殺人事件の謎を解く名探偵は羊だった! 『ひつじ探偵団』
イギリスの田舎町を舞台に、羊牧場主の毒殺事件をミステリー好きの羊たちが追う異色の探偵映画。ヒュー・ジャックマン主演、ピクサー出身カイル・バルダの初実写作品だ。
のどかな村で起きた殺人事件は、遺産相続や家族の疑惑を巻き込みながら、やがて人間社会の正常バイアスを映すブラックコメディへと変貌する。動物探偵ものの愛らしさと、フーダニットの面白さが同居した一本。

■あらすじ
イギリスのデンブルック村で、羊牧場を営むジョージ・ハーディ。彼は一日の仕事の終わりに羊たちを集め、ミステリー小説を読み聞かせるのが日課だ。羊たちはそれにおとなしく耳を傾け、自然と大のミステリー好きになっていた。ジョージは羊を愛し、羊たちもジョージを愛していた。
だがそのジョージが変死した。誰かに毒殺されたのだ。小さく平和な村で起きた殺人事件だが、たまたま別の取材で村に来ていた新聞記者のエリオットは特ダネに大喜び。村にひとりしかいない警官のティムは、殺人事件の担当が初めてで緊張気味だった。
そこに乗り込んできたのは、弁護士のリディアと、ジョージの娘レベッカ。村の関係者に、南アフリカにいるジョージの息子ピーターも電話で加わって、ジョージの遺言状が公開された。
じつはジョージには莫大な額の遺産があり、その相続人としてレベッカが指名されていた。だがその彼女に、ジョージ殺害の容疑がかかるのだ……。
■感想・レビュー
ピクサーのアニメーター出身で、『ロラックスおじさんの秘密の種』(2012)や『ミニオンズ』シリーズの共同監督としても知られるカイル・バルダの初実写映画。主演はヒュー・ジャックマンなのだが、序盤で殺されてしまうので存在感はさほどでもない。とはいえ物語の牽引役になるのはミステリ好きの羊リリーだから、その次ぐらいには目立っているのかもしれない。
物語の舞台はイギリスの小さな村。ストーリーなどはまったく異なっているが、雰囲気としてはヒッチコックの『ハリーの災難』(1955)に似ていると思う。のどかな田舎町で起きた場違いな殺人事件に、村人たちが右往左往させられる様子が似ているのだ。
『ハリーの災難』はよくできたブラックコメディだったが、『ひつじ探偵団』にもかなり辛辣でブラックな味わいがある。映画を観ていてゾッとするほどブラックだと感じたのは、羊たちが「死」というネガティブな出来事をきれいさっぱり忘れてしまう描写だ。目の前に冷酷な現実が迫っていても、羊たちは目を閉じてゆっくり数字を数えるだけで、その現実を完全に忘れて平和な日常へと逃避してしまう。これは映画を観ている我々の姿にそっくりではないのか?
これは戯画化された「正常バイアス」なのだ。見たくない現実は見ないし、受け入れたくない現実は存在しないものとみなす。目の前にそれを突きつけられても、日常の些事に逃避して現実に背を向けてしまう。現実と立ち向かっている人や現実が見えている人にとって、それはひどく腹立たしいことかもしれない。だが何かの機会に「正常バイアス」が修正されて、現実が見えてくることもある。この映画はそんな「希望」の物語なのかもしれない。
典型的な「フーダニット型」のミステリー映画。少し強引なところもあるのだが、最近の『劇場版・名探偵コナン』シリーズに比べれば、ずっと上手くまとまっていると思う。(あくまでも個人の感想です。)
(原題:The Sheep Detectives)
ローソン・ユナイテッドシネマ STYLE-S みなとみらい(2スクリーン)にて
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
2026年|1時間49分|アメリカ、イギリス|カラー
公式HP:https://hitsuji-tanteidan.jp/
IMDb:https://www.imdb.com/title/tt32565993/
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