第5話 海で待つ人
金曜日。
私は彼と初めて旅行した海へ向かった。
夕方。
誰もいない砂浜。
波の音だけが聞こえる。
「来たんだ」
振り返ると、
あの写真に写っていた女性が立っていた。
「あなたが莉奈さん……?」
女性は首を横に振った。
「違う」
そして、少し笑った。
「私は、莉奈の妹」
名前は葵。
彼女は一枚の古い写真を見せてくれた。
そこには、彼と莉奈が写っていた。
「姉が亡くなった日、彼はここにいた」
「……どうして?」
「姉を助けようとして、自分も海に落ちたの」
私は息を呑んだ。
「姉は助からなかった。でも彼は助かった」
葵は続けた。
「それから彼は、自分だけ生き残ったことをずっと後悔してた」
だから、私と別れた。
そう思った。
でも、葵は首を横に振った。
「それだけじゃない」
彼女が差し出したスマホには、
彼から送られた最後のメッセージがあった。
『美咲には何も言わないで。』
その下に、
『あの事故のことを調べている人がいる。』
と書かれていた
