ブルースとヴァンパイアたちの夜 『罪人たち』
1930年代のミシシッピ・デルタ。ブルースが鳴り響く夜、酒と欲望に満ちた酒場に異形の客たちがやって来る。ミュージカル、ギャング映画、青春譚、そしてヴァンパイアホラー。本来なら混ざり合わないはずの要素が、音楽を接着剤にしてひとつの物語へと収斂する。黒人の歴史と貧しい白人労働者の現実を重ねながら、アメリカの光と影、愛と自由を照らし出す、アカデミー賞16部門ノミネートの話題作。

2026年2月13日(金)凱旋上映 全国7劇場にて
■あらすじ
1932年。ミシシッピ・デルタの小さな町クラークスデールに、悪名高い双子の兄弟、スモークとスタックが帰ってくる。彼らはシカゴでギャングたちの手下として働いて金を貯め、故郷の町で酒場を開くことにしたのだ。場所は郊外の元製材所。まだ禁酒法時代。町のど真ん中での開業はできない。
店のオープンを前にして、兄弟たちは仲間を呼び集める。まずは従弟のプリーチャーボーイ(牧師の息子)サミー。ベテランのブルースマン、デルタ・スリム。用心棒には旧知のコーンブレッド。料理は長く別居していたスモークの妻アニーが担当し、商品の仕入は中国人雑貨商の夫妻に依頼した。
いよいよ店のオープン。近くの農場からやって来た黒人客たちでごった返す店に、スタックの元恋人メアリーと、若い歌手のパーラインも加わる。客に振る舞われる酒と料理。そして音楽。だがサミーが自慢のギターで歌い出すと、招かれざる客たちも店にやって来るのだった……。
■感想・レビュー
第98回アカデミー賞で史上最多の16部門にノミネートされた話題作が、劇場で再上映されることになったので観てきた。
アメリカ本国はもちろん世界中で話題になったヒット作だが、昨年6月からの日本公開ではなぜかあまり客が入らなかったようで、僕が観ないうちに上映が終わってしまったのだ。できればIMAXで観たかったが、スクリーンで観られただけでも感謝しなければ。
もともとワーナー・ブラザース映画が配給した映画だが、同社が昨年末で日本での劇場配給業務を終了したことも関連してか、今回は配給が東和ピクチャーズと東宝になっている。こられの会社にも感謝したい。
本作は全編に音楽が散りばめられたミュージカルであり、同時にギャング映画であり、一人の青年が自分の道を模索する青春映画であり、さらにはヴァンパイアホラー映画でもあるという、豪華絢爛三段重ねの重箱弁当みたいな映画だ。こうしたジャンル横断型のハイブリッド映画は、コメディやB級テイストのハチャメチャになりがち。しかしこの映画は、じっくり見せるA級の文芸作品に仕上がっている。
これはやはり「ミュージカル」という形式が効いている。登場人物たちが自分の心情を歌や踊りで吐露するオーソドックスなミュージカルではなく、伝記映画などにもよくある音楽がぎっしり詰め込まれた「音楽映画」タイプだが、この音楽が接着剤の役割になって、映画に盛り込まれた複数要素をつなぎ合わせているのだ。劇中では黒人のブルースと、白人のアイルランド民謡がぶつかり合って火花を散らす。
映画の中心にあるのは、ブルースに象徴される「黒人の歴史」なのだろう。だがそれだけでもない。この映画には、1930年代に黒人を差別していた白人たちも、やはり貧しい労働者でしかなかったことが描かれている。これは現代にも通じる、アメリカの姿でもあるのだろう。この映画は黒人の視点から、アメリカの今この時を描いている。
(原題:Sinners)
TOHOシネマズシャンテ(スクリーン1)にて
配給:東和ピクチャーズ・東宝
2025年|2時間17分|アメリカ|カラー
公式HP:https://www.warnerbros.co.jp/home_entertainment/sxoeo-_h40li/
IMDb:https://www.imdb.com/title/tt31193180/
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