世界的ポップスターの傷だらけの私生活 『Michael/マイケル』
キング・オブ・ポップと呼ばれたマイケル・ジャクソンの半生を、歌とダンス、家族との葛藤を軸に描く伝記映画。ジャクソン5時代からソロ活動への飛躍までをたどりながら、圧倒的な才能の裏にあった父の支配、幼少期の傷、スターとして消費される孤独を浮かび上がらせる。主演ジャファー・ジャクソンの再現度にも注目だが、映画としては未完の印象も残る。

■あらすじ
1966年、インディアナ州ゲーリー。貧しい労働者家庭に生まれたマイケルは、兄弟5人組のバンド「ジャクソン5」のボーカルとして、自宅の小さな居間で連日のように父のスパルタ指導を受けていた。
体罰込みの猛練習の甲斐があり、ジャクソン5は小さなステージから少しずつ実績を積んで、数年後には大手レコード会社のモータウンと契約することができた。ジャクソン5は大ヒット曲を連発し、一家はカリフォルニアの大きな家に引っ越すことができた。
仕事は順調だが、マイケルは家族を離れてより創造的なソロ活動をしたいと願うようになる。大物プロデューサーのクインシー・ジョーンズに声をかけ、新しいアルバムの制作がスタート。父は息子の独立を快く思わなかったが、完成したアルバム「オフ・ザ・ウォール」は大ヒット。
マイケルはクインシーとの2枚目のアルバム「スリラー」に取りかかるのだが、父はマイケルを家族に縛り付けようとする……。
■感想・レビュー
20世紀のポピュラー音楽界最大のスターであり、「キング・オブ・ポップ」の異名を持つマイケル・ジャクソンの伝記映画。マイケルは優れた歌手であると同時に優れたダンサーでもあったため、この映画も歌あり踊りありの伝記ミュージカルになっている。
監督は『イコライザー』シリーズのアントワン・フークア。主演はマイケル・ジャクソンの甥でもあるジャファー・ジャクソン。そのそっくりぶりは予告編の時から話題になっていたが、本編を見るとどうしても「似ているがちょっと違う」部分が気になってしまう。
歌唱シーンはマイケル本人の音源もかなり使っているようだが、ダンスシーンはジャファーがマイケルの完コピに挑戦。これが本物のマイケルに比べると、一段も二段も見劣りしてしまうのは仕方がない。しかし頭では仕方がないと理解しつつ、そこで少し興醒めしてしまうのも確かなのだ。本物は不世出のカリスマ的なタレントなんだから、誰がどう演じても本物には劣るに決まっているのに……。
映画は製作中にプランが幾度か変更されたようで、ラストシーンも中途半端なところで終わってしまったような気がする。物語としては「少年の成長と父親からの独立」という基本軸が明確なので、マイケルが父から離れて自立することを示す印象的なエピソードが最後に欲しかった。
本作のドラマとしての見どころは、当時も今も芸能マスコミが揶揄するマイケルの様々な「奇行」の根底に、幼少時からのトラウマがあるという解釈をしていることだ。マイケルは大人になることを拒否した無責任なピーターパンではなく、父親から大人になることを禁じられた子供なのだ。父のジョセフはマイケルを言葉と暴力で支配し、マイケルを「一人では何もできない子供」として扱い続ける。
独り立ちしようとするマイケルをジャクソンズに押しとどめ、世界ツアーに無理矢理引き込むくだりが、この映画のドラマとしてのクライマックスだ。
(原題:Michael)
109シネマズ木場(シアター1)にて
配給:キノフィルムズ
2026年|2時間7分|アメリカ|カラー
公式HP:https://www.michael-movie.jp
IMDb:https://www.imdb.com/title/tt11378946/
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