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この生ぬるさがむしろ良い! 『スペシャルズ』

暴力団同士の抗争を背景に、殺し屋たちがダンスチームとして大会に潜入する――設定だけ聞けば悪ふざけ寸前のコメディだが、『スペシャルズ』はその一線を越えない絶妙なバランスで成立している。
内田英治監督は、荒唐無稽なアイデアを抑制の効いた演出でまとめ上げ、人情味のあるドラマへと着地させた。アクションの粗さは気になるものの、椎名桔平や小沢仁志らの存在感、そして子役・羽楽の鮮烈な魅力が作品全体を引き締める。
奇妙な設定と誠実な演出が同居した、不思議な味わいの一本だ。

2026年3月6日(金)公開 全国ロードショー

■あらすじ

 熊城は暴力団組織・風間組の幹部。対立組織・本条組の組長暗殺を狙っているが、相手は用心深く何人もの替え玉を用意して難を逃れている。

 そんな彼がとっておきの情報を聞きつける。本条組長が溺愛する孫娘がダンス大会に出場し、応援のため本条組長自身が会場に駆けつけるというのだ。熊城はダンス大会を次の襲撃の場に決める。

 会場最前列に席を取る本条を確実にあの世に送るため、熊城は殺し屋を雇ってダンス大会に出場させることを決める。集められたのはいずれもダンス経験がある殺し屋3人。

 だがバレエ出身のダイヤ、ヒップホップの桐生、フォークダンスのシンでは、それぞれ背景もまるで違う。いずれもクセのある連中で、チームは最初からバラバラ。

 結局、熊城自身もチームに入ることで、即席のダンスチームが結成。指導コーチは小学生の明香が担当。そこに兄貴分の元武闘派村雨も加わって、即席チーム「スペシャルズ」が結成されたのだが……。

■感想・レビュー

 原案・脚本・監督は、『ミッドナイトスワン』(2020)や『ナイトフラワー』(2025)の内田英治。社会派のシリアス作品で評価されがちな監督だが、じつはどんなジャンルもこなす万能選手だ。

 今回の映画はアクション・コメディ。映画冒頭には大掛かりなカーチェイスがあり、劇中に何度か派手なガンアクションがあり、そして隙間をダンスが埋めて、全体としては温かみのある人情コメディに仕上げている。

 殺し屋がダンスチームを組むという設定は荒唐無稽なので、もっと極端な悪ふざけに振ることもできたと思う。しかしそれを我慢してか、あるいは監督の性分なのか、必要以上にふざけず、抑制されたドラマに着地させているのが悪くなかったと思う。

 最初に欠点をあげておくと、この映画のガンアクションはひどいと思う。超至近距離で双方が発砲するアクションは先行例がたくさんあると思うが、これで弾が当たらないのは「すごい」以前に不自然さが気になってしまう。もう少し何か工夫がほしかった。

 Snow Manの佐久間大介主演が映画の売りなのだろう。しかし僕はこの映画最大の見せ場は、椎名桔平と小沢仁志をメンバーに入れて踊らせたところだと思う。椎名桔平は後列でもセンターの目立つところだし、小沢仁志も端っこだがちゃんと踊っている。もともと踊れる佐久間大介と中本悠太に、最後きちんと見せ場を作るのも上手い。

 しかし出演者の中で最大の収穫は、小学生ダンスコーチの明香を演じた羽楽(うらら)だと思う。大物俳優を前にして堂々とした芝居度胸を見せるし、キレキレのダンスはダメ男たちにハッパをかける役に説得力を持たせている。よくぞこんな子役を見つけてきた。

 クライマックスはダンスバトルで、予選シーンから多くのダンスチームが参加して「ダンス文化」の幅広さを見せてくれる。主人公たちのチームは正直これで予選突破できるのかな……と思ったが、決勝のダンスはお見事。

TOHOシネマズ日比谷(スクリーン11)にて 
配給:エイベックス・フィルムレーベルズ 
2026年|1時間50分|日本|カラー 
公式HP:https://eiga-specials.com/
IMDb:https://www.imdb.com/name/nm2091448/

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