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ネモフィラ

6月の吐く息は渦を巻かなかった。白く濁るよりは青々とした息だった。

雨が落ちる速さは速い。雨粒はほとんど繋がっている。雨音で起きたのに、珈琲を濃いめに淹れる朝も、クララズのアメリカンを聞いてアメリカンを頼む人は苦手だと偏見を押し付ける午後も、もうなくなってしまった。
だから、キラキラした貝殻たちで散らかしたい。けれど魚にも海にも猫にもなりたくない。
時々息を潜めながら海になってしまうが、海になったって、あげられる物はせいぜい冷凍庫に入れっぱなしのアイスクリームくらいだ。だから歩いている。浜辺に落ちているガラスで足先を切ったって多分痛くはないから、歩いている。襟を立てて、「愛嬌は自分より強いものを倒す柔らかい武器」を信じてみたりして歩いている。言っていいこと、いけないことも分からなくなってきたから歩いている。
死んでしまおうとして上手くできなかったことなんて知らないふりをして、星が見えなくて泣いたり笑ったりしながら、人にはそれぞれ事情があるなんて知らないふりをして、時々困った顔をして海になりながら襟を立てて歩く。

私は聡明で強くて可愛いから、たぶん、平仮名で話すあの子より。だって、平仮名を漢字で表す勇敢さを持ち合わせているから。言葉が固い人たちと過ごしているうちに、だんだんと理屈っぽさと固い言葉を身につけるようになってゆく。それだけだけど、あぁ薄明かりの公園が好きです。小指だけを結んでみたりして誰にも聞こえないような声でお話ししようか。

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