【季節の手仕事】今年も梅仕事の時期がやってきた、「積み重ねる喜び」を味わう暮らし
梅仕事の季節がやってきました。
今年は、小梅の梅干し、南高梅の赤しそ梅干し、そして梅シロップを仕込んでいます。
梅仕事ってなんだか不思議ですよね。ただ「保存食を作る」という意味を超えて、 同じ時期に、同じ手仕事を繰り返すことで、その時々の環境や自分の心情の変化が、梅の香りとともによみがえってきます。
特に子どもが生まれてからの数年は、思い通りにいかず失敗することもありつつ、家族の歩みを「積み重ねる喜び」をじんわりと感じる時間になっています。
人生最初の梅仕事から13年。これまでの歩みを、写真とともに振り返ってみたいと思います。
原点は13年前。東京・中野の小さなアパートから
私の人生最初の梅仕事は、13年前のこと。 東京・中野のアパートで、夫と二人暮らしを始めたときでした。
当時の私は、都会で会社員をしながらも、 「半農半X」「自給的な暮らし」「自然に近い生き方」「脱消費」「ナリワイをつくる」……といった、新しい生き方へシフトしていきたいと模索している真っ最中。
「アパートの小さな空間でも、できることからやってみよう!」と、無農薬野菜や玄米食を取り入れたり、一日一食生活をしてみたり、会社まで往復30キロをママチャリで通勤したりしていました。
そんな中、「昔ながらの保存食も作ってみたい」と思い立ち、小さな壺を買って梅干しと梅酒を漬けてみたのが、私の梅仕事の始まりです。

娘0歳:初めての子育てと、大失敗の苦い記憶
そこから月日が流れ、逗子へ移住。 3年前、娘が生まれた翌年に、久しぶりに梅仕事を再開することにしました。
「せっかくなら良いものを」とネットで無農薬栽培の梅を注文し、保存容器も新調して準備は万全。……のはずでした。
しかし、現実は初めての育児の真っ只中。 離乳食が始まり、日々すくすくと進化する娘との生活に追われ、さらには育休中に一部再開した仕事の環境変化も重なって、心も体もいっぱいいっぱい。
青梅が届いたものの、ビニール袋に入れたまま手をつけることができず、気づけば一週間が経過。 「ザルに広げて追熟させる」という基本のステップすらできないまま、届いた梅のほとんどを傷ませてしまい、梅干しに使えない状態にしてしまったのです……。
せっかく育ててもらった梅たちを無駄にしてしまった申し訳なさと情けなさで、本当に落ち込みました。
「梅仕事は真剣勝負」
梅仕事を改めて学ぼうと図書館で借りた本に書かれていたその言葉が胸に刺さりました。「どこか軽く考えていたのかもしれない。来年はしっかり梅と向き合おう」と、深く身が引き締まる経験となりました。
娘1歳、基本の梅干しと丁寧に向き合う
前年の苦い失敗があったからこそ、翌年は少し緊張しながらのスタートでした。
この年は、いつも食材を届けてもらっている生活クラブで梅を購入。 届いたらすぐに袋から出し、ザルに丁寧に広げて、部屋いっぱいに広がる甘い香りを楽しみながら黄色く熟すのを待ちました。
当時1歳10ヶ月になっていた娘は、動くのが楽しくてたまらない時期。 塩漬けした梅をウッドデッキで天日干しするときも、興味津々で近くに寄ってきて、楽しそうに眺めていました。

無理をせず、基本の赤しそ梅干しを2キロだけ。 この年は晴天にも恵まれ、ふっくらと美しい、美味しい梅干しが無事に完成しました!
娘も「おいしい!」と一緒にパクリ。 「あぁ、やっぱり梅仕事って楽しいな。私にもちゃんとできた」と、失っていた自信を取り戻せた大切な年になりました。
娘2歳:つわりを乗り越え、梅仕事を「楽しみ尽くす」
さらに翌年。家庭菜園にも本格的に力を入れ始め、「もっと我が家の自給力を高めたい!」という気持ちが湧いてきた年です。
この年の初めに二人目の妊娠が分かり、つわりを乗り越えてようやく元気になった頃の梅仕事。気持ちも体も万全で、エネルギーが満ち溢れていました。
料理研究家・山田奈美さんの本『旬を楽しむ 梅しごと』に出会い、「梅干しやシロップだけじゃないんだ!」と知り、色々なアレンジに挑戦することに。

① 小梅の梅干し(失敗?から生まれた万能塩)
まずは小梅からスタート。 私の大雑把さが出てしまい、塩の量を間違えて底に溶けきれない塩が残ってしまったのですが……どうしたものかと思いましたが「梅塩」として料理に使ってみると、少量で旨みと酸味がしっかり効いて、おにぎりや唐揚げの下味に大活躍してくれました。


図らずとも小梅の魅力を知りました。
カリカリ梅を狙ったわけではないのですが、仕上がりは少し歯ごたえのあるカリカリ風に。小さなタッパーに入れて夏の旅行やお出かけの塩分補給として持ち歩くと、娘も「小梅おいしい!」と大喜びでおやつ代わりに食べていました。「梅仕事って、もっと気負わず、ざっくり楽しんでも大丈夫なんだ」と思えた出来事です。

まだ半分ほど残っていて、今年も活躍中です。
② 青梅の蜂蜜漬け&黒糖梅酒
続いて青梅を使って、おやつとお酒の仕込みを。 蜂蜜漬けは、夏の暑い日に水や炭酸水で割って飲むと最高に美味しく、あっという間に完売です。 黒糖と黒糖焼酎「れんと」で漬けた贅沢な黒糖梅酒は、今はまだ授乳中で私が飲めないため、あと数年じっくり寝かせて「ご褒美の熟成期間」にする予定です(夫がちょっとずつ味見していますが、とてもおいしくできているそうです!)。


③ 完熟梅の梅干し&お腹の万能薬「梅肉エキス」
メインの南高梅は、しっかり完熟させてから赤しそ漬けに。少し重石が足りずに梅酢の上がりが遅くてヒヤヒヤしましたが、カビることもなく無事に完成。(少し固めでしたが味は抜群でした!)
さらに、我が家の常備薬として「梅肉エキス」にも初挑戦。 青梅を1玉ずつすりおろし、黒くとろとろになるまで土鍋でじっくりじっくり煮詰めていく作業です。 ものすごく時間をかけたのに、出来上がったのはほんのちょっぴり(しかも煮詰め方が少し足りなかったのか、真っ黒にはならず……)。
それでも、「ちょっとお腹の調子が悪いな」という時になめると、驚くほど回復するんです。梅の秘めたるパワーに、改めて感動した機会になりました。(※作るのがあまりに大変だったので、現在は自然食品店で購入したものを常備しています。プロの真っ黒さととろみは全然違いました・・!)

毎年作った梅干しは、すべて食べきらず(最初の年は途中まで購入した梅干しも併用していました)、少しずつ瓶に残して蓄積させています。 年を重ねるごとに「◯年物の味比べ」ができるのも、自家製ならではの楽しみです。

娘3歳、息子0歳:日常に溶け込む「作るのが当たり前」の景色
そして、今年。
小梅2キロの梅干し
完熟梅1キロの梅シロップ(ミネラル豊富な古式原糖で味わい深く)
完熟梅2キロの赤しそ梅干し
計5キロの梅たちが、我が家の台所にずらりと並んでいます。

現在、生後9ヶ月になった息子は、ハイハイとつかまり立ちの真っ盛りで好奇心の塊。 台所から漂う梅の甘い良い香りに誘われて、すかさず小さな手を伸ばしてきます。「あーっ!それはまだ食べちゃダメ!」と阻止しながらの作業は、なかなか思うようには進みません^^;

ヘタをくりくりとるのも年々手際が良くなっています

ザルで追熟中の梅を見つめながら、ふと頭をよぎることがあります。
「なんで私は、手間がかかる梅仕事を毎年するんだろう?」「買えば済むことだし、やらなくてもいいんじゃない?」
けれど、その答えは私の「理想の暮らし」の中にありました。
一次生産(畑で育てること)はすぐには難しくても、せめて二次加工(目の前にある素材を料理すること)からは、自分の手で、目に見える安心なもので作りたい。 スーパーに並ぶ梅干しは添加物が入っているものが多く、昔ながらの塩と紫蘇だけの梅干しを買おうとすると、自分で作る倍以上の値段がしてしまいます。
「買う」から「作る」へ。暮らしの自給力を少しずつ高めていきたい。
その想いは、子どもたちにも自然と手渡されているようです。 3歳になった娘にとって、「梅干し=おうちで作るもの」。
今年も梅の季節が近づくと、「ことも小梅ちゃんつけようね!」と当然のように話してくれました。
始める前は「ちょっと面倒だな」なんて腰が重い瞬間もあるけれど、いざ始めると、部屋いっぱいに満ちる桃のような甘い香りに、幸せな気持ちに包まれます。
小さな手で、慣れた手つきでヘタをくりくりと取っていく娘。 「一緒にやると本当に早いね、助かるよ」と伝えると、誇らしそうに「なっちと一緒だとはやいよね!」と笑います。
昨年はお腹の中にいた息子が、今年は目の前で目を輝かせて梅を触ろうとしている。
毎日少しずつ、瓶の中に梅酢が上がっていく様子を子どもたちと見守る静かな時間。ずらりと並んだガラス瓶、頼もしく成長していく子どもたちの姿、そして、失敗を繰り返しながら重ねてきた自分自身の経験値。
「あぁ、今年もこうして、家族の時間を積み重ねられている」
この一瞬一瞬の手応えと愛おしさを味わうことこそが、私が季節の手仕事を続ける、一番の理由なのかもしれません。

