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男女のマウント合戦の行き着く果ては? 『HELP / 復讐島』

無人島に漂着したエリート男性と、仕事一筋の女性部下。往年のイタリア映画『流されて…』を彷彿とさせる設定ですが、巨匠サム・ライミが描くのは甘いロマンスではなく、血で血を洗う「マウント合戦」が生み出す地獄でした。サバイバル能力で立場を逆転させたヒロインと、権威にしがみつこうとする男性上司。互いを屈服させることのみに執着し、救助さえも拒絶する二人の行き着く先とは? 現代社会の歪みを過激な笑いと狂気で抉り出す、毒気に満ちた一作をレビューします。

2026年1月30日(金)公開 全国ロードショー

■あらすじ

 企業戦略室で重要や案件を担当しているリンダだが、新社長のブラッドリーとの関係は最初から険悪なものだった。リンダは先代社長から次期副社長の座を約束されていたが、ブラッドリーは着任初日にその約束を反故にする。仕事ができて前社長だった父の評価も高かった彼女の存在が、何かと面倒くさいのだ。

 ブラッドリーはバンコク出張に彼女を同行させ、そのまま案件の現地責任者として厄介払いすることを考える。だが出張の飛行機が悪天候で遭難墜落。近くの無人島に流れ着いたのは、リンダとブラッドリーの二人だけだった……。

 周囲はすべて海。定期航路からも外れているらしく、船も飛行機も見当たらない。捜索隊は来るのか? それまでどうやって生き延びるのか?

 リンダは持ち前のサバイバル知識を使って、孤島での暮らしを生き抜いていく。一方ブラッドリーはケガをして一歩も歩けない。ここでは会社の上司と部下の関係が、完全に逆転していた……。

■感想・レビュー

 サム・ライミ監督の新作は、孤島に流された男性上司と女性部下の関係が逆転するというブラックコメディ映画。これは1974年のイタリア映画『流されて…』の設定を、男女逆転させたようなもの。(『流されて…』は2002年にマドンナ主演で『スウェプト・アウェイ』としてリメイクされている。)

 だが『流されて』は、一般には男性中心社会だった世の中で、女性富豪と男性使用人の関係が逆転し、一時的にであれ男性中心社会が出現するところが面白かったのだ。時代が違うとはいえ、これを単純に男女逆転させても当たり前すぎて面白さが成立しない。

 本作は『流されて…』的な設定を借りつつ、一般社会は男性中心で女性は下位とし、漂着先の関係正逆転で女性上位が出現するようにした。男は上司の権威で女性にあれこれ命じようとするが、文明から隔絶した無人島では何を言っても無駄。ケガもあって身動きも取れない。一方でテレビのサバイバル番組でたっぷり知識を蓄えたヒロインは、海に山にと飛び回って水や食材を次々にゲットしてくる。しかしこれはこれで、先が知れてしまう展開だ……。

 この映画が『流されて…』と決定的に違うのは、主人公たちが決して和解しないことだ。サバイバル生活の中で、互いの知らなかった面を見つけて打ち解けていく部分はある。しかし二人は共に、己の優位性を保つために相手を出し抜こうとし続ける。ひたすら利己的に、自分勝手に振る舞う。醜く壮絶なマウント合戦だ。

 リンダはなぜ外部からの救助の手を拒むのか? それは救助を頼みとした時点で、ブラッドリーの優位性が固定化されてしまうからだ。そんなことは許せない。自分は完膚なきまでに相手を屈服させ、自分の優位や特権性を維持し続けねばならない。

 だがこの発想が出てきた時点で、この映画終盤の展開は確定したと言っていい。相互理解も協力もなしにマウント合戦を繰り返せば、行き着くと果ては殺し合いなのだ。

(原題:Send Help)

ユナイテッド・シネマ豊洲(3スクリーン)にて 
配給:ディズニー 
2026年|1時間52分|アメリカ|カラー 
公式HP:https://www.20thcenturystudios.jp/movies/fukushu-jima
IMDb:https://www.imdb.com/title/tt8036976/


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