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潜在意識の書き換え

不安がぐるぐるする日に。

心理学ベースで潜在意識をやさしく整える7日間




1. はじめに:「考えた通りになってきた」という実感から始まった

この章でわかること なぜわたしがこの記事を書いたのか。誰に向けたものなのか。読み終わったときに何ができるようになるのか。この3つをお伝えします。

1-1. 振り返ると、考えた通りになっていた

あるとき、自分のこれまでを振り返ってみました。すると、頭の中で考えていたことが、そのまま現実になっている場面がいくつもありました。

たとえば、ふと「母の手料理を思い出して食べたいなぁ」と思っていた時期がありました。しばらくして、母のところへ行くことになりました。結果として、久しぶりに母の手料理を食べることができました。

別の時期には、仕事のことで不安をかかえていました。「このまま続けていいのかな」「転職したほうがいいのかな」と、ずっと迷っていました。そのあと、わたしは怪我をしました。仕事をいったん止めなければいけなくなりました。

こういう出来事が重なって、わたしの経験は“無意識の法則”のような話とつながっていきました。そして「頭の中の状態が、現実の形を決めているのは本当かもしれない」と感じるようになりました。

1-2. でも「引き寄せ」という説明だけでは、腑に落ちなかった

この体験を人に話すと、「それは引き寄せだね」「潜在意識が現実を作っているんだよ」と言われることがありました。

その言い方を否定したいわけではありません。ただ、わたし自身は、もう少し仕組みを知りたいと思いました。「なぜそうなるのか」「どういう働きで、考えが現実に近づくのか」を、根拠のある形で理解したかったのです。

そこでわたしは、心理学と脳科学の研究を調べ始めました。「潜在意識の書き換え」と呼ばれているものが、学術の世界ではどんな言葉で説明されているのかを、ひとつずつ確認していきました。

1-3. この記事が扱う範囲

この記事では、「潜在意識の書き換え」を、心理学と脳科学の用語に置き換えて説明します。研究者の名前、論文、本の名前も、できるだけそのまま載せます。「誰かがそう言っていた」で終わらせず、出どころをたどれる形にします。

逆に、この記事では次のことはしません。


  • 「必ず変わる」「誰でもできる」と保証すること

  • スピリチュアルな考え方を「間違い」と決めつけて見下すこと

  • 「1週間で人生が激変する」といった、根拠のない数字を出すこと

わたしがやりたいのは、スピリチュアルな説明と学術的な説明を並べて、「行動に移せる部分」を増やすことです。

1-4. 読み終わったときに手に入るもの

この記事を最後まで読むと、次の2つが手に入ります。


  1. 「潜在意識の書き換え」でよく使われる言葉を、学術的な言葉に置き換える対応表

  2. 不安をかかえた状態から始める、7日間の書き換えワーク

とくに、わたしと同じように「潜在意識が不安をかかえているとき、その不安を取り除いてあげたい」と思っている人に、そのまま使ってもらえる内容にしました。




2. そもそも「潜在意識」とは何か──学術の言葉に置き換える

この章でわかること 「潜在意識」という言葉がどこから来たのか。学術の世界では、どんな仕組みに対応しているのか。この2つを整理します。

2-1. 「潜在意識」はユングの「無意識」の言い換え

「潜在意識」に近い考え方を最初に体系立てて説明したのは、スイスの心理学者カール・グスタフ・ユングです。ユングはもともと、精神分析で有名なフロイトの弟子でした。のちに考え方の違いから離れ、自分の研究を進めました。

ただし、ユング自身が使っていた言葉は「無意識(むいしき)」です。英語では unconscious です。「潜在意識(subconscious)」という言い方は、ユングは使っていません。

「潜在意識」という言葉を広めたのは、20世紀のアメリカで盛んになった自己啓発・成功哲学の流れです。「無意識」よりも「潜在意識」のほうが、一般の人に届きやすかったのだと言われています。

簡単に言うと、「潜在意識」は学術用語そのものではなく、通称に近い言葉です。だからこそ、学術の言葉に置き換えると、話の解像度が上がります。

2-2. 学術では「ひとつの器官」ではなく、複数の仕組みの総称

「潜在意識」と聞くと、頭の奥に部屋がひとつあって、そこに何かが書き込まれているようなイメージを持ちがちです。

ですが、心理学と脳科学では、そういう単一の場所を想定していません。かわりに、意識しないうちに働いているいくつかの仕組みを、別々の名前で研究しています。おもなものは次の4つです。


  • 自動思考:出来事の瞬間に、考えるより先にパッと浮かぶ考え

  • スキーマ:自動思考の根っこにある、深い思い込みや自己イメージ

  • 習慣:同じ場面で、意識せずくり返してしまう行動

  • 予測:脳が過去の経験から「次に何が起きるか」を先読みする働き

「潜在意識を書き換える」という言葉は、このうちのどれを指しているのかで、やるべきことが変わります。

2-3. 「人生の95%は潜在意識」に根拠はない

「人生の95%は潜在意識で決まっている」という言い方を、見たことがあるかもしれません。「90%」や「97%」と書かれることもあります。

この数字には、学術的な裏づけがありません。ある行動のうち、意識と無意識がそれぞれ何パーセントかを正確に測る方法は、今のところ存在しないからです。この「95%」は、20世紀初めの心理学の研究が、あとから大げさに伝わっていくなかで生まれた表現だと指摘されています(出典:Medium「25 Neuroscience Myths」、Wikipedia「Ten-percent-of-the-brain myth」)。

だからこの記事では、「◯%は潜在意識」という数字は使いません。使うのは、研究の中で実際に測られた数字だけです。

2-4. だから「書き換え」は、仕組みごとに分けて考える

ここまでをまとめます。


  • 「潜在意識」は、複数の仕組みをまとめて呼んだ通称

  • 「書き換える」なら、自動思考・スキーマ・セルフイメージ・習慣・予測のどれを変えたいのかをはっきりさせる

この記事では、4章から6章で「書き換えの正体」を3つに分けて説明します。7章で、その土台にある脳の働きを説明します。8章で、全部を7日間のワークにまとめます。




3. よくある「潜在意識の書き換え」がうまくいかない理由

この章でわかること 巷でよく紹介される書き換えの方法のうち、研究では「効きにくい」「人によっては逆効果」とされているものを2つ紹介します。

3-1. 「わたしはできる」と唱えるだけは、逆効果になることがある

「なりたい自分の姿を、毎日声に出して唱える」。この方法は、アファメーションと呼ばれます。簡単に言うと、前向きな言葉を自分に言い聞かせるやり方です。

2009年に、心理学者のジョアン・ウッドたちが、この方法を実験で調べました(Wood, Perunovic & Lee, 2009、掲載誌 Psychological Science)。参加者に「わたしは愛される人間だ」という言葉をくり返してもらい、そのあとの気分を測りました。

結果は、多くの人が期待するものとは違いました。


  • もともと自尊心が低い人は、言葉をくり返したあと、むしろ気分が下がっていました

  • 何もしなかった人のほうが、まだマシでした

  • 自尊心が高い人は、少しだけ気分が良くなりましたが、その差は小さいものでした

前向きな言葉が、いちばん必要としている人の役に立たない。それどころか、傷つけることがある。以上が、この研究の結論です(出典:PubMed、ScienceDaily、National Geographic の各解説)。

理由は、こう説明されています。今の自分と、言葉の内容とのあいだに距離があると、脳のなかで「そんなはずないでしょ」という反論が起きます。その反論が、かえって「やっぱり自分はダメだ」という考えを強めてしまうのです。

3-2. 成功をありありと空想するだけは、やる気を下げる

「うまくいった場面を、ありありと思い描く」。この方法も、書き換えとしてよく紹介されます。

心理学者のガブリエレ・エッティンゲンは、この「良い未来を思い描くだけ」のやり方を長く研究してきました。その中で、意外な結果が出ています。良い未来を空想するだけだと、やる気はむしろ少し下がる、というものです。

理由は、脳が「もう手に入った」と受け取ってしまうからだと説明されています。頭の中で成功の場面を再生すると、体は達成した気分になります。すると、そこへ向かう努力にエネルギーが向かなくなります(出典:PositivePsychology.com「Mental Contrasting」ほか)。

エッティンゲンは、かわりに「WOOP」という方法をすすめています。良い未来を思い描いたら、そのすぐあとに「今それを邪魔している現実の障害」を思い浮かべて、対比させます。WOOP の中身は、6章でくわしく説明します。

3-3. 2つに共通する落とし穴

うまくいかない2つの方法には、共通点があります。今の自分との距離を無視していることです。


  • 唱えるだけのアファメーション → 今の自分と言葉のあいだの距離を無視している

  • 空想するだけのイメージング → 今の自分と理想のあいだにある障害を無視している

つまり、書き換えでやるべきなのは、距離をなかったことにするのではなく、距離を具体的に埋めていく作業です。

3-4. ここから先の話

ここまでが、無料で読める範囲です。

ここから先は、「距離を埋める具体策」を説明します。心理学と脳科学の研究をもとに、「書き換え」の正体を3つに分け、最後に7日間のワークにまとめます。わたしが「不安をかかえた潜在意識を書き換えたい」と思って調べた内容を、そのまま手順にしています。



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