心に響いた本の紹介📕『松本隆 言葉の教室』
◆題名 : 松本隆 言葉の教室
◆著者 : 延江 浩
◆概要
何気なく聞き流してきた懐かしい歌の歌詞に込められた作詞家松本隆さんの思い、その感性の描写について綴られた一冊。
◆心に響いたポイント、感想
「テクニックに頼った瞬間、言葉は浅くなるんです。
…中略…
それって『暗黙の了解』にはなるかもしれませんけど、人の心を動かすことはできないでしょ。
それと同じで、
『これだけ押さえておけば大丈夫』
『この言葉を入れればOK』
こういう定型やテクニックは、ぼくからいちばん遠いところにあります」
松本さんは、言葉を自由自在に操れる技術を持ちながらも、常に0から作詞に向き合っている。
私は、歌手やアイドルが歌う歌の歌詞は、万人ウケするようにポイントを押さえ、ファストファッションのように量産されていると長年思っていた。
しかし、この本と出会ったことで私の固定観念は覆された。
松本隆さんは、幼い頃から好奇心旺盛だったようだ。漫画や小説など様々な本を読み、様々な映画や音楽にも親しみ、海外の色々な場所を訪れた経験もあるそうだ。また、待ち合わせなどの少しの時間にも目の前を行き交う人や街の情景を描写したりもしていたらしい。
それらの経験が作詞にも影響を与えていると言う。
「赤い夕陽がそっと落ちて、空が赤から紫に変わっていくグラデーション。それを綺麗と思えるか。ふた通りの人間がいる。立ち止まって美しいなとじっと見る人と、何も感じないで通り過ぎちゃう人。
そこで綺麗だなってなるのが詞です」
アウトプットする人というのは、ジャンルを問わずに大量のインプットをしているし、気にも留めないような日常のワンシーンさえも取りこぼすことなく心に刻んでいるのだと感じた。
留まることのない好奇心があり、美しいものを美しいと感じる素直な感性があり、それを丁寧に描写する才能があり、それら全てが繋がって多くの人の潜在意識に訴えかける詞になっている。
知らない歌の歌詞もあったけれど、CMで使われていた『風を集めて』や、私が小学生の頃に流行った『硝子の少年』など馴染みのある歌詞についても触れられていた。
この本に出会い松本隆さんの作詞に対する思いや、作詞の過程に触れたことで、今まで何気なく聞き流していた印象に残る心地のよい歌詞は、こうやって心を込めて丁寧に描写され、試行錯誤しながら磨き上げられたものなのだと気付かされた。
この本を読みながら改めて味わうと、それら一つ一つの詞は紛れもないアートだと思えた。
人の心を動かす詞は定型やテクニックでは決して作れない。
これは何も、作詞だけに限らず、日頃のコミュニケーションや人間関係を築く上でも当てはまるのではないか。「こうすれば間違いない」なんていうテンプレートはなく、一つ一つの出会った事柄や人に対していつも新しい気持ちで丁寧に関わる姿勢が大切なんだなと思う。
歌詞や文章を書くことに限らず、自分の人生を一日一日丁寧に噛み締めて、心に刻みながら生きていきたいと思えた一冊だった。
