ひとりの料理人が目指す食卓 1/7
第1話 食は人をつなげる

私は「食のバリアフリー」という言葉が好きです。宗教や文化が異なっていても、同じテーブルを囲み、「おいしいね」と笑い合える。
そんな食卓を考えるようになったのは、JICAでの経験があったからこそです。
私が20代の頃、JICA(国際協力事業団)の研修所の調理現場で働いていた時に、同じ厨房で料理を作っていても、人によって食べられるものがこんなにも違うことに驚きました。それから数年後、私は日本を飛び出しました。
ニュージーランド、ブラジル、フランス、マレーシアなど、さまざまな国を訪れ、時には働いて、その土地の文化や食に触れる機会がありました。 そこで気づいたことがあります。 どこのレストランにも、ベジタリアンプレートやヴィーガンプレートが、ごく自然にメニューに並んでいたのです。 それは特別な料理ではありません。 「その料理を必要としている人がいるから用意されている。」 そんな当たり前の光景でした。 それから月日が流れ、2017年に日本へ戻ってきたとき、そのようなメニューを見つけることは簡単ではありませんでした。 食品売り場でも、ハラールやコーシャ、ヴィーガンの表示を見つけることは今ほど多くありませんでした。
そのとき、私は考えました。 「レストランで食べられないなら、お弁当なら届けられるのではないか。」 場所を選ばず、より多くの人に届けられる方法として、お弁当という形が浮かびました。お弁当を製造できる仕事を探し、見つけることができました。
私たちの体は、毎日食べるものからつくられています。 宗教や文化、信条や体質など、さまざまな理由で食事に制限のある人がいます。「できるだけ多くの人が安心して食べられる食事とは何だろう」と考えたとき、野菜や米、小麦、豆などを中心としたヴィーガン(プラントベース)の食事にたどり着きました。
この食材を使ってお弁当やサンドイッチ、スイーツをつくれば、より多くの人が同じものを楽しめ、同じ時間を共有できる。
それは、私が考える「食のバリアフリー」の一つの形です。 もちろん、私は今でも魚も肉も食べます。 好きな食べ物を我慢することは、私にとって大きなストレスになるからです。 私は週に2日ほどヴィーガン(プラントベース)の食事を取り入れてみました。すると体が軽く感じる日が増えました。 食物繊維を多く摂るようになった影響か、お腹の調子も安定し、以前より口内炎や肌荒れも少なくなったように感じています。 私にとってヴィーガン(プラントベース)は、「何かを我慢するための食事」ではありません。 体をいたわるための選択肢であり、そして、誰もが一緒に食卓を囲めるための選択肢です。
私の考える「食のバリアフリー」とは、同じ料理を食べることでもあり、同じ時間を共有できることだと考えています。 宗教や文化、信条の違いがあっても、ひとつのテーブルを囲み、「おいしいね」と笑顔で食事を楽しめる。 そんな時間が増えていけば、食はもっと人と人をつないでくれるはずです。 世界にはさまざまな違いがあります。 だからこそ、同じテーブルを囲める食事を考えたい。
私はこれからも、「食のバリアフリー」という考え方を、一つひとつ形にしていきたいと思っています。その方法の一つが、ヴィーガン(プラントベース)のお弁当を作り続けることです。
一人でも多くの人が、同じテーブルを囲み、「おいしいね」と笑い合える時間が増えることを願って。
私が目指している食卓はこのイラストのような景色です。
あなたは誰とどんな食卓を囲みたいですか?
