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虫の視点に徹するのも良し悪し 『ペリリュー 楽園のゲルニカ』

太平洋戦争末期の激戦を描いた原作コミックを、1時間46分の長編アニメーション映画として再構成。物語に描かれる世界を、主人公の兵士・田丸の視点に限定することで、戦場を這い回る兵たちの極限状況を体感的に映し出していく。しかしその反面、戦いの全体像を示す上位の視点が排除され、物語の広がりがやや損なわれている印象もある。戦後のエピソードも新しさが感じられず、全体にぼんやりした印象になったのは残念だ。

2025年12月5日(金)公開 全国ロードショー

■あらすじ

 1944年(昭和19年)夏。パラオ諸島のペリリュー島。田丸均一等兵は、そこで家族に手紙を書いていた。自分がいるのは南方の島。そこには絵本に描かれた楽園のような、のどかで平和な風景が広がっている。だがここは、間もなく戦場になるのだ……。

 9月15日。連日の爆撃や艦砲射撃でジャングルが焼き払われた後、ペリリュー島に対する米軍の上陸作戦が始まった。塹壕に隠れて待ち構える日本軍は米軍の第一波攻撃を押し戻すが、その後の第二波攻撃には耐えきれずに後退。以降の日本軍は島内の各所にある洞窟に身を潜めながら、米軍を足止めするための持久戦に徹するようになる。

 田丸は同期の吉敷上等兵と共に、戦場のあちこちを移動して行く。敗色濃厚な日本軍だが、ペリリュー島の部隊は玉砕することも米軍に大きな打撃を与えることもできずにいる。兵隊たちは食料や水の確保に追われながら、米軍の掃討戦で少しずつ数を減らしていくのだった……。

■感想・レビュー

 武田一義の同名コミックは、太平洋戦争末期の「ペリリュー島の戦い」をモチーフにしたフィクション作品。原作は単行本で11巻、外伝4巻という大長編だが、この映画はそれを1時間46分に仕立て直している。

 多くの戦争映画が長い歴史をコンパクトにまとめるように、この映画は長い原作をコンパクトにまとめたのだ。1本の映画にまとめる以上、これはやむを得ない措置だと思う。しかしこのことで、映画の中に少々わかりにくい場面が出てきてしまった。原作を映画用に脚色する時点で、映画だけで筋が通るようにしてほしかったと思う。

 映画全体の印象は、決して悪いものではない。だが僕はこの映画がちょっと物足りないと思った。物語の視点が主人公の田丸に集約されていて、「ペリリュー島の戦い」の全体像を見渡す視点がないのだ。原作にはそれだ巧みに盛り込まれているが、映画はあえてそれを排除したのだろう。

 これは「虫の視点」で見た戦争の姿だ。映画の中にアリの行進が出てくるが、この映画は戦場をはいずり回る兵隊たちをアリに例えているらしい。「虫の視点」から戦争を描くことは、戦争映画のひとつの定型フォームになっていると思う。朝ドラ「あんぱん」だって、戦争エピソードは現場の兵隊の視点で描かれているのだ。

 だが多くの戦争映画は、兵隊の視点と共に、兵隊を動かしているより上位のエピソードを盛り込んでいる。そうすることで、戦争はより立体的に描くことができるからだ。スピルバーグの『プライベート・ライアン』(1998)も、そうした構造になっている。本作にも、そうした視点が少しは欲しかったと思う。

 物語の後半は、終戦を知らないままジャングルの中を生き延びる兵隊たちの物語になる。この映画のドラマとしてのクライマックスはこの終戦後の物語だが、僕は同じ話を昨年『木の上の軍隊』で観たばかりなのだ。それに比べて、本作はどうなのか? 僕は少し物足りなく感じた。

TOHOシネマズ シャンテ(スクリーン3)にて 
配給:東映 
2025年|1時間46分|日本|カラー 
公式HP:https://peleliu-movie.jp/
IMDb:https://www.imdb.com/title/tt35684792/

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