「その悪の秘密結社は騒がない」:天音町の奇妙な冒険
「なんだと! この町には、スタンド使いがいるじゃないか!」
男は全力で路地裏へ飛び込んだ。
天音町博物館で展示品「古代の弓矢」を盗もうとした男である。
「くそっ……どいつもこいつも!」
壁を殴りつけようとした、その時だった。
___「今日は騒がしいね」
静かな声が聞こえた。
路地裏のベンチには、一人の男が座っていた。
古い映写機を静かに手入れしていた。
___「記憶を呼び戻せ」
『Extraordinary(非日常)』Action(アクション)!

「そんなものはない。お引き取り願おう」
不思議雑誌「月刊ウー」の三下編集長が 天音町地域復興・コンサルタント新構造真(しんこうぞう しん)の事務所を訪れた。
「嘘を付かないで下さい!天音町には、世界征服を企てる悪の秘密結社があるとの噂を読者から情報を得ました!」
助手の三枝絵里(さえぐさ えり)が首をかしげる。
「先生。ゲルシャーク団のことではないでしょうか」
「あぁ……あれのことか」真は思い出したように呟いた。
「やはりご存じでしたか!」
「三枝君。案内してやってくれ」
「はい。今からですと、【悪の秘密結社ゲルシャーク団】午後の部の見学ツアーには間に合うと思います」
三下編集長は目を丸くした。
「見学ツアー?」
「午前・午後の二部制です。人気がありますので。急ぎましょう」
三枝と三下編集長は天音町の郊外にある「悪の秘密結社ゲルシャーク団」のアジトに向かっていた。
入口には巨大なサメの看板。
黒い鉄扉。不気味なサイレン。
__入り口では、老人会と幼稚園の団体ツアー客で賑わっていた。「トイレが全部ウォシュレットになったよ」「段差も無くなってバリアの演出も嬉しいねぇ」「怪人カッコイイ!!」と声が聞こえる

中へ入ると、全身黒タイツ姿の団員たちが礼儀正しく一礼した。
三下編集長は額から汗を滲ませ「三枝さん…私は無事帰ることができるのでしょうか」と不安げに尋ねる。
「17:00迄には終わりますよー。電車の心配ですか?」
『悪の秘密結社ゲルシャーク団 本日の活動予定』
・13:00 世界征服の活動説明会
・13:30 ゲルシャーク団新人研修体験
・14:00 怪人たちと遊ぼう(小学生以下保護者同伴)
・15:00 ゴスぺル
時間になると、サングラスで全身黒服を纏った総帥と名乗る人物が、踊りながら登場し、スクリーンの前で「今期の世界征服活動報告」の説明を始めた。
「いい子にしてたかー!」
「お元気ですかー」
三下編集長は震えながら三枝に聞く。
「こ、これは町ぐるみで洗脳されているのですか……?」
「え?何言ってるんですか?」
「皆様、『世界征服には信用第一』がモットーであります。それでは、今期の天音町侵略計画の活動実績ですが‥地域の皆様に愛されて20年。黒字経営を維持しております」

ゴスペル公演料の収益
過疎地域への物資配送事業
天音町運動会、盆踊り、餅つき大会主催
通学路の交通整理、全身黒タイツの緑のおじさん
地域パトロール巡回 高齢者住宅の屋根補修及び電球交換
___総帥は説明が終わると観客に笑顔で手を振っていた。
「……悪の秘密結社ですよね?」
「だと思いますよ。本人たちがそう言ってるので」
◆13:30:ゲルシャーク団新人研修見学

そこには横須賀革ジャンを身にまとった強面のリーゼントのツッパリが、全身黒タイツの団員を並べて教育指導を行っていた。
「笑顔が足りねぇ!」
「挨拶は腹から声を出せ!」
「あっ!ツッパリさん!先日はお世話になりました!この前お会いした時より、お顔が大きくなってません?」
「おぅ!エリちゃんか!久しぶり!今日はリーゼントをビビッとキメてきたぜ!」__リーゼントが風も無いのに揺れていた。
「あの・・こちらの方は」三下編集長が恐る恐る声を掛ける。
「ゲルシャーク団の教育主任の方で、ツッパリさんです。子ども達に大人気のヒーローなんですよ!資料ご覧になります?」

「えっ、ヒーローって何ですか・・・?」
「今日は新人が入って来たのでビシバシ教育するぜ!」
「おう!新入り!」
「ヘイ!アニキ!よろしくお願いします!」初心者マークを付けた、全身黒タイツの男が右手を挙げて返事をした。
「バカヤロー、俺たちはプロだ! ”アニキ”でなく『パイセン(先輩)』って呼べや! 第1班は駅の花壇の水やり、新入りは俺と一緒に路地のゴミを拾いに行くぞ!」
「さすがパイセン!俺達にできないことをやってのけるッ!!そこにシビレる!憧れるッ!」
「返事はイ――!しか許さねぇ!」
「イ―――ッ!!」
三下編集長「……悪の秘密結社ですよね?」
三枝「ええ。本人たちがそう言ってますし」
◆14:00 怪人たちと遊ぼう(小学生以下保護者同伴)
「ここでは、ゲルシャーク団の怪人の皆さんと、ビンゴゲーム。だるまさんが転んだ、金魚すくい、輪投げができるんです。記念撮影やサインも可能です」
「はぁ…そうなんですか」
「子供達には蜘蛛男さん、イカデビルさんが人気で、蜂女さんもファンが多いですね」
◆15:00~ ゴスぺル
「いや・・もう、その。最後のゴスぺル(福音音楽)って…何ですか?」
「これが、大人気なんです。ゲルシャーク団の皆さん100名が「Hail Holy Queen」「トゥナイト(Tonight)」を歌います。まるでウーピー・ゴールドバーグ率いるシスター達の「天使にラブソングを」を観てるようなんですよ!」
「えっ?」
「さらに踊りや演劇もあって、宝塚歌劇団並みの迫力です」
野外ステージに大迫力のフルバンドのセットが組まれていた。幼稚園児が一斉に野外ステージの前に駆け寄ってくる。ハッピ姿の若い男女もゾロゾロと集まってきた。
オープニングで蜘蛛男が魂のサックスを吹き鳴らし、蜂女がピアノの鍵盤を激しく叩く。
「蜘蛛男カッコイイ!!」
「蜂女さーん!愛してるよー!」
「戦闘員No.56さん、こっち向いて―」
ステージに総帥が登場し舞台挨拶を行う
「みんな来てくれてありがとうォーー!」
「最高にグレートな気分だぜェーッ!」
総帥は、アコーディオンを弾く少女の隣で、ノリノリでステップを踏みながらソウルフルな歌声を響かせる
「ハレル~~~ヤ!」(全員合唱)
三枝「私は小さい頃は、総帥さんのファンでウチワ持ってました」
「みんなーいくぜー! 」
「”平和な世界・争いのない世界に”ハレル~~ヤ!」
三下編集長「あっ!言っちゃったよ!そこは隠してよ!」
三枝「ハレ~ル~ヤ!」

「どうでしたか。満足しましたか」
事務所に戻って来た三下編集長に真は尋ねた。
三枝「とっても楽しかったですよね」
三下編集長「新構造先生。ゲルシャーク団は善人ですか悪人なんですか?」
真は少し考えてから答えた。
「百人いれば、百人の正義がある」
「ある者にとっての革命は、別の者にとっては反逆だ」
「ある者にとっての救済は、別の者にとっては支配だ」
三下編集長が尋ねる。
「では、悪とは何ですか」
真は即答した。
「悪とは言葉ではない、思想でも、力でもない」
「ましてや、人そのものでもない」
「悪とは、行動のみで判断される」
「人を傷つけ、奪い、欺き、踏みにじるなら悪だ」
「毎朝交通整理をし、税金を納め、町を守り、子どもを助け、困った人に手を差し伸べるなら、その行動は善だ」
三下編集長は苦笑した
「口では世界征服、行動は地域貢献。信頼も厚い。どうやら天音町ではそれを『悪の秘密結社』と呼ぶらしい!」
真の鋭い眼光が走った
「彼らは天音町を愛する秩序維持者であり、地域住民の安心を担保する”非公式のガーディアンだ。この存在を敵対視することは、町との敵対を意味するが…」
三下編集長は慌てて訂正した
「そんな、めっそうもない。地域の文化や歴史は尊重しますよ。記事にすることはありません。本当に奇妙な町です。それに…」
「もう、ゲルシャーク団『世界征服バスツアー』申し込んでしまいました」
三枝「ちなみに年間パスポートもありますよ」
事務所に笑い声が響いた。
──翌日

新構造真は天音町にある古い映画館「Via Amane Cinema」を訪れていた。
過去の名作、自主制作作品だけを上映する、小さな映画館。
真は迷うことなく中央列へ向かう。そこに男が座っていた。
__町の古い映画館に静かに現れる
「記憶を呼び戻す」不思議なスタンド使いがいる
映画館では「Code: Mn-137」が上映されており、男はじっとスクリーンを見つめていた。
「いい作品だ。製作者の情熱が溢れている」
真は小さく笑う。
「久しぶりだね。Bell note」
「この町の平和は君が守っている」
Bell noteは新構造真に気が付くと、ゆっくりと話し始めた。
Bell noteは静かに首を振る。
「違う。僕は映しているだけだ」
「忘れてしまった景色を」
「忘れてしまった人を」
「忘れた優しさを」
「忘れた涙を」
__静寂が流れる。
「思い出しても、変わらないこともある」
「思い出したその日に、また悪事を働く者もいる」
真は頷いた。「知っている」
「僕のスタンドに、人を変える力なんてない」
「隣で叱ってくれる奴がいる」
「信じてくれる奴がいる」
「失敗しても迎えてくれる場所がある」
「だから少しずつ変われる」
「人は心に残った記憶の断片(キリトリ)を『忘れる』もしくは『忘れようと』する」
「そして、ときどき一番大切だったものまで」
「それでも、迷った時には、その断片が進むべき道を教えてくれる」
「この町が平和なのは、天音町の精神の総意だ」
「僕は世界中を旅してきた」
「戦火に怯える町も見た、憎しみだけが残った町も見た、何も変わらない町も見た。__それでも」
「人は平和を願う」
「その願いだけは、どこへ行っても同じだった」
Bell noteは穏やかに笑う。
「これは僕だけの力じゃない」
真が答えた。
「Bell note。君は強大な力を持っている『平和の切り札』だ。その力が正しく使われていることに、私は敬意を表する」
新構造真が映画館を出る際に、Bell noteに呼び止められた。
「天音町に不穏な奴らが入ってきている。フランスのドミニコ一家の手下だ。天音町博物館にある「古代の弓矢」を狙っている。
奴らのボス「ドミニコ・カッシー二」は、ギャングの帝王と呼ばれていて…実は最強無敵のスタンド使いだ。
「ほぅ…こっちは物騒だな。敵にならないことを祈るよ」

「Golden Earring(ゴールデン・イヤリング)」
あとがき
これは楽しい!5月は仕事が忙しく、なかなか手が付けれませんでしたが、やっと完成しました。エンターテイメントに振り切った回です。
🔔Bell noteさん!お待たせして申し訳ありませんでした。
🔔Bell noteさんの 特殊スタンド
スタンド名:『Extraordinary(非日常)』
能力:「非日常のキリトリ線(フレーム・カット)」
使わせてもらいました!
ありがとうございます!
今までに見たことが無い能力だったので面白かったです!
説明不要!🔔Bell noteさんの超クォリティの動画でお楽しみください

この物語のゲルシャーク団の総帥の世界観は🔔Bell noteさんの名所スタンドを使わせてもらいました。まさしく「平和の兵器」こんな世界をコラボできるとは最高の幸せです。これも超クォリティの動画でお楽しみください
🔔Bell noteさんSFミステリーの金字塔!まるで映画!
【シネマティック朗読劇】『Code: Mn-137』
<次回予告>
次回の舞台ではアルファベットモンスター(Alphabet Monsters)さんのスタンドと名所「天音町博物館」でスタンドバトルします!
①「アルファベット・モンスター」:
万丈 英治(ばんじょう えいじ)
②「デッド・レター・サーカス(Dead Letter Circus)」:
万丈 有葉(ばんじょう あるは)
③「アイ・イン・ザ・スカイ」:
新構造真(しんこうぞう しん)
以上のコンビでドミニコ・カッシー二の最強無敵のスタンド「Golden Earring(ゴールデン・イヤリング)」と対決します!
「アルファベット・モンスター」と「デッド・レター・サーカス(Dead Letter Circus)」のこのスタンドの美しいフォルム・機能美は痺れます!
※スタンド同士のバトルシーンは、「ナオユキさん」から教えていただいた、Pollo AIを使用して作成ます!
バトルシーンを動画で・・・胸アツです。
只今募集中!
ご応募は、熱い魂と好奇心があれば誰でも参加OKです。
天音町シリーズのほぼ全てが英訳されています(謎)
このレベルで大丈夫なので気軽にご参加ください
★【6月24日まで募集中です!】★
誰が刻んだのか分からない落書き(一発芸)
天音町に落ちている謎の石(お題話)
選択を迫る禁足地(シチュエーション創作)
自由形式(天音町を自由に遊ぶ)
お待ちしております!
登場人物紹介
新構造真(しんこうぞう しん)
天音町・地域復興コンサルタント(元統計学者)

三枝絵里(さえぐさ えり)
新構造 真の助手を務める明るい女性。天音町で頻発する奇妙な現象や事件の記録・現地調査を担当している。

