音あれば楽あり(10)
小学校4年生からエレクトーンをやっていたせいか、色んなジャンルの音楽を片っ端から演奏していた。グレードが上がっていくに従って、リズムも複雑になり、ベースラインも高度なものになっていく。コードは「テンションコード」と呼ばれるものも増えてきて、よりハーモニーが芳醇になっていった(maj7とかm7♭5とかdimとか)。そんな大人びた曲はやはり、ジャズやボサノバが多かった。そんな中でも僕に衝撃を与えたのがアントニオ・カルロス・ジョビンの曲だった。
その昔、札幌の狸小路4丁目にエイトビルというのがあって、そこはYAMAHA(日本楽器)が1階〜2階を占めていた。今はアルシュと呼ばれるある種(笑)のビルで、1階はドンキホーテが占めている。エイトビルだったその頃は1階がレコードコーナーとLM楽器で、2階はピアノ、エレクトーン、管弦楽器コーナー、スタジオなどだったと記憶している。僕が小6の頃の話だ。1階のレコード店は試聴コーナーがあった。僕はジャズ・ボサノバのコーナーから冒頭画像のレコードを見つけ出し、試聴させてもらった。
ヘッドフォンから流れる音は驚きだった。何という広がり、フルートの透明な響き、リムショットの残響、バックの演奏、僕はすでにとりこになっていた。1曲しか聴かなかったが即買いだった。僕のお年玉は瞬く間にレコードに代わっていた。しかもこれは生涯で一番針を落とした回数が多いレコードだと思う。
このアルバムは「ボサノバ・パーフェクト・コレクション」というVerveレコードのものだが、まさにパーフェクトだ。僕が試聴したのはC面の『おいしい水』だったが、A面のスタン・ゲッツ、B面のアストラッド・ジルベルト、C面はジョビン楽団、途中からのジョアン・ジルベルト、D面のワルター・ワンダレイなどは当時のボサノバ界を代表するアーティスト達であった(当時はあまり意識してなかったが)。僕が大人になってからは、それぞれのCDを集めては聴き惚れていた。特にスタン・ゲッツはかの村上春樹も好みのプレイヤーだったし、あの柔らかいテナーの音色はなかなか出せないのではないかと思ったり、アストラッド・ジルベルト、ワルター・ワンダレイもそれぞれ、ほとんどのアルバムを入手した。それほどボサノバというジャンルは僕の音楽シーンのかなりの割合(19%くらいかな?)を占めている。

