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虚構の平和に弛緩した日本で起きた戦争 『機動警察パトレイバー2 the Movie』

劇場版『機動警察パトレイバー』の第二弾は、前作と異なるシリアスな政治劇。製作公開は1993年というバブル崩壊後だが、PKO協力法が成立した直後という時代の空気をまといながら、「平和ボケ」した国民に冷や水を浴びせるような「戦争」を描いた。在日米軍の存在や海外の戦争への無関心といった問題は、現代にも通じる日本の姿そのもの。30年経っても変わらない「この国」の在り方と、実写に肉薄しようとした当時のアニメ表現の熱量を改めて振り返る。

10月17日(金)より2週間限定上映

■あらすじ

 1999年。東南アジア某国にPKO派遣された自衛隊のレイバー小隊が、現地の武装組織に襲撃されて壊滅する。発砲禁止の命令に反してただ一人生き延びた小隊長は、日本帰国後に表舞台から姿を消した。

 2002年。匿名の爆破テロ予告で通行閉鎖中だった横浜ベイブリッジが、人々の見守る中で爆破される。その瞬間を撮影したテレビ映像には、航空自衛隊の戦闘機が小さく写り込んでいた。事件は爆破テロではなく、自衛隊機によるミサイルの誤発射事件なのか?

 この事件に日本中が騒然となる中、特車二課第2小隊の南雲と後藤に、陸幕調査別室所属の荒川という男が現れる。彼によれば、ベイブリッジを攻撃したのは自衛隊機ではなく米軍機であり、もともとは平和に慣れきっている日本に対する軍事的な脅しに過ぎなかったらしい。実際の攻撃は予定になかったが、誰かが情報を操作してミサイルを実際に発射させたのだ。

 事件の背後に柘植という男が浮かび上がる。それは南雲と因縁浅からぬ相手だった……。

■感想・レビュー

 劇場版『機動警察パトレイバー』の第二弾。一応は前作の続編なのだろうが、「パトレイバー」というメディアミックス作品は、OAV版、テレビ版、コミック版、劇場版、実写版などで、少しずつ世界観が異なっているらしい。そのため本作も前作の延長のようでいて、じつはそうではない別の世界線になっている。

 1993年の映画だから、今から32年前の作品だ。劇場版1作目が公開された1989年はバブルの真っ直中だったが、この2作目が公開されたときは既にバブルが崩壊した後。しかし多くの日本は、まだ不況が一時的なものだと考えていた。大きな祭りが終わったことに気付かないまま、祭りが生み出した陶酔の余韻に浸っていた人々の姿を、この映画ははからずも描き出していると思う。

 映画とは常に「今このとき」のものだ。意図するしないに関わらず、優れた映画作家は作品に時代の空気を取り込んでしまう。時代がたてばそうした空気は霧散してしまうのだが、その時代を経験した人間には、どうしてもその作品の空気が感じられる。これは映画に限らず、テレビドラマや流行歌も同じかもしれない。

 この映画に関しては「自衛隊のPKO参加」が、紛れもなくその時代に注目を浴びていたモチーフだった。日本では前年に成立したPKO協力法によって、初の自衛隊陸上部隊の派遣が行われたからだ。PKO参加を巡る議論は、もはやすっかり昔話になった。しかし日本人が海外の戦争に無関心なことや、在日米軍の特権的な地位に無頓着なことは、30数年たった今でも何も変わらない。この映画の映し出す「平和ボケした日本」は、今もあの頃のままなのだ。

 しかしこの映画で一番時代性を感じるのは、アニメーション映画が実写表現に肉薄し、それを超えようとする意欲と執念の部分だ。この執念があればこそ、この時期の押井作品は海外映画人にも強い影響を与えることができたのだろう。AI動画に、それが可能だろうか?

ユナイテッド・シネマ アクアシティお台場(4スクリーン)にて 
配給:Filmarks 
協力:バンダイナムコフィルムワークス
1993年|1時間53分|日本|カラー 
公式HP:https://patlabor.tokyo/news/1621/
IMDb:https://www.imdb.com/title/tt0124770/

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