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格闘家を演じた森田望智の熱演には拍手 『ナイトフラワー』

『ミッドナイトスワン』の内田英治監督が手がける「真夜中シリーズ第二弾」は、貧困から抜け出すため裏稼業に手を染めた二人の女性の物語。多額の借金を背負うシングルマザー・夏希と、格闘家として生きる多摩恵。二人が選んだのは、合成麻薬の密売という危険な道でした。
「母親」というテーマを軸に、裏社会の厳しさと女性たちの連帯を描き出す本作。森田望智やミュージシャン・渋谷龍太など、キャストの熱演も見どころですが、物語の展開には思わずツッコミたくなる"抜け道"も。見応えと問題提起が交錯するヒューマンサスペンスの感想をお届けします。

2025年11月28日(金)公開 全国ロードショー

■あらすじ

 永島夏希はまだ幼い二人の子供を抱え、昼も夜も働きづめで働いている。別れた夫が多額の借金を彼女に押し付けて姿を消し、今もその返済に追われているのだ。だが働いても働いても貧しさから抜け出せず、子供にも満足に食事を与えられないほど生活は困窮している。

 そんな彼女が、夜の街で強盗に襲われたドラッグの密売人から違法薬物を手に入れる。たまたま手に入れた薬は、売れば数万円の金になる。彼女は恐る恐るその薬を売りに出掛け、密売の元締めに見つかったところを、格闘家の芳井多摩恵に助けられる。多摩恵は金のために風俗嬢のバイトをしており、そこから抜け出したいと考えていた。

 二人は薬物密売の元締めに掛け合い、街で合成麻薬の密売をすることにした。夏希が薬を売って、多摩恵がその用心棒をするのだ。新しい商売の滑り出しは順調で、夏希と子供たちの生活は多少のゆとりが出てくるようになる。だがその先に大きな落とし穴が待っていた。

■感想・レビュー

 2021年の『ミッドナイトスワン』で高く評価された内田英治監督が、自ら「真夜中シリーズ第二弾」と銘打った、裏社会で生きる女たちの友情と連帯の物語。

 物語のモチーフのひとつは「母親」だと思う。夏希と子供たちの関係は、母に捨てられた多摩恵やその幼なじみの青年、麻薬を買いに来る大学生の星崎桜と母・みゆきのいびつな関係、麻薬密売の元締めサトウの母に対する思いなどと対比されることで、美しく純粋なものとして描かれることになる。

 母は強い。母はたくましい。母は子供のために、どんなことだってやってのける。たとえそれが違法なこと、他人を不幸にすることだとわかっていてもだ。

 だが他人を傷つけ不幸にした人間が、他人を踏みつけにして自ら幸せになることは許されない。これが映画の世界における黄金律であり、ほとんどの映画はその戒律に沿って物語が展開する。この映画もその例外ではないのだ。

 見応えのあるシーンも多い映画だ。2027年春の朝ドラ主演が決まった森田望智は、ふて腐れて荒んだ雰囲気はやり過ぎな感じもするが、試合シーンになるとちゃんと格闘家に見えるのが立派。ミュージシャンの渋谷龍太が麻薬密売の元締めのサトウ役で、どこをどう見ても演技初心者で素人なのに、存在感が抜きん出ていて登場シーンでは目が釘付けになってしまう。

 しかしこの映画は、気になる点の方がずっと多い。悲劇は物語の中で、主人公の逃げ道をきちんと塞いでおくのが大事なのに、この映画は抜け道だらけなのだ。

 この映画で最大の逃げ道は、夏希たちが行政の福祉につながることだ。自己破産して借金を帳消しにし、生活保護を受ければ暮らしは立て直せた。世の中には生活に困窮しながら、生活保護を受けられない人が山ほどいる。つまり生活保護への道を塞いでしまうのは簡単なのだ。なぜ映画はそれをしなかったのか? 作り手の怠慢のせいで、主人公たちが愚かで間抜けに見えるのは残念。

新宿ピカデリー(シアター8)にて 
配給:松竹 
2025年|2時間4分|日本|カラー 
公式HP:https://movies.shochiku.co.jp/nightflower/
IMDb:https://www.imdb.com/title/tt38504766/

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