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沖縄戦の縮図「伊江島の戦い」を描く異色作 『木の上の軍隊』

沖縄戦の激戦地となった伊江島。終戦後もそれを知らぬまま、森の木の上に隠れていた二人の日本兵がいた。小説家で劇作家の井上ひさしが長年構想を温め、井上の死後にこまつ座で舞台化された同名作品をもとに、沖縄出身の平一紘監督が映画化した異色の実録戦争映画。主演の堤真一と山田裕貴は熱演で、幾つかの場面で思わず涙がこぼれる。

2025年6月13日(金) 沖縄先行公開
2025年7月25日(金) 全国ロードショー

■あらすじ

 1945年。沖縄に迫る米軍を迎え撃つため、沖縄の伊江島では軍民総掛かりで大規模飛行場の建設工事が進められていた。だが3月になると、大本営は米軍に飛行場を奪われることを危惧してその破却を命令。4月。いよいよ米軍の上陸作戦がはじまると、日本軍はあっという間に蹴散らされた。

 飛行場工事のため派遣されていた山下和雄少尉と現地召集新兵の安慶名セイジュンは、上陸した米軍の目を避けるため、森の中のガジュマルの木の上に身を隠す。米軍の掃討作戦が一段落したら、生き残った日本軍部隊と連絡を取り合い、米軍に反撃しなければならない。

 数日身を潜めた後、夜陰に紛れて友軍陣地たどり着いた二人が見たのは、徹底的に破壊された施設と友軍兵士の死体の山だった。二人は隠れていた木の上に戻り、日本軍が島を再奪還するまで待機することにした。それまでは森の中で、なんとしてでも生き延びねばならない。

 やがて日本は降伏するのだが……。

■感想・レビュー

 物語は実話をもとにしている。主人公二人モデルになったのは、宮崎県出身の山口静雄さんと、沖縄県うるま市出身の佐次田秀順さん。二人は米軍の攻撃を避けてガジュマルの木の上に身を隠し、人目を避けながら周囲で食料や物資を集めて、日本の敗戦を知らぬまま約2年間を過ごしたという。

 1980年代にこの話を新聞で知った作家・劇作家の井上ひさしは、舞台劇「木の上の軍隊」を準備。だが遅筆の井上はこの脚本を完成できないまま、2010年に世を去った。残されたアイデアを元に、蓬莱竜太の脚本で「木の上の軍隊」が初演されたのは2013年になってのことだった。

 今回はその映画版だが、原案として井上、原作とこまつ座のは明記されていても、蓬莱竜太の名は消えている。映画は舞台版を離れて、モデルとなった実話と井上ひさしのアイデアから再構成されているようだ。舞台版は新兵・上官・語る女の三人芝居だが、映画は登場人物を拡張し、時間的にも空間的にも大きな広がりを持ったものになっている。

 この作品の一番のアイデアは、原作舞台から引き継いだ『木の上の軍隊』というタイトルだと思う。木の上にいるのは「兵隊」ではない。ここにいるのは「軍隊」で、上官と新兵という二人の人間に、当時の沖縄戦の様子が凝縮されている仕掛けだ。

 上官は本土出身で、新兵は地元の沖縄出身。「祖国を守るために戦え」という上官の言葉は、現に生まれ育った故郷が戦場になっている新兵には響かない。新兵は本島も本土も知らない。彼が知っているのは昔から知っている故郷の野や山であり、そこは血まみれの戦場になっている。上官の祖国はまだ残っていても、新兵にとっての「守るべき祖国」は、既に喪失しているのだ。

 主演の堤真一と山田裕貴はいずれも熱演。監督・脚本の平一紘は今回初めて作品を見たのだが、観客のエモーションを掻き立てるいくつかの場面にはと胸を突かれる思いがした。これは良い映画だ。

ユナイテッド・シネマ豊洲(5スクリーン)にて 
配給:ハピネットファントム・スタジオ 
2025年|2時間3分|日本|カラー 
公式HP:https://happinet-phantom.com/kinouenoguntai/
IMDb:https://www.imdb.com/title/tt37731858/

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