夜中の自販機
25年前のこと。バイト帰り、深夜1時過ぎ。雨が降る静かな団地を車で走っていた。
人も車もなく、団地の道路はひっそりしている。
ふと、自宅近くの自販機の前で誰かが立っている気配がした。
しかし、この時間だ。雨も降っている。まさか、と思いながら駐車場に止め、煙草に火をつけて落ち着かせた。
「見間違いだろう」と思いながら、自販機に近づく。
街灯よりも自販機の光が明るく、近づくと影は消えたかに見えた。
しかし、また影があった。自販機の横から、誰かが立ち現れる。
顔はよく見えなかったが、きれいな女性のようだ。濡れた髪で顔を隠し、傘も持っていない。
声をかけると、かすかに鼻をすする音。泣いているらしい。
「大丈夫です」とだけ答える女性。送っていこうかと思ったが、変に怖がらせるのもいけないと、一旦離れることにした。
自分の家を指さして「何かあったらピンポン押して」と伝え、部屋に戻った。
落ち着いて傘を二本持ち、再び自販機へ。
「大丈夫?傘持ってきたよ」と声をかけると、影から現れたのは……
男だった。
「あ、わりー、大丈夫だから。迷惑かけたな」
くそっ!と思った夜中の出来事。
緊張感と怖さは一瞬で消え、ただ笑ってしまった。
