菅 奈穂子
コミューン株式会社 カスタマーマーケティング部
●ライティング
虎ノ門100人カイギ キュレーター 大澤 光
虎ノ門100人カイギ vol.2
7月16日(水) に開催いたします!ただいまPeatixにてチケット発売中です
100人カイギとは
2016年に港区で、街で働く100人を起点に人と人とをゆるやかにつなぎ、都市のあり方や価値の再発見を目的とするコミュニティとしてはじまりました。2025年現在では国内外130+の地域にて開催されてます。
「100人カイギ」のルールは簡単。
・毎回、身近で面白い活動をしている5名のゲストの話を聞く
・ゲストが累計で100名に達したら解散する
WEBサイト
虎ノ門100人カイギ
主催
一般社団法人ITNO THE FABRIC
協力
Glass Rock ~Social Action Community~
Glass Rockは、森ビル株式会社が虎ノ門ヒルズにて企画運営する、クロスセクターの連携と共創により社会課題の解決に取り組む会員制拠点です。少子高齢化、気候変動、貧困・格差など、近年複雑化し特定の領域のみでは解決が難しい社会課題解決のために、企業、行政機関、NPO・NGO、個人などの連携と共創を促進します。 施設ではコミュニティ運営の専門家が支える「つながる」場、実践的な学びや対話を生み出す「まなぶ」仕掛け、そして社会に対して課題や活動を「ひろげる」発信機能を有します。これらの「場」と「仕掛け」を通じて「社会課題解決」に向けたイノベーションの創出と持続可能な社会の実現に貢献します。
「虎ノ門100人カイギ」を運営するITNO THE FABRICは、Glass Rockの共創パートナーとして選定されており、本イベントは協働企画として実施しております。