夏のプールの影
小学校低学年のころ、近所の友達と市営プールに連れて行ってもらった。
母親と友達の母親も一緒で、プールは小中大の三つがあり、中くらいのプールが低学年の僕らにはちょうどよかった。
僕は潜るのが得意で、友達と「どっちが長く潜れるか」競争をして遊んでいた。
競争が終わり、水面から顔を出すと、友達がいなくなっていて、近くに友達の母親らしき女性が立っていた。
「ねーねー?」と腕を触った瞬間、背後から返ってきた声で気づく。
全然知らない人だったのだ。「あ、ごめんなさい」と言おうとしたら、その女性はにこりと笑い、息子を呼ぶ。
その前には、見知らぬ子供たちが何人も並んでいて、全員が僕をじっと見返してくる。
一人や二人じゃない。数人の同世代の子供たちが一斉に動きを止め、僕を凝視していた。
恥ずかしいより先に、恐怖が胸を支配した。
そのまま水中に潜り、息が続く限り逃げ回った。
顔を出すと、友達はいつもの笑顔で「どこ行ってたんだよー」と言う。
後ろを振り返っても、あの女性も子供たちも、どこにもいなかった。
急いで母の元に戻り、「帰りたい」とだけ告げた。
あれ以来、夏のプールに行くたび、あの影の視線を思い出す。
