コール・ポーターの傑作ミュージカル 『エニシング・ゴーズ』
恋とドタバタが豪華客船で大爆発! コール・ポーター不朽のミュージカル「エニシング・ゴーズ」2021年ロンドン公演収録版が限定公開。恋人を追って船に潜り込んだ株仲買人ビリーの恋路を、歌手リノや指名手配犯がごちゃまぜにするドタバタ喜劇。舞台劇だからこそ許されるキャスティングや、観客を巻き込む「第四の壁」破りの演出が炸裂! 理屈抜きに楽しく笑える、舞台の魔法が詰まった傑作コメディです!

■あらすじ
1930年代のニューヨーク。株式仲買人のビリーはイギリスに渡る上司を見送るため、出航間近のSSアメリカン号を訪れる。船には友人の歌手リノも乗っていたが、それより彼の目を引き付けたのは、婚約者のオークリー卿とイギリスに渡るハーコート母娘だった。
ビリーは娘のホープ・ハーコートと先日出会い、運命的な恋に落ちたと信じている。彼はホープの結婚を阻止するため、パスポートもチケットもないまま船に残ることにした。
同じくこの船にもぐり込んでいたのが、牧師に変装したパプリック・エネミー(指名手配犯)NO.13のムーンフェイス。船にはパプリック・エネミーNO.1のスネークアイズも乗るはずだったが、手違いから彼は乗船できなかったようだ。ムーンフェイスは用意してあったチケットをビリーに譲る。
船は港を出た。リノはビリーの恋を応援することに決めたのだが、ホープはビリーを愛しながらも結婚は中断できないと言う……。
■感想・レビュー
「松竹ブロードウェイシネマ 2025 秋」の開幕作品として上映される、コール・ポーター作詞作曲のミュージカル。初演は1934年だから今から90年以上前。今回上映されるのは2021年ロンドン公演の収録で、リノを演じるのは2011年のリバイバル公演でも同役を演じたサットン・フォスターだ。
「エニシング・ゴーズ」はこれまでに2回映画化されているが、今回はいかにも舞台収録作品だった。わかりやすいところで言えば、ビリーの上司であるエリシャ・J・ホイットニーや、ビリーの恋人である社交界の令嬢ホープ・ハーコートが黒人なのは、舞台劇であればこそ許される配役だと思う。
いかに荒唐無稽なコメディ作品だとしても、映画というのはリアリズムの世界。1930年代のニューヨークにイエール大OBの黒人富豪や、母が白人で娘が黒人の母娘が登場するなら、それにつてい何らかの説明が必要になっただろう。だが舞台なら、説明なしにそれが許される。これが舞台のマジックなのだ。
いわゆる「第四の壁」を破る演出も、演劇だからこそ可能なメタフィクション。「フレンドシップ」を歌い踊るリノとムーンフェイスが舞台上で役を演じる役者として喧嘩し始めたり、別の場面では必要に応じてオーケストラピットからバラの花が差し入れられたりする面白さ。
似たような演出を映画で試みる例もなくはないが、いかにも作為的になって観客を白けさせてしまうことも多い。しかしこれが舞台劇だと、一瞬にして軽々と第四の壁をぶち破り、あるいは軽々とすり抜けてくる。この面白いこと、楽しいこと!
物語の軸はビリーとホープのロマンスだが、主役のリノが狂言回しになってそこに直接は関わらない。彼女はビリーに好意を持っていたはずだが、三角関係にすらならないという不思議な構成。初演舞台や映画『海は桃色』(1936)でこの役を演じたエセル・マーマンありきのキャラクターのような気もした。
(原題:Anything Goes)
シアター東劇にて
配給:松竹
2021年|2時間18分|イギリス|カラー|1.85 : 1
公式HP:https://broadwaycinema.jp/anything-goes
IMDb:https://www.imdb.com/title/tt16727778/
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