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元革命運動家の父は娘と平和に暮らせない 『ワン・バトル・アフター・アナザー』

P・T・アンダーソン監督、L・ディカプリオ主演という超話題作。元革命家の父と娘の逃走劇を描くサスペンスアクションですが、正直な感想は「すべてが中途半端」。意図的に淡々と描かれる作風に、僕はノレませんでした。豪華キャストの意欲作がなぜ刺さらなかったのか、その理由を(ネタバレなしで)レビューします。

2025年10月3日(金)公開 全国ロードショー

■あらすじ

 「フレンチ75」は、人間の自由と尊厳のために戦う革命組織だ。メンバーのパーフィディアは爆弾担当のパットと恋人同士で子供も生まれるが、資金強奪のための銀行襲撃で警備員を殺してしまう。

 逮捕されたパーフィディアは、かねてから因縁のあったロックジョー警部に脅迫され、組織の情報を警察に売り渡す。「フレンチ75」は壊滅状態に陥り、パットも幼い子供を連れて逃亡生活へ。その後、パーフィディアはロックジョーの監視を逃れて、メキシコ国境の彼方に姿を消した……。

 それから16年。パットはボブ・ファーガソンという変名で、美しく育った娘のウィラと暮らすシングル・ファーザーになっている。革命運動より娘との生活が大切だ。ボブ(パット)の過保護ぶりに、ウィラもウンザリしている。

 だがその平和は、ロックジョーの登場で一変する。厳しい移民取り締まりで警視に昇進した彼は、本格的に「フレンチ75」の残党狩りに乗り出したのだ。

■感想・レビュー

 『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(2007)や『リコリス・ピザ』(2021)のポール・トーマス・アンダーソン監督が、脚本・監督した大作サスペンスアクション映画。主演はレオナルド・ディカプリオ。

 大変話題になっていたので意気込んで観たのだが、僕は正直あまりピンと来なかった。なんだかすべてが中途半端でボンヤリしている気がするのだ。ジャンルとしてはサスペンスではあると思うが、手に汗握るドキドキやハラハラはあまりない。アクションも全体的に生ぬるい。しかしこれは、監督がわざとやっていることだ。

 サスペンスを盛り上げたいなら、カットバックやクローズアップを使うなど、それ相応の手順や技法はいくらでもある。アクションだって主人公視点に近いカットを入れて、観客の心臓をわしづかみにする方法は山ほど考えられる。でもこの映画はそうしない。

 屋上での逃走で主人公が建物の上から転落するシーンとか、路上でテーザーガンを撃たれるシーンの、なんと淡々としたことか。どんなB級映画の監督でも、これらのシーンで観客の心拍数を倍にすることなど容易だろう。でもこの映画はそうしない。カーチェイスも、銃撃戦も、尋問シーンも、あらゆるものが淡々とした生ぬるい描写として観客の前に提示される。

 物語の紆余曲折があるので、長い映画でも退屈はしない。しかしこの歯切れの悪い物語の展開が、僕にはどうもノレないのだ。この監督が下手だと言うつもりはまったくない。ポール・トーマス・アンダーソン監督は素晴らしい監督だ。だから明らかにこうすべきだという意図を持って、このメリハリのない活劇仕立てのドラマを作っている。

 同じ物語をB級アクション専業の無名監督に撮らせれば、もっと普通の活劇映画になったと思う。だがそうならないのが監督の個性なのだ。

 いろいろ釈然としない映画だったが、ウィラ役のチェイス・インフィニティは良かった。今後注目の若手俳優だ。

(原題:One Battle After Another)

ユナイテッド・シネマ豊洲(12スクリーン)にて 
配給:ワーナー・ブラザース映画 
2025年|2時間42分|アメリカ|カラー 
公式HP:https://wwws.warnerbros.co.jp/onebattlemovie/
IMDb:https://www.imdb.com/title/tt30144839/

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