『マンヒのいえ』ってどんな家?
■韓国絵本ブーム
先日数年ぶりに新大久保へ行き高麗博物館で開催中の企画展「絵本で知ろう!おとなりの国 韓国・朝鮮の絵本からパート3」を鑑賞。
これは韓国絵本の原書と翻訳版を集めた企画で、並んだ絵本たちを眺め、日本語に翻訳された韓国絵本ってこんなに増えたのかとあらためて驚く。
昨今では日本でもペク・ヒナやスージー・リーらが人気で、千葉市美術館では「ブラチスラバ世界絵本原画展 絵本でひらくアジアの扉−日本と韓国のいま」が開催され、韓国絵本の存在が日本で大きくなっている。
そしてこのムーブメントには決定的な礎となる絵本が存在する。
それは『マンヒのいえ』(クォン・ユンドク/みせけい/1998/セーラー出版(現らんか社))という絵本だ。
この絵本をより深く知るためには、まず日本における韓国絵本の歴史を知る必要がある。
■ざっくりとした歴史
そもそも、日本における韓国絵本の歴史は短い。
というか、だいたい韓国絵本自体の歴史が浅く、まだ34年しか経っていない。

絵本に詳しい韓国人の方に聞くと皆こう答える。
韓国の最初の絵本は1988年に刊行された『白頭山物語』(リュウ・チェスウ)という朝鮮神話をベースにした絵本だと。
本作は刊行の年にソウル五輪が開催され、前年には当時の大統領候補だったノ・テウによる民主化宣言がなされ、韓国という国が全面的に民主化へシフトしていく時期だった。
そして90年代に入って民主化は進み、未整理だった著作権も整い『こいぬのうんち』のチョン・スンガク、『ソリちゃんのチュソク』のイ・オクベ、そして『マンヒのいえ』のクオン・ユンドクら、韓国絵本の中興の祖と呼ぶべき絵本作家たちが次々とデビューし、絵本出版が活況に入っていく。
民主化に連動して絵本も活性化していくという点はとても興味深く、その後1998年に当時の大統領の金大中が「文化産業は21世紀の重要な基幹産業」と宣言。
2000年代に入ると先述のリュウ・チェスウが『きいろいかさ』でニューヨーク・タイムズベスト2002を受賞、2009年には韓国がボローニャ国際絵本原画展のホスト国を担当。

2019年にはペク・ヒナの『あめだま』(2017/本読むクマ)がIBBYオナー、ミョン・スジョンの『せかいのはてまでひろがるスカート』がBIB「金のりんご」、そして2022年にスージー・リーがアンデルセン賞受賞と、韓国の絵本作家が次々と国際的な絵本賞を獲得し、韓国は「絵本に勢いがある国」というイメージをまとっていく。
これはK-POPや韓流ドラマ、コリアンムービーなどの席巻ともリンクする話だ。
ボローニャ絵本原画展の日本巡回を毎年鑑賞するが、日本では扱いにくいテーマや新しい表現に溢れ、韓国絵本とにかくかっこいいと素朴に思う。
チョ・ウォンヒの『歯の猟師』(未翻訳)はどこかから出ないかなあ、とか。
他にも国際児童図書原画展(1998年)や、韓国初の絵本専門店チョバンなどのトピックがあるが、ひとまず、以上がざっくりとした韓国絵本の歴史になる。
では日本における韓国絵本のひろがりはなにがきっかけだったのか…?
■セーラー出版という絵本専門版元
日本における韓国絵本の展開でセーラ―出版(現らんか社)という絵本専門版元が果たした役割がとても大きい。
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