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harunoyonaga
ストライプのシャツと
形には残らないけれど、確かに受け継がれている「約束」のようなものが、この家にはある。それは、ここ一番という場面で自分を奮い立たせるための、ささやかな儀式だ。
かつての父には、勝負どころで必ず「ストライプのシャツ」を纏(まと)うという決まりがあった。大事な仕事や家族の行事がある朝、父がクローゼットから縞模様のシャツを取り出すとき、その背中からは静かな気合が感じられたものだ。父にとってそのシャツは、袖を通すだけで心がシャキッとする、自分を律するためのスイッチのような存在だったのかもしれない。
あの真っ直ぐな背中から放たれていた微かな熱を、無意識のうちに受け取っていたのだろうか。今、未来へと歩き出す小さな足音も、自分なりの確信を大切にしている。自分を試すような静かな戦いへと向かう朝、ある「心強い感触」をそっと手元に添え、ポケットの奥深くへと仕舞い込むのだ。
「これがあれば、大丈夫」
そう言って出かけていく後ろ姿を見送るとき、私はふと父のことを思い出す。ストライプのシャツと、指先に触れるだけで静寂をもたらす、形なき確信。形は違えど、そこにあるのは「自分を信じるための形代(かたしろ)」という共通の温もりだ。
誰に教わったわけでもない。けれど、自分を励ます術(すべ)をその小さな指先が知っている。その姿はどこか頼もしく、見守る私の心をも静かに勇気づけてくれる。この家に流れる不思議な調べは、形を変えながら、これからも大切な誰かの心を支え続けていくのだろう。
