ハードボイルドな宇宙版西部劇 『スーパーガール』
『スーパーマン』と同じ世界観を共有するDC映画だが、描かれるのはスーパーガールとして活躍する前のカーラ・ゾー=エル。赤い太陽の惑星で能力を封印し、酒に溺れる彼女が、復讐に燃える少女と出会い、愛犬クリプトを傷つけられたことで宇宙の無法者を追う。西部劇、復讐譚、アクション・アドベンチャーを融合させた、ハードボイルドな前日譚だ。

■あらすじ
赤い太陽の惑星で、カーラ・ゾー゠エルは飲んだくれていた。朝から晩まで浴びるように酒を飲む。酩酊し、泥酔し、嘔吐し、倒れ込むように眠る。そして目が覚めれば、また同じように酒浸りの一日。彼女に寄り添うのは、愛犬クリプトだけだ。23歳の誕生日を迎えてもそれは変わらない。
ルーシー・メアリー・ノールは家族と平和に暮らしていたが、その暮らしは犯罪組織「ブリガンズ」のリーダー、イエロー・ヒルズのクレムによって奪われる。突然現れたクレムが、ルーシーの家族を皆殺しにしたのだ。ルーシーは自分の復讐に手を貸してくれるよう、カーラに依頼する。
カーラは他人の復讐に手を貸す気がなかったが、カーラの宇宙船を奪ったクレムが毒矢でクリプトを射たことから、解毒剤を求めてクレムを追うことになる。ルーシーもこれに同行。
だが二人を乗せた満員の宇宙バスを宇宙海賊が襲撃。カーラは海賊たちから、クレムの行方を聞き出すのだが……。
■感想・レビュー
昨年公開された『スーパーマン』(2025)と同じ世界観を共有する、スーパーマンの従姉妹スーパーガールの物語だ。『スーパーマン』との時系列がよくわからないのだが、この映画の方が『スーパーマン』より前の話なのかもしれない。しかしこれは、この映画にとっては小さなことだ。
この映画が描いているのは、クリプトン人であるカーラ・ゾー=エルがスーパーガールになるまでのいきさつだ。つまり『スーパーガール』の物語が本格的に動き出す前のプリクエル(前日譚)。主人公のカーラはお馴染みのスーパーガールのコスチュームを、終盤になるまで身につけない。
カーラはスーパーヒーロー(スーバーヒロイン?)ではなく、スーバーヒーローになる運命を呪い、それを拒絶する者として描かれている。クリプトン人は黄色い太陽の光を浴びるとスーパーパワーを発揮するのだが、彼女はすべてを忘れて酒に溺れるため、あえて赤い太陽の惑星でスーパーパワーを封印する。
彼女にはある種の自己破壊願望があるらしい。それを辛うじて現実につなぎ止めているのが愛犬クリプト。それを傷つけられたことで、彼女の怒りは爆発する。これは『ジョン・ウィック』(2014)のスーパーヒーロー版なのではなかろうか……。
原作は2021年から翌年にかけて発表された「スーパーガール:ウーマン・オブ・トゥモロー」だが、家族を無法者に殺された少女が復讐のために凄腕の助っ人を雇う物語は、チャールズ・ポーティスの小説「トゥルー・グリット」(1968)を参考にしているという。
結果として『スーパーガール』は見せ場満載のアクション・アドベンチャー映画になっているが、僕はカーラがルーシーに殺人を思いとどまらせようとするエピソードに納得ができなかった。ルーシーを制止したことで他の無関係な人が犠牲になっているように見えるし、そもそもカーラなら人を殺しても構わないという理屈がよくわからない。
(原題:Supergirl)
ユナイテッド・シネマ豊洲(1スクリーン)にて
配給:東和ピクチャーズ、東宝
2026年|1時間49分|アメリカ|カラー
公式HP:https://supergirl-movie.jp/
IMDb:https://www.imdb.com/title/tt8814476/
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