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死と家族についての物語 『人はなぜラブレターを書くのか』

決して投函されることがないはずの手紙が届いたとき、20余年の時を超えて多くの人生が動き始める。過去の初恋と現在の家族関係を重ねながら、人が「死」とどう向き合うかを静かに問いかけたヒューマンドラマだ。2000年に起きた実際の事件と20年後の実話を骨格にしつつ、新たな物語を立ち上げる作り手の語りに引き込まれる。逡巡し停滞していたドラマは、手紙の到着と返信をきっかけに一気に動き始める。死者は消えるのではなく、他者の中に生き続ける──その感覚を丁寧にすくい取った作品だ。

2026年4月17日(金)公開 全国ロードショー

■あらすじ

 寺田ナヅナは千葉県佐原(香取市)で「アホウドリ」という食堂を営んでいる。自分で栽培した新鮮な野菜で作った惣菜と、客に振る舞われる大きな塩むすびが名物の店だ。

 だがここ最近、ナヅナと家族の関係は少しギクシャクしていた。夫の良一はナヅナの顔を見るたび不機嫌そうだし、中学生の娘・舞も両親の様子を不安な顔で見つめている。

 そんな娘の様子を見ながら、ナヅナは自分の少女時代を思い出す。そして1通の手紙を書きはじめた。今から20年以上前の高校時代、通学の電車で出会って好意を持つようになった同世代の少年。毎朝同じ時間に、同じ電車に乗って、参考書を広げていた横顔。意を決して彼に手渡そうと手紙を書いたのに、ついに渡すことができなかった手紙のこと。

 書き終えた手紙を封筒に入れてポストまで出かけたものの、ナズナはそれを投函することができないまま自分のカバンに仕舞い込む。それは決して届かない手紙のはずだった……。

■感想・レビュー

 実話から生まれたヒューマンドラマ。実話ベースの映画は多くの場合、事件や登場人物の名前を仮名にすることが多いのだが、この映画は事件とそれに関わる部分については実名で映画化している。主人公の恋の相手である富久信介、彼が通っているボクシングジムの大橋会長、伸介と一緒に練習に汗を流す先輩ボクサーの川嶋勝重などは実在の人物だ。

 20年前に通学電車の中で一緒だった元女子高生から、大橋ジムの会長にメッセージが届いたのも実話だし、メッセージの中身もほぼ映画の内容と同じ。ただしこのあたりから映画はフィクションを織り交ぜていて、この映画では綾瀬はるか演じるナズナの現代パートはほぼフィクションになる。

 実際に大橋ジムにメッセージが届いたのは、2020年のことだったという。映画はそれを4年後にずらし、富久伸介の両親の名前も変更している。こうして現実の事件や出来事は、虚構のドラマとシームレスに繋がっていくのだ。

 映画は「死」についてのドラマだと思う。主人公のナズナは、自らの死を考えることで、20数年前に亡くなった初恋の相手を思い出したのだろう。だが彼女はその手紙をなかなか投函できない。20年以上前のことではあっても、彼女はまだその死を受け入れられない部分があるのだ。

 それは彼女は自分自身の死を考えることで、20年以上前の初恋を思い出す。だが彼女は自分の死とも、20数年前の死も受け入れられずに立ち止まる。これを動かしていくのが、彼女自身が意図していなかった「手紙の到着」と「返信の到着」からなのだ。このあたりは、物語の構造として上手く考えられていると思う。

 死は一人の人間の命を終わらせるが、周囲の人の中でその人は生き続ける。そうした意味で、人は死んでも死なない。死んだあとも、その人は生き続けるのだ。ナヅナもその家族も、そんな「死についての真実」を理解したことで、目の前にある「死」を乗り越えて行くのだ。

ユナイテッド・シネマ豊洲(9スクリーン)にて 
配給:東宝 
2026年|2時間2分|日本|カラー 
公式HP:https://loveletter.toho-movie.jp/
IMDb:https://www.imdb.com/title/tt41936211/

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